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第278話【ブレイドメーカー⑦】

 雪華さん本気で心配してる。だってそうだよね、その言い方なら関係者的な人物が犯人で、その人はここまでやってマテリアルブレードを持ち出しているってことで、何より捕まって無いってこと、野放し状態で、小火って言ってた報道はむしろフェイクだって事で、一体なんお為にでどうしてそうしているの?、しかもこれが事実なら、このラボと雪灯さんを含む研究員の人の危険は去って無いって事になるんだよ。


 未だ継続中って事だから。


 「大丈夫なんですか?」


 って思わず訪ねてしまう僕だけど、そんな質問の最中も雪華さんに心配からの攻勢を緩む事なく続けれれる雪灯さん、


 「だ、大丈夫よ私達は、本当にもう大丈夫だから、雪華もそんなに怒ると母さん怖いわ」


 って本気で、ジットリト見つめる雪華さんのその目に怯えているから、それは本当なんだと思う。


 それにさ、そう言っておきながら、雪灯さん、その表情に悲壮感も、恐怖もないんだ。いや、寧ろ喜んでるみたいな感じかな。


 気のせいかも知れないけど、その気持ちと言うか、心の底に喜びにも似た感情を抱いているのがわかるんだ。


 いつも思う事だけど、この手の人。つまり科学者とか研究者って変わった人が多いから、葉山の時も思ったけど、自分の目的の為に、時として自分の命なんて簡単に代償にできると言うか、その目的と言うか自分の仮説から結論への到達へ、どんな道を辿って行くにしても全く躊躇いのない人って多い気がする。


 そして、雪灯さんは、その特色が顕著に出てる感じがして、なんか大きな実験の施設の中に放り込まれている気がするんだよ。


 それを考える時、僕がこの剣、マテリアルブレードを持つことになって経緯、そして葉山の事すら、一応は葉山と茉薙の命を守ろうとはしてたみたいだけど、そんな事すら雪灯さんの計画の一端だった気がするのは決して気のせいって訳でもないんだろうなあ、って思う。


 なんて言うのかな、今まで見てきた人とは違う企みみたいな物を確かに感じる。


 それは、もう隠しようもない雪灯さんの、僕が今まで見たこともない種類の笑顔によって、そしてその笑みの中の二つの瞳は、まるで僕を実験装置、いや動物でも観察しているみたいな硬く凪いだ光を点してる。いや、その観察されている視線というの、僕が気がつかなかっただけで最初からだったのかも知れない。


 きっと、今僕はかなり怪訝な顔して雪灯さんを見てる。


 その視線を感じてか、彼女は僕を見て、


 「さあ、実験設備は仮説ラボの中にあるから、新し機材で、中にはバージョンアップしているのもあるわよ、壊れてしまったり、奪われたものにいつもまでもくよくよしてないで、今日も頑張るわよ」


 って、僕の疑う様な視線なんてまるで感じないみたいない雪灯さんは言って、ラボに入って行く。


 その姿に、


 「ほんと、研究者なんて変わり者しかいないわね」


 って葉山がどこか寂しそうに言った。


 ああ、そうか、葉山、ちょっと自分のお父さんの事を思い出していたんだな。


 そしてその感情は、どこか遠く、今ではない過去を懐かしむみたいにしていたから、もう、あの時のあの場所にはいないんだな、ってそう思えたんだ。


 さて、ラボに入るかって時に、僕の横にいた蒼さんは、ちょっと詫びるみたいに、


 「申し訳ありません、お屋形様、私の為に………」


 って言うから、


 「ううん、8割以上は僕の所為だからね」


 って言ったら、


 「何? 真壁、じゃあ残った2割で剣も斬らずに、蒼さんも傷つけずに済ませたみたいな言い方ね、カッコいいね真壁」


 って言うから、なんで意地悪くそんな言い方するんだよって、得てして蒼さんを傷つけたみたいなって言いかけて、で、気がついたんだ。これは僕の今の力だ。


 だから、今じゃないかこにそんなことできるって思っても今更どうにもならない。確かに今ならって思ったんだ。


 そう、今ならもっと上手くやれた。


 確実に僕はそう思ってたんだ。


 それは僕の技術が向上した所為なのか、それともこの剣、マテリアルブレードを使えると言うか、相互関係が良くなった所為なのか、それともその両方なのか………。


 少なくとも言えるのは、あの時よりは確実に僕の総合能力は向上してるって事なんだ。


 そんな事を考えてる僕に、蒼さんの真っ直ぐな瞳から発射される染み入るみたいな視線は、未だ言葉の続きを待ってるみたいに感じたから、


 「なるべく早いうちに蒼さんの家に行こうね」


 って言った。少なくとも彼女が今一番安心する言葉はこれで、僕ができる唯一の誠意はこれだって思ったからさ。


 「はい」


 ってとてもいい笑顔で蒼さんは返事してくれた。


 ほんと、ちょっと罪悪感の溜飲が下がる思い。僕にできる事ならなんでもするからね。


 まあ、この時点て、蒼さん家に行って、まさかあんな大騒ぎになるなんて、って今の僕には思い知ると言うか想像もできなかったけど、それはまた別の話なので、ひとまず、蒼さん僕等が終わるまで待ち惚けだなあ、って思ってたけど、仮設ラボを興味深そうにキョロキョロしてたから、楽しめそうでよかった、って思う僕だったよ。


 そして、蒼さんの家に行くのが、まさかの明後日に調整されてるなんて、この時点では気が付いてもなかった僕だよ。


 でも、まあ快諾だけどね。


 蒼さんにこれ以上、装備での悩みなんて持ってほしくないしね。 


 平日だけど、防衛庁の方から公務扱いで、公休にしてくれるって話だし。


 って、え? 春夏さんはいけないの?


 なんで?


 今の状態で北海道を離れられないって?


 あー、なるほどね。


 うん、毎晩電話するよ。


 じゃあ、ちょっと蒼さんの町に行ってきます!

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