第266話【招待状届く】
拝啓 北海道ダンジョンも風薫るさわやかな季節となりました
ダンジョンで活躍の様におかれましては
益々ご清祥のこととお慶び申し上げます
さて 私たち二人はすでに入籍を済ませ、
幼き日より二人で生活していた寮から離れ、
新しい生活をはじめたところでございます
このたび遅ればせながら結婚式を挙げることになりました
つきましては これからも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りたく
ささやかながら披露かたがた小宴を催します
お忙しいところ 誠に恐縮ではございますが
ぜひご出席をいただきたく ご案内申し上げます
新郎 前住 宝
新婦 前住 青花(旧姓 アモン)
式場 大通4丁目公園『聖恩碑』前(深札幌側)
日時 別途お知らせします
あの事件が終わってから次の日にはみんなの元にこの案内が届いた、そして今日その式に参加してる。
あの日、僕らの行動は間違ってなかった。
それだけは言える。
でも、なんて言うか、その方法がちょっとダメだったらしい。
つまりは、それって、地面をスコップじゃなくて、スプーンで掘るに等しい作業で、しかもその穴の大きさは、『つどーむ』くらいの面積で、深さは建物と同じくらい。つどーむって野球とかやる広さがないくらいのちょっと小さめの多目的ドーム施設ね、よくフットサルとかしてるよ。まあ、そんな感じの無謀な挑戦だったらしい。
ちなみにことのあらましを全部説明した後に、真希さんから、
「お前、馬鹿だべ?」
って真顔で言われて、麻生さんに大笑いされた。
で、
「お前がついていながら何やってんだよ」
って一緒の西木田くんも、水島くんに呆れられてて、
「だよな」
って西木田くんも言ってた。
葉山も、
「だって、真壁なら出来そうだったし、事実途中までなんの問題も無く出来てたし」
って恥ずかしそうに言ってた。
もちろん、春夏さんは、
「秋くんのやりたいようにやって良いんだよ」
って、いつののように、僕に対しては全肯定だから、聞くまでもない。
ちなみに、神様仏様ゼクト様の角田さんは、
「お前がついてながら何やってんだよ!」
って真希さんに本気も本気で怒られてたんだけど、
「うるせーな、本当にやっちまいそうだったから思わず見てたんだよ、あんなの、思う奴はいてもしようとするのは秋さんくらいのもんだから、思わず、見とれてたんだよ、すごかったわ!」
と訳のわからないキレ方してた。
まあ、結局あの時、一番冷静だったのは、家に帰ってた薫子さんだった。
あの時、あの場所で僕らは結構なピンチを迎えていたんだ。
それは、あの時、ほとんど、透明な方を切り分けて、瑠璃さんの作ってくれた容器に入れるって作業の中で、あのスライム、こともあろうか、今度は透明な方を赤い葉脈というか血管というか根の方で包み込んだんだ。
で、ひっくり返って、つまりは今度は赤い方を切り分ける作業が始まる。
当初、瑠璃さんが二つの容器を用意してくれたのはこの事を予想していたから見たい。てっきり、僕は溢れてしまった場合の予備くらいにしか考えていなかったからビックリした。頭のいい人ってのは先の先まで読むよねえ。
って感心していたら、
「臆病なだけだよ、強くてタフな君はどんな環境にも対応できるだろ? 私にはそれができないからさ、先へ先へと用心して考えているだけだよ」
っていう事を言ってた。
なるほどね、って考えつつも、振り出しに戻った感がハンパないけど、まあ、そこはそうなったらやるしかないよね、って気をとりなおしていたら、どうも葉山とか蒼さんの動きが悪くなってて、疲労してるみたいな感じだったんだ。