第271話【膨れ上がる闘志、あれ? これ結婚式だよね?】
その後、真希さんに「ちゃんとプロポーズしろ!」ってクソ野郎さんど突かれて、「じゃあ、結婚するか?」って質問なんだかプロポーズなんだかって言葉に、アモンさん感極まって泣き出して、って大騒ぎになってた。
ちなみにこの『妻』ってクラス、このダンジョン史上始まって以来、二人目のクラスなんだって。
ってか以外だよね、一人目いたんだって、そっちの方が驚いたよ。ちなみにその人は、さらに『妻』から『母』へのクラスアップに成功してるんだって、凄いよね。
で、真希さんの話によると、今の状態ではそう遅くない内に『姑』へのさらなるクラスアップがされるんじゃないかって言ってた。ちなみに姑ってクラスは、女性専用にして、ほぼ最強クラスの一角らしいよ。
そんな説明を受けて、何故か近くにいた雪華さんが、「え? そうなんですか?」って僕に質問をしてた。
もちろん答えられる訳もなく、「僕は知らないよ」って答えたら、なんかホッとしてたなあ雪華さん。
なんだろ、その順調にクラスアップしてる人、僕の極近くにいるみたいな言い方にちょっと引っかかったけど、気のせいだよね。
話は散り散りになってしまったけど、まとめると、つまりアモンさんは、今日、この時点をもって三柱神ではなくなってしまったらしい。
よって、近く新しいアモンさんというか三柱神が誕生するらしいんだ。本来ならそこそこの、例えばハイエイシェント級な方々が代行も可能らしいんだけど、例えば、悪魔の花嫁のリリスさんとか、バンパイヤロードのキリカさんとかね、でも彼女たちは運営側からのそんな申し出には頑として断ってる。
特に、リリスさんは事情があるみたい。
あ、リリスさんの隣にいる土岐がこっち見て手を振ってる。
なんかあいつ、最近、すっかりあっち側だよなあ。着てる鎧もクロスクロスじゃないし。
今日も、アモンさん側の参列者として出席してるけど、その辺の事情は複雑らしい。
あ、今何か全部終わって、ああ、凄い、チューとかしてる。みんなも凄い盛り上がってる。
アモンさんとクソ野郎さん、照れも恥ずかしがりもしなくて、普通にキスしてる。
なんかすごい。
あ、そだ、花弁貰ってるるんだ、撒け撒け! おお、なんか僕もテンション上がって来た!
ワー、キャーと盛り上がる会場の中、あれ? なんか変だぞ………
ひとしきりの緊張感が、確実に僕は戦慄を感じた。
おかしいな、ここ結婚式会場な筈。
その会場にあって、こんな感情は………………………。
これ、間違いんなく殺気だな。
思わず、
「ねえ、葉山………」
って声をかけてみるけど、気軽に声をかけてしまったのを後悔するくらい、ただならない気配に満ちてる。
え? なに、これ?
全員???。いや違うな、男子は普通にテンション高くなってはしゃいでるだけだ。正確にはここにいる女子全員、静かに、まるで鏡の様に静まる湖面の様な様相をして、ただ殺気を垂れ流しにしてる。膨れ上がる一撃必殺の意思っていうのかな、互いに互いを隠そうともしてない。
よく見ると、流石に、そんな気配に気がついた男子が下がり始める。ってか女子と距離を取り出す。
よくよく見ると、僕くらいかな、未だ女子と一緒の群れの中で、自分の身の振り方に戸惑って、キョロキョロしてるの。
あ、大丈夫、D &Dの辰野さんもいた。なんか僕同様身の振り方に困ってオロオロしてる。
一緒だね、安心した。
すると、僕の隣で、さっきまで喜びに大泣きしてた真希さんが超真剣表情で、ただ一点を見つめていた、ってか他の女子も一緒だね、この視線。どこ見てるんだろ? ああ、いま、この会場からみんなに祝福されて退場しようと歩き出すアモンさんとクソ野郎さんを見つめてるんだ。
いや、それにしてはなんか表情がおかしい。これって、まさに獲物を前にした狼の様な目だ。
え? なにが始まるの?
「ここは譲りませんから」
って、静かにそしてその硬い意志が言葉として滲みでる様に話すのは雪華さんで、言われているのは真希さんらしい。
「やってみるがいいべ、小娘、ここは譲らないっしょ、止めれるものなら止めてみるといいべ」
とか、ヘラっと笑って余裕な悪役みたいな事言ってる。
「止めますよ、絶対に」
と雪華さん、すると、
「今回は一対一の形は取れないべ、周りは敵だらけ、その混戦を抜いてたどり着くのは私だべ、雪華、残念だったな」
ってどこの悪の首領だよみたいなことを言ってる真希さんに、
「潰しあってくれるなら好都合」
って葉山が未だ正体を見せない第三の新たな敵みたいな事を言ってる。
ゆっくり、ゆっくり歩くアモンさんとクソ野郎さん、そして高まる緊張感。
すると、真希さんたちとは反対側の葉山は、
「真壁はここからは見ないほうがいいよ、もう、目も当てられない混戦になるから、きっと周りの事なんて構ってられないから」
とか言ってる。
で、それってなんの話?って聞こうとしたいけど、その質問できる様な雰囲気じゃないから、「う、うん」って押されて出す様な返事しかできなかった。
そして僕の後ろに、僕もびっくりする様な巨大な殺気が膨れ上がる。