第256話【最強槍使いの内訳】
その内容というのが、クソ野郎さんの『姉』発言だったらしい。
詳しくは知らないけど、その決定的な事件の引き金を引いたのはやっぱりと言うか、この種のトラブルには必ず影を落とす、真希さんの存在があった。
真希さんは余計な事を言ったんだって。
その言葉は、と言うか質問は、
「なあ、宝、お前にとってアモンってなんだろうな?」
素で聞いたらしい。
軽い気持ちだったらしい。
ほら、良く園児に先生がさ、「●●ちゃんは本当にお母さん、好きね」なんて言葉に対して、言われた園児は、「僕、お母さんをお嫁さんにするんだ」的な発言、これ逆バージョンもあって、娘から父へってのもあるから、そんなノリで聞いてみた、で当時のクソ野郎さんの答えが、
『姉?』
そう、沈着冷静に答えたそうだ。当時を知る人曰く、そりゃあもう童子とは思えないくらいの落ち着きっぷりで、さもありなん、な感じだったそうだよ。
まあ、そうだよね、当時からしても昔のアモンさんっ今のアモンさんだった訳で、お母さんって見た目でもないし、じゃあ何かって聞かれたら、姉だと答えるのは間違い無いと思う。
でも、これは各上面、様々な推測なんだけど、この時はアモンさんは、「お母さん」って言われるのを期待していたんじゃ無いかって、言われている。
言われたアモンさんの落胆ぶりは凄まじかったって、当時を知る人は言ってるそうだ。
いや、だって、ほら、この歳の特に男の子の絶対存在って、お母さんでしょ。
お母さんが世界一って感じじゃなくて、世界がお母さんくらいの勢いで、つまり園児くらいの歳の男の子にとって、一心同体が3割くらいは剥がれている、丁度、距離を惜しむくらいの歳なんだよ。
だから、アモンさんもそのくらいは言ってもらえるって思ってたらしいって、そんな受け止められ方されてたらしい。
でもまあ、その辺はさ、当時のクソガキとしてもきっと気を使ったんだと思うんだ。
そう言いたい気持ちはあっても、母以外の誰かをお母さんって呼ぶのはちょっと憚られるみたいな感じかな? 僕も男の子だからわかるよ、学校の先生を間違ってお母さんって呼んだ時の、あのザラリとした自分にとっても相手にとっても与える違和感ってのは本当に気まずいものがある。
だから、きっと当時のクソ野郎さんなりに気を使っての事だと思うんだ。いや思いたい。
それでも、当時のアモンさん、ちゃんと、クソ野郎さんとの生活の場を地上に持って来て、きちんと学校に通わせて、生活の全ての面倒を見て、これは僕も知らなかったんだけど、今、クソ野郎さんって、市内でも有名な進学校に在籍してるみたいなんだ。それもみんなアモンさんが、もちろん、もともとクソ野郎さんの頭がいいのもあるけど、甲斐甲斐しくサポートしたアモンさんの存在があってこそだったらしい。
でさ、毎日ご飯とか生活の全てを面倒見てもらって、きちんと愛情をかけてもらって、その献身っぷりは、誰の目にも、もうお母さんとか、姉とか家族枠を超えていたらしく、もちろん、そんなアモンさんからの慈愛を余す事なく一方的に受け続けるクソ野郎さんだったんだけど、その代わりと言ってはなんだけど、かけられた期待には絶対に答えてたんだ。
あの超強力なアモンさんの神器、罪槍バーゲストの取り扱いもそうなんだって。