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第247話【彼の存在があるかぎり僕の前に開かない扉は無い】


 ああ、流石だなあ、って冷静に思っちゃったよ。じゃあこのまま赤い狐の顔に最接近するかな。


 バーゲストの自由を奪われ、それを嫌う赤い九尾は僕と対峙する事を避けるように横に流れる。


 もちろん追うよ。


 逃さない。


 いいから腹見せてよ。


 体が大きいから顔も大きい。


 ひとまず、下かからの斬り上げで様子を見てみる、って言ってるところに尻尾の攻撃が4枚来た。


 「任せて!」


 葉山が入る。


 葉山のマテリアルブレイドが綺麗に攻撃を押し返して行く。確かにこの九尾、この剣を嫌ってるなあ。じゃあ、とそのままアッパースイング並みに顎を狙って斬り上げると、そのまま、のけぞる様に一瞬首から胸、そして腹の一部が見える。速度は決して遅くない、でもこれなら、西木田くんにもバッチリ見える角度だよ。


 どうだ?


 西木田くんの方を見て確信する。すると、ちょっと険しい顔。


 どうしたんだろ?


 「真壁!」


 僕の代わりに葉山が入る。


 僕はそのまま下がって西木田くんの所にに、


 「何か問題あったの?」


 すると西木田くん、


 「『鍵』が掛かってる」


 と言った。


 ああ、ちょっとあのお腹の体毛の中にキラって光る物が見えたけど、あれ鍵ってか施錠なんだ。


 「アモンの奴、もう誰も入れる気ねーな」


 と角田さん。続けて、


 「俺たちやるこ事です、おそらくはセオリーがある、つまりあの施錠を開け中に入る為の鍵は外部にあると思いますが………………………」


 角田さんには珍しく歯切れが悪い。


 「方法があるなら言って、急がなきゃ、でしょ?」


 「どう考えても時間がありません」


 うん、そう悩んでる時間も惜しいんだけどなあ………。


 「特にアモンの場合は時間を大事にします、つまり、解答には時間がかかるセオリーになっている筈なんです、誠意を時間で見ますからね、あの女は」


 「なんとかならない?」


 「方法はあるんです、概ねセオリーの種類もわかってます、ですが求めれれている時間はおそらく半月以上ですよ、早く解答しても弾かれ鍵は手に入りません」


 うわ………、ジリ貧じゃん。


 角田さんは言うんだ。


 「秋さん、その剣なら、恐らく奴を切れます、だから」


 クソ野郎さんとアモンさんを斬り殺せって言う。


 わかってる、それは正しい判断だ。


 でも………………………。


 僕はその時、あの人を、心の底から屈託なく笑うクソ野郎さんの笑顔を思い出していたんだ。そしてそれは決して一つじゃなく、いつも二つある。必ずその横にはアモンさんもいるんだ。


 クソ野郎さんは助かるかもしれない?


 最悪アモンさんは失われるかもしれない?


 いやだいやだ!


 その時、僕の耳に、


 「きゃあ!」


 って葉山の悲鳴が入って来る。


 ダメだ、彼女達にあんな戦い方をさせては、もともと、葉山にしても蒼さんにしても、特に春夏さんなんて、相手の攻撃力を奪う、つまいさっさと倒してしまうって戦い方が正しいんだ。あの大きな力を振るって来る獣に対して慣れていない防戦なんて長く続く筈がない。


 「ごめん、気にしないでいい」


 とか葉山は言うけど、気にしない訳がない、ここは僕が行った方がいいと思う。


 でも、なあ、方法がなあ、こうしている間にもジリっジリと赤い九尾はその身を前に押し出して来る。どれだけ時間がかかるかわからないけど、確実にその歩みを外の世界に向けているんだ。


 本当に、もう行くしか無いのか?


 落ちて行くように暗く重い気持ちになる。


 その時だった。


 「なんだ、アッギー、ちょっど、ごまってるな?」


 って、笑い声が、僕のすぐに横で聞こえた。


 鍵、施錠………………!


 そうか、真希さんは助けを二人呼んでたって言ってた、ああ、そっか左方さんは、そうだよね、西木田くんを心配して駆けつけた、別の手なんだ。そうか、こっちが本当の助けか、なんだ、そう言うことか。


 「行けるのかよ? あれ施錠って言うより封印だぞ」


 と、角田さんが言うんだけど、


 「封印も施錠の一種だ、鍵が掛がってる状態だよ、い、いげる」


 と角田さんい答えるその人物は僕の前にヌーっと出てきて、僕に言う。


 「アッギーの前に鍵が掛がってるのが現れたら、なんでも開けてやる、だ、だがらあの封印って施錠を開けるのも、俺とアッギーの約束の一部だ」


 ヒョロリとしたその長身、長い手と足、ちょっと救世主とは言い難い、コケた頬にギロリととした大きな三白眼。相変わらず普通に優しい悪人面だ。


 「じゃ、じゃああアッギー、仕事の開始だ、ま、まがせてくれよ」


 ダンジョン鍵罠組合、久能 次男、通称ツギさんの登場に、僕はこの瞬間、このタイミングで、未だ何も解決できないいこの状態でなお、ほっとしてるのに気がついたんだ。


 何も終わってないのにね。


 でも、本当に、行き止まり感しかなかったこの状態で、ドン詰まってた感覚を見事にとき放つ、北海道最強の鍵師の登場に、僕は、自身が硬く凍てついていた事を自覚した。


 閉ざされていた扉を開く。ダメかもって思ってしまう硬い施錠も解かれた気分。


 本当になんでも開けるなあ、ツギさん。


 

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