第265【分別作業な攻防開始!】
いやいやいや、いくらなんでも世界は無理。って言おうとしたら、『一個打撃艦隊くらいはいけそうです』とか、蒼さんが不穏な事を言い出す。この人、僕が全世界を敵に回しても普通について来そうでちょっと怖い。
「それって、私か世界か? って事? で、私を選んだって事だよね?」
そうだけど、その時はそんなことまで考えてなかったよ、と言うか、なんでここで葉山が目を輝かしてくるのかな?
確かにかつて、雪華さんのお母さんを中心として、大柴マテリアルさんたちを敵には回したけど、そして、その指揮下に入ってた自衛隊さんからもなんとか逃げおおせたけど、あれは決して最初からその覚悟があって、って訳じゃなくて、いわゆる結果論であって、ああなってしまったんだよ、仕方ないじゃん。
っていうか、なんで今その話?と思うも、確かにあの時もこの二人、つまりクソ野郎さんとアモンさんに助けられたんだな、って事を思い出してた。
で、葉山は言う。
「絶対に助けたい」
うん。
いつも思ってた。
この人たち、なんでいつも修羅場に駆けつけてくるんだろう?って。
よくよく考えて見ると、僕が初めて出会ったのは、あの地下歩行空間での出来事だった。
あの時だって、きっと僕も気づかない、誰も知らない修羅場だったんだ。
「真壁!」
葉山の叫び声より早く、その触手化した伸びた体の一部は僕に到達する。
良い感じに試しに剣を振る。
僕のマテリアルソードを嫌って、逃げようとする伸びて来たそのスライムの一部を僕は切断するも、再び、切られた端から融着して、何事もなかったかのように本体の方に引き上げて行く。
「ちょっと、早かったかな」
いや、違う、欲をかいた、一度に多くを削ぎ取ろうとしてた。
もう一回細かくして見る。
今度は、瑠璃さんと桃さんの方に触手が伸びて行く。
微動だにしない瑠璃さんだけど、そこにしがみついてる梓さんは悲鳴を上げてる。
本当に、良い感じの打撃音、普通の鎧なら骨まで響きそう。
それじゃあ、って思い始めると、僕の斜め前に、葉山と蒼さん、後方に、春夏さん、そしてそのさらに後ろに、角田さんと桃井くん、そしてサーヤさん。そのさらに後ろにいる人たちを守るための形。、最後尾に下がる瑠璃さんと桃さん、梓さんに、西木田んくんを抱っこしたままの左方さん。
ん、良い感じだね。
最近、本当に戦いやすいなあ、って思うのは、あの時の世界蛇の時もそうだったけど、いつの間にか、こんな感じで、僕が一番動き易い形をとってくれるんだよね。
これって、葉山が入ってから以降で、全部葉山がしてくれてる事なんだ。
今は蒼さんも同じように動いてくれるから、便利なことこの上ないよ。
どうしようかな? ひとまず外皮というか、周りを包むようにしてる透明を刻むことにした。
何本か攻撃が来る。
その内、一本を、葉山と蒼さんが誘導して、取捨。一本だけこっちに来る。
見易いしわかり易い。
さっき掴んだタイミングで僕は剣を振った。
急がない。慌てない。面倒臭がらない。
まず一つ。
スルリと透明な部分をほんのちょっと切る。
イメージ通りの切れ味で、イメージ通りの速度で、イメージ通りの感触が僕の手に来る。
うん、できた。
切られた透明の方は、再び本体に張り付くこと無く、斜め横に飛んで、黄金の入れ物に落ちる、ちょっとこの辺のコントロールについては自信なかったけど、大丈夫だった、角田さんが上手にやってくれてる。
もう一つの黄金の容器は予備でいいな、基本、透明な方しか切らない予定だから。
と、そんな事を考えていると次々と来た。
あとは、同じことの繰り返しだ。
何より助かるなあ、って思うのは、この大きなスライム、ほぼ本能でしか動かないから、僕らのしている事に気付きもしないんだ。
だから、自分が削らてるにもかかわらず、全く意に返す様子も無くガンガン来る。
しかも同じタイミングで同じ速度で同じ打撃を与えようと来る。
おかげでサクサク削って行く僕だよ。