その3【多紫町中学生女子の悩み】
この町、多紫町に生まれた女子は、二つの道がある。
それは、戦闘集落と誉れ高い、この地の女子として世界の平和などの関わり戦士の様に生きるか、それとも、極々一般に、普通に生きるかである。
水目柚葉かはこのところずっと悩んでいた。
将来の事、そしてこれからの事。
誰もが、少女なら皆、自分の行く末を思い悩む。
それは至極当然しにして当たりまえの事である。
彼女もそんな一人であった。
多紫町立小中学校生にとって中学校の生徒会の仕事を終えて、彼女は暗くなった通学路を一人歩いていた。
その姿はどこにでもいる中学生、学生鞄を持つ、制服姿の少女であり、三つ編み一本にまとめた後ろ髪を揺らして歩いている。
この町の標高は高く、暗くなるのは平地よりも早く、気温も急激に下がって行く。
しかも得体の知れない鳥の声も響き始めるが、なに、それはいつもの事であった。
そんな柚葉は帰りながら、将来の事、未来の自分の事を漠然と考えていた。
つまりはこれから先やって来る自分の未来について悩んでいた。
この町に住む人間ならこのくらいの歳には皆、一度は通り過ぎる悩みでもある。
普通に仕事してお嫁さんになって、の人生か、この世界を左右する様な人知れず場所で戦う事、隠密になって生きるかの選択である。
ちなみに、その将来の希望の提出期限、1回目の希望調査は、中学校2年であるから、柚葉にとってはつい昨日の事でもある。
もちろん、先生に相談したり、今の時点では何も考えてません、と言ってしまう手もある。
しかし、折角の問題提示で、必ずやって来る未来なのだから、この際、柚葉は徹底的に考え悩むことにしたのだ。
将来をどうしよう? 今現在の自分の能力を鑑みて考える。
基本的にはこの地に住むものは老若男女を問わず、一般社会の平均的な市町村に生活する人類に比べて、ある意味デタラメな強さをもっている。
一般にこの町にあって、数持ち、体持ち、つまり苗字に数、そして人体の一部がある家、そして、青色に染まる名前、つまり名前に青色を配色されている者、そう例えて言うなら、本家のお姫様、蒼様や、超が作ってほどのエリート集団、一桁の分家、そして謎が多い百家。そんな彼女達と比べて自分の能力は低いと言わざるを得ないが、それを考えた上でも柚葉の様な少女も十分すぎるほどの戦闘力を有してし自覚している。
素手でであっても、小学生程度の頃から、通常兵装をした兵士の1〜2人程度は一人で圧倒できるくらいには実力は有している、自覚はある。
多少の個人の差はあるが、この町に住む子供ならそれに準じているし当たり前のことなのである。子供達が素手てイノシシを仕留め多なんて日常茶飯事であり、そう言う日はお肉のお祭りになるので嬉しかったりする。それはこの町の人間なら誰もができることで当たり前のことであった。
特に柚葉は戦闘訓練では頑張っていて、青色無し数なしの中では高い成績を納めている。
先生からは、防衛庁の調査室とかにも行けるよ、とお墨付きをもらっている。
そして、それもアリかな、と最近はよく考える柚葉であった。
そんな柚葉と違って、数持ちの家系、青色に染まる子供達はは確実に、現代においても防衛安全に関しての組織、その重要部署かつ上層部に行くことを約束されている。
つまり、彼女達はある意味恵まれているとも言えるが、その実選択肢など存在せずに、希望や自由も無く、将来を決められていると言う事になる。
彼女達の存在を、この国、いや世界のあらゆる機関は切望している。他の選択などありはしないのである。
そんな中でも自由な選択肢を持つ柚葉の様な子供もいて、そしてその数の方が多いのである。
この里に生まれたのだからと、名前は緑色を意味する女の子らしい名前を与えられているのは、決して数持ち、青色付きの同級生達に同様に価値のある者、その子供はこの町にとって等しく大切な存在なのだと言う思いを込めて名付けられているのだ。
それを知らない柚葉ではない。
だからそんな自分を知る以上、大切に扱われ、育てられているこの町の役に立つ様な人間になりたいと、真面目に勉強を頑張る健気な柚葉でもあった。
この村の子供なら皆そう考える。
優劣にかかわらず、多月蒼をはじめとする、戦闘強者に対して柚葉も同じく多紫の町の住民であり、大切な子供なのである。その扱いに違いなどはない。
この町の大人達によって大切に育てられ、可愛がられて成長しているのだ。
でも、まあ、外の世界に対するある種の恐怖と、多紫町の環境によって、外の世界に行きたくないと言う子供達は多い。と言うか大多数がそうなる様だ。
知らない世界への期待の前に怖さへの想像が膨らんでしまうのは仕方ない事だとも言える。