第274話【三度、大柴千歳ラボからのご招待】
支笏湖のラボまでひた走るリムジンの中は広くて快適なんだけど、運転手さんは度外視して僕以外全員女子ってもね、ちょっと雰囲気、居辛感じはあるよ。
「この前の結婚式、素敵でしたね」
って雪華さんが話かけて来るんだけど、僕に対しての質問に、
「真壁、私、和装の方がいいから、覚えておいてね」
って葉山が先に答えて、
「では、多月の里なら神殿がありますから、そこでなら可能かと」
って蒼さん積極的に絡んで来て、
「私はドレスも着たいです、秋先輩」
って雪華さんに言われるけど、なんでみんな僕に向かって言うの?
それに僕は春夏さんと結婚………………………、
あれ? 確かに春夏さんなんだけど、ちょっと違うなあ、でも僕は小さい頃から彼女と結婚するって確かに言ってた様な気がするんだ。
そのことについて春夏さんも快諾していた気もするんだけど、なんか違う様な………。今とは違う関係っていうか、そうじゃない感が強いんだよ。
まあ、いいや、先の事なんて今はまだわからないから、みんな勝手に考えるといいよ。って思う。
ちなみに、この前の式の最後に行われたブーケトスの勝者は、質量的には春夏さんで、春夏さん、綺麗に一本、ピンクのバラを奪取、最後まで死守したんだって。
その他は、雪華さんは花弁2枚、葉山は茎10センチくらいだったけ? で、他の人も似た様なものらしくて、ブーケトスの幸運は限りなく散って拡散されてほとんどの女子に行き渡ったらしい。
一緒に戦ってくれた左方さんなんて、すっかり折れてしまった茎の一部を持って、嬉しそうに西木田くんに駆け寄ってたもんね、ちなみに雪華さんは花弁はもっとゲットしてたんだけど、自分で二枚だけとって後はギルドの女の子に、相馬さんたちと分けてたみたい、仕事や、未だ最後の扉に触れらる条件を満たすことのできにあギルドの女の子達と約束したんだって、偉いよね。
すごいのはあの真希さんで、花を丸々一つ口の中に入れて耐えていたみたいだよ。まあ、本人の唾液まみれのブーケの一部にどれほどの幸運が眠っているかも知らないけど、一部のマニアかららは高額で譲ってもらえないかと、HDCU(北海道ダンジョン商取引組合)の瑠璃さんを通じて相談があるらしい。でも、あんな状態で、質量的には2位なんて凄いよね。
まあ、アモンさん、いや、今は青花さんはもともとダンジョン内とは言え、神様だった訳だし、そりゃあご利益もありそうだものね。女子も必死になるってもんだよ。
で、とか言ってるうちに僕らを乗せたリムジンはいつものラボに………?
いつもならここのカーブ通り過ぎた頃にはすぐに見えるのに、なんでか今日は見えない。おかしいな、天気の所為???
いやいや、そんな筈はだって今日は快晴だしさ。
って、もうここの門をくぐり抜けて、左右の森を越えると正面に………??
そのとき、僕は、いや僕らは信じられない物を見たよ。
雪華さんは知ってたみたいだけど、前の状態を知る僕と葉山は超驚いていた。
いや、だって、ラボの建物、つまりビルがさ、高さ半分くらいに
なってるんだよ。
言い方を変えると、吹き飛んでる。
上半分が壊れて無いんだ。
僕は、思わず隣の雪華さんに尋ねようと、それでも驚きに言葉は追いつかでいると、
「大丈夫です、ラボの機能はきちんと残ってますから、建物としての強度も心配ありません事前に説明しないでごめんなさい、余計に驚かせたくなかったので、秋先輩には………」
と言われる。そっか、雪華さんは知ってたんだ。
驚く僕を他所にリムジンは、いつものラボの横、広い駐車場に今まではなかった白い箱型の建物の前で止まる。
なんだろう、スタイリッシュな掘っ建て小屋みたいな感じかな、そこで止まると、そこには雪華さんのお母さんが待ってた。
僕らが車を降りると、
「ごめんねえ、こんなにゴダゴタしてる時に呼んでしまって」
といつもの笑顔で迎えてくれる。
本当にいつもの以前と同じ笑顔で、言い方もなんの翳りもない。
一応、ニュースでで見たから小火は知ったたけど、これ小火っていう生易しい状況じゃなくて、建物の半壊なんて機能的には、ほぼ全損に等しいじゃん。
ひとまず今の現状のこととか、こんな有様になった経緯とかともかく聞きたいことはいっぱいあったので、まず何から話したらと思考の順番を整理してる僕に、
「じゃあ、いつもの調査するわ、お願いね」
って言われる。
流石に僕も、
「いや、大丈夫なんですか?」
って聞いてしまう。
「ええ、平気、スタッフも何人か入院したくらいで、幸い死人は出て無いのよ」
って笑顔で全然ダメな事を言ってた。そして、
「初めまして、多月さん、未来のご当主様に会えて光栄だわ」
って蒼さん見て普通に挨拶してた。蒼さんもペコリとお辞儀して返す。
確か、大柴マテリアルって軍事産業も参加してたから、国防系に繋がりの深い蒼さんの実家である多月家とは一応の面識があるみたいな言い方だった。というか立場は違うけどこの国の骨幹な人達だよね。僕ら一般人とは違って。
蒼さんも普通に挨拶してたから、初対面とはいえ、それなりの情報というか互いの面識とははあるみたいな感じだ。
「いつも通り程度に、調査、メンテなんかは全く支障が出ないくらいの仮設設備はあるの、ちょっと前よりも手狭になってしまってるけど、こういう調査って、穴を開けたく無いのよ」
って雪華さんのお母さんは言ってる。