第246話【開かない封印、閉じた獣、引き篭もる彼ら】
物言いたげだけど、これ以上余計な事言って西木田くんと関係悪化も避けたいって感じが滲みでてる。僕の方から断って欲しいって目が言ってる。
そこで僕は、突然発見したと言うか気づいたんだ。
「何かある? 思いついたの?」
って葉山に聞かれる。
「そうか!」
なんで今まで気がつかなかったんだろう?
つまり、
「西木田くんと左方さんて、男女と言う意味でお付き合いしてる関係ってことな訳だ」
失速する葉山。今まで割と余裕で躱してた攻撃をギリ避ける。
なんか、突然止まって攻撃を食らってる蒼さん。
「ああ、なるほど」って納得してる薫子さん。これも止まってしまうからバーゲストの鎖の横薙ぎの攻撃を食らってた。
春夏さんは変わらないね。キチンと対応できてる。
で、桃さんは笑ってた。その桃さんに「桃、笑うな、失礼だぞ」って笑いをこらえながら瑠璃さんは注意してた。
「そうだ、よくわかっな真壁」
って西木田くんの一言に、桃さん大爆笑してた。
ちょっと周りがうるさい、で不真面目だよね、もっと真剣にやりなよってなる。
「だから、西木田くんを危険な目に遭わせたくないんだよね」
って言ったら、小さいけど頷く左方さんだった。
まあ、わかんないでもない。
こう言うのは色々見てるから、土岐とリリスさんとかも結構酷いと言うか大袈裟だし、そう言うのはわかる気もする。
でもまあ、
「助けてくれると嬉しいけど、西木田くんが危ないならやるのはちょっとためらわれる」
って言ったら、
「方法はこれしかないぞ、このままあの獣が地上に出る方がリスクは高い、できる事はここで全部やっておくべきだ、真壁」
って言い返された。
「わかった、でどうやればいい?」
「奴の腹を俺に見せてくれ、そこから入り込む」
「だめ!」
左方さんが叫ぶ。
「大丈夫だ、以前もやってる、何より二度目だ、もっとうまくやれるさ」
って言う西木田くんだよ。
「ダメだよ、私の時にも翔、消えかけたじゃない!」
ああ、そうか、前にも一回っていうその機会は、左方さんが絡んてて、それを目の当たりにしてるから、彼女は猛反対だったんだ。
「こいつがさ、この剣に溶け込まれた時に、一回やってる、その時は死ぬかと思ったけどなんとか生還できた、今度はその時の経験があるし、何より今度はこれだけゴージャスな真壁パーティーが一緒なんだ、大丈夫だ、絶対に帰ってくるから」
と僕にでなく左方さんに言う西木田くんだよ。
もう、一目見て納得しかねる表情の左方さん。
その左方さんの剣を左方さんの手を取って、自分の足元に突き立てる。そして剣と左方さんの間に入って、つまりは左方さんの腕の中にすっぽり収まる感じて彼女に言った。
「しばらく体から出る、それまでお前に体預けるから頼むよ」
そして、ジッと左方さんの目を見て西木田くんは言った。
「また自分を見失いそうになったら頼む、お前の体で俺を思い出させてくれ」
「うん」
左方さんは頷いた。
「じゃあ、始めようか真壁」
わかった、ともかくあの九尾の腹を見せればいいんだね。
僕は前に出る。
同時に周りにいた葉山とその先にいた春夏さんと、薫子さんが下がる。
そして青さんが僕の後ろに付いてくる。
狙うのは顔かな? いや首の辺りかな?
もちろん、この後に及んでノープランの僕だよ。いや、もちろん結論は持ってる、どうにもあの赤いきつね捲って、腹を見せればいいんだ。
それにしても、こうした対峙してみて思うのは、本当にあれがクソ野郎さんとアモンさんの成れの果てなんだろうか、現実的にその融合している姿を見ていないからどうもピンと来ない。思わずそこそこの戦闘速度の最中、桃さんに守られるようにその腕を抱かれてる梓さんを観ると、これもまた現実なんだってのは理解できるんだ。
ともかくなんとかしないと、って思ってると、来たよバーゲスト! 罪を連ねるように連結された鎖は、振るう力を自在に操り、一番嫌なタイミングでやってくる。今はあの槍に力はない、でも当たった瞬間に解放するように力が集中する。
あの時、浅階層のラミアさんの時に僕の腕に伝わった感触は今でも忘れない。
正直、こんな武器もあるんだなあ、って、自分の腕を千切った槍を感心してみてたから、今度は対応できるよ。
先ずは刃先を合わせて………………………。
って思ってたら、
「お屋形様、ここは私が!」
って僕の後方から、ギュン!って感じでさらに加速して、青さんが前に出る。で、前に出て、僕が思ってたプランを実行する。