第268話第【浮鴉、ぶっ壊しやがって……、ちょっと顔かせ】
蒼さんの装備。
その短刀を見てビックリしてしまって、
「壊れちゃったの?」
って言ったら、
「真壁と一緒に戦うのは大変なんだよ、特に蒼さんの武器は普通のだしね、ほとんど戦闘の度に、新しいのを使ってるんだよ」
ってこれは、葉山が答えてくれた。
「うわ、ごめん」
って、思わず謝る僕に、
「お屋形様がお気にされる事ではありません、寧ろこのような拙い武器を使っての参戦に身を小さくする思いです」
って言ってた。
今日使ってたのは、一応メーカー品の短刀で、それなりの金額がするものらしいんだけど、以前、実家から持って来た国宝級の剣が、ちょっと前に壊されてしまったらしくて、それ以降は、割と手に入りやすい物の中でも性能の良いものを厳選して使ってはいるんだけど、僕と一緒に戦うと、毎回こうなるらしい。
「一体、誰がそんな酷い事を」
と、蒼さんのその国宝級の武器を壊してしまった相手に対してちょっと憤ると、
「真壁だよ」
って葉山に普通に言われて、たまたま近くにいた薫子さんも頷いてた。
ああ、この三人で行った、あの時かあ………、なんか、その、本当にごめんなさいって気分になる。
でもって、慌てる僕は、
「でもさ、また、新しい武器を実家からもらう訳にはいかないの? 褐さんに僕からも頼んでみようか?」
もうね、なんでも協力するよ、って気分だったよ、頭を下げて蒼さんに新しい武器が手に入るなら、なんでもする。
あ、そうだ。
「ダンジョンでいい武器ないかな?」
って言ったら、
「真壁はさ、今、自分の持ってる武器よりもいいものって、あると思う?」
って葉山に言われた。
今の武器って、このマテリアルブレードの事だろうか?
いや、無いよ、ある訳ないじゃん。
って、首を横に振ると、
「私の場合、バルカもそうだけど、このマテリアルブレードは手放すなんて考えられないのよ、蒼さんの持ってた武器って『浮き鴉』だったっけ? あれは、蒼さんの家系の中、永い歴史の中でその技術や大系に合うように造られた、オーダーメイドみたいな私たちの武器に近いものなの、同等、もしくはそれ以上の物ってなると、ダンジョンに落ちてるようなものではないわ、多分、蒼さんのご実家に頼むのが一番良いと思う」
って言った。そしてその蒼さんはそんな葉山の言葉を聞いてどこか寂しそうに笑ってた。
そっか、じゃあ、ずっと武器に関しては問題を抱えてたんだね。
蒼さんって、本当にこう事、話さないからなあ。相談してくれればよかったのに。でもわかった以上、こっちらから、あれコレ聞いてみると、一応、前の刀の壊れてしまったことは報告済みで、実家にその物も送ってる。
で、実家お抱えの刀鍛冶の人にも、特には怒ってもなくて、じゃあ何が問題なのさ、って思ったら、
その刀鍛冶の人が、「一度、『浮鴉』を斬った奴を連れて来る事」ってのが交換条件になってるらしくて、つまりは僕、一回、蒼さんの実家に行かないとダメって事らしい。
「それって、おかしくない? なんで真壁が行かないといけないの? なんか違う企みがありそうで私は賛成できない」
って葉山は疑い深くそんなことを言い出すけど、まあ、僕が顔出すだけで、再び国宝級の蒼さん専用武器が手に入るなら安いもんだよねって思うからさ、
「いいよ、どっかのタイミングで行こうよ、蒼さんの家」
って言ったら、
「ほ、本当に良いのですか?????」
って言うから、
「うん、いいよ」
ひとまず僕の頭下げれば、国宝級手に入るんだもん、なら安いもんだよ。
もうね、二つ返事の僕だったよ。