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第276話【ブレイドメーカー⑤】

 そっか、僕が原因か、そうなんだ。


 おかしいな、全く身に覚えがない。


 「『浮き鴉』を壊してしまったのは秋先輩でしょ? それが『鬼』復活の条件だったのよ」


 っていつまで経っても答えを出せない僕に向かって見かねた雪華さんのお母さんがそう告げた。


 いや、そうか、そなんだ。あの時の事か。


 葉山と初めてダンジョンに行った時の事。薫子さんとも初めてだったかな、椎名さんを助けた時の事だよ、つまり、蒼さんを一瞬とはいえ再起不能にしてしまった嫌な思い出だよ。


 でもなあ、あの時ってもう本当に無意識に体動いてしまったから、本当に良くは覚えてないんだ。あの時、蒼さんの剣を『浮き鴉』を折ってしまったって言うのがちょっと覚えてないんだ。


 折ったっけなあ………………………?


 え? 違う?


 「ねえ、真壁、誰と話してる?」


 ってこの思考のやり取りを読んでか、葉山が怪訝な顔して聞いてくるけど、ちょっと今忙しいから黙って。


 僕の持つ剣、マテリアルソードは記録を開示してくれる。


 自分がこの剣と戦った相手、そして切断したものについての記録の中から、ピンポイントでその記録が蘇り脳裏に伝えられる。


 ああ、そうか僕、折ったんじゃなくて、斬ったんだ。


 今、わかったってか、教えてくれた。


 いや、誰がって、剣だよ、僕と違って、この剣さ、斬った物をきちんと覚えてるから、今までどんな物をどんな風に斬ったか全部記憶してるんだ。


 折った感触なら覚えてるけど、斬ったら上手くやったって事だからいちいち覚えてないんだよ。だって、折るのは失敗で、斬るは正常だからね。折れるって事は斬れなかったって事で、僕、結構引っ張るんだよ、その手の失敗。


 そっか、上手く行ったからこそ覚えてないんだ。


 いやあ、この前、葉山とか薫子さんに、『折った』って言われた時は実はそれなりにショックだったんだよなあ、うわ、僕失敗してしまってたよ、って思って。なんだ斬れたんだ、なら良かった。それならいいよ。


 なるほどね、納得いったよ。


 だから改めて、


 「ごめん、蒼さん」


 ってちゃんと丁寧に謝ったよ。


 いやあ、だって、一瞬の敵対とはいえ、国宝級の剣をさ、ご実家から預かっていた大切な剣を壊してしまっては、思い出したら余計にすまない気持ちになって来たよ。


 すると、蒼さんは、


 「いえ、寧ろ、お屋形様は本家からは喜ばれています、『折る』では鬼は復活しなかったはずですので、その上のお屋形様の召喚なので、折を見え私の帰省にご同行願えるのは感謝です」


 と言った。


 そっか、それで僕がねえ………、って至極当然に納得で、じゃあもう、直ぐに行こうかって気分だった。


 あ、でも、その前に今日は剣の事で来てるから、その辺を早く終わらせないとね。


 って思ってたら、


 「今、マテリアルブレードから、記録がバックアップされたって事かしら?」


 って、まるで奇跡を見守るみたいな目をされて、雪華さんのお母さんに問われる。


 それと同時に、


 「真壁の剣と私の剣、なんか全然違うなあ………」



 ってガッカリするみたいに葉山のつぶやきに、


 「質量の問題なのかしらね、大きさによっては意思や記憶を持つまでに至らないのかもしれないのね、あ、ごめんなさい、これはまだ仮説よ、だから伝えるべき段階でもないわ、忘れて」


 って雪華さんのお母さんは言う。


 葉山の場合、いつも言われるけど、剣側からのバックアップというか、その返事と言うか帰りはないらしんだ。


 たまにはと言うか、持ち出した当初から、概ね自分のイメージ通りに斬れるし、動くし、確かに他の剣よりは段違いの使いやすさなんだけど、僕と僕の剣のような関係にはなれないって言ってた。実際、僕と僕の剣より葉山と葉山の剣の方が付き合い長いし、そんな事を愚痴られて困るけど、気持ちとしてはなんとなくわかるから、それだけに今はもう、僕、この剣以外は考えられないくらいには来てるから、なんかもう、葉山の気持ちを考えると、なんかごめんね、としか言えない。


 でも、葉山の場合は大きな攻撃として出力できなかった魔法スキルを生かすバルカとかあるし、おかげでオールレンジで絶対に敵は倒すウーマンになってるし、以前よりは強力な感じで隙もないし、最近では深階層じゃ『竜騎兵』とか言われて恐れられてるし、僕からしたらこれ以上何を望むって言うのさ、って思うのだけれど、


 「真壁と一緒がいいの!」


 って謎論理を言い切られて、そうなんだ、と思うしかない自分もいるんだよね。


 だって、そんな感情で言われちゃうと、こっちだって何も言い返せないじゃん。


 基本的にイラっとしてる以上、怒ってる未満の女の子に僕が何を言い返せるわけもないんだよ。だから黙って聞いてる。


 でも、そっかトータルすると、そんな蒼さんの実家の問題やら、

『浮き鴉』だったっけ?、その剣の問題とか僕が中心にて、僕が解決できそうな問題だから、事が複雑化しないうちにさっさと言って片付けてしまった方がいいな、って思う。


 こう言うことって、下手に放っておくと事態は大きく大げさになって複雑になってくるからね、そうなると、被害は大きくなるばかりだから、小さいうちに片付けてしまった方がいい、って結論に至る。


 そんな風に考えて、蒼さんを見ると、蒼さん、なんか急にニコニコとしようとしてるけど、なかなか笑顔の形にならないような、困った表情になってる。

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