第245話【左方さんの本気】
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僕はダンジョンの事ばかりだったから、このダンジョンに入るまで、特に親しい友達もいないけど、ちょっといいなあ、って、そして普通に僕も仲間に入れてくれる彼等になんとなく恥ずかしいけど嬉しさもあって、その辺については感謝してるんだ。
そんな彼等って会うたびにいろんな所で大人になってるって感じることがあって、まあ最初は雪華さんや相馬さんに怒鳴られるくらいの悪ガキだったからそれを考えると、今の西木田くんとかって、本当に別人な感じだよ。
だから、僕も思うけど、僕が彼等を多分、成長してるって思う反面、僕も彼等から見たら少しは成長したのかな、とか、考えさせられるんだ。
「前にも言ったと思うけど、俺がやろうとしてる事の邪魔するなよ」
って掴んだ刃を押し返して、そんな言い方をする西木田くんだ。
「だって!」
「いいから、邪魔するなよ」
「何言ってるの? 翔、らしくないよ、普段なら絶対にそんな事いわないでしょ? おかしいよ」
すると、西木田くんは、言われてみれば、ってくらいの表情になってから、破顔する。笑う。
「言われてみればそうだな」
「だよ、おかしい、きっとここにいる『王』に意識が引き出されてる、操作されてるんだよ」
まあ、それもあるか。
なんてったってここにはこのダンジョンで『王』言う人は全部揃ってるもん。まあ誰がどう作用してるかはわからないけど、そう言うこともあるかもね。
そしたら、西木田くんは左方さんに、いや、これって多分誰に向けられた言葉じゃないな。
「まあ、あれだ、多分、俺、いい格好したんだよ、きっとそう、自分でも驚いてる」
って。
西木田くんが格好つけたいとか、かなり意外。彼等の仲間でナチュラルにそう言う事するのって水島くんくらいだと思ってたよ、鴨月くんとはも違うしね、特に西木田くんはそんな言葉すら言う人ではないって思ってた。
「秋さん、そろそろいい感じでヤバイかもしれません」
ってどっちだよ、って事を角田さんが言い出す。
「あいつら、こっちの戦力に適応し出してます、うまい具合の緊張はそろそろ限界ですよ」
って言われる。
確かに、このままではまずそうだ。
アモンさんとクソ野郎さんが融合した姿、赤い九尾は先ほどまでの狂った様な動きから徐々に速度を落としてる。つまり、あれだけ波状に攻撃を食らいながら、まるで遊ぶ様に立ち回ってる。
あれ? 葉山の奴???
バルカ使ってないな?
「どうして?」
と誰ともなく尋ねてしまった言葉なんだけど、その辺はきちんと角田さんが拾ってくれる。
「あれ使うと決着がついてしまうんです」
ん? あれ? バルカって確か、対角田さん武器じゃなかったっけ?
「まあ、そう言う括りは、それらしいのでみんなで相談して決めました、どれがどれでも対応してます、つまり神器であればどれでもいいんです」
んー、そうなんだ。蓋を開けてみると意外につまらないオチ見たいな話になった。
あ、じゃあ、薫子さんもヤバイじゃん、あの人空気読まなからガンガンあの丸い斧で攻撃しちゃうじゃんって思ってたら、薫子さん、ちゃんとカシナートで対応してるなあ。ってちゃんと気を使ってんじゃんって感心する僕なんだけど、
「薫子、『破斧グラウコーピス』、何度も真壁に叩き落とされてから、装備しないのよ、ね」
って言ってた。
「うるさいな、今は剣だ、今日花様に教えていただいてる剣に集中したいんだ、だからお前のことなんて全く気にしてないんだ、勘違いするな」
って言われる。
うん、まあ、なんでもいいや、結果オーライだよ。
ん? じゃあ、ちょっと待って、角田さんもヤバイんじゃないの?
そんな事を思ったらバーゲストが角田さんを狙いすましたかの様に飛んで来る。
「おっと!」
と器用に避ける角田さん、あ、なるほど、やっぱり当たったら不味いんだ。
「ちなみに聞くけど角田さん、当たったらどうなるの?」
「消滅します、俺もあの槍も消えますね」
と言うことは、最悪、角田さんの犠牲で、あの槍自体は無効化できるのか。
「いやいや、そこは守る方向でお願いしますよ」
一瞬僕の脳裏を光の速度で過ぎるナイスアイディアに対して苦言を呈する角田さんだよ、もちろんジョークだよ冗談。ちょっと本気で考えただけ。
そうか、赤い九尾、もう僕らの防御的な攻撃に対応して来てるのか。ちょっとのんびりはしてられないなあ。
「どうする、もうやるか、真壁?」
西木田くんが聞いてくる。
「うーん………………………」
尋ねられた僕をすごい顔して睨んでるよ左方さん。