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第241話【ここから、攻略開始】

 でもなあ、僕の少ない特に最近跳ね上がった経験則から言わせてもらうと、きちんと謝った方がいいよ、って思って、近くにいて耳をダンボ(聞き耳を立ててる、を北海道ではこう言う言い方をします)になってる葉山がいるので、


 「ここは誠心誠意だよね」


 すると真剣な面持ちで、葉山は言う。


 「シッ、静かにして、聞こえないじゃない」


 と怒られてしまう。


 下がりなながら、今は自分の霧を完全に封じ込める形になってる西木田くんを遺憾無く攻め続ける赤い狐なんだけど、距離を置いた前方では春夏さんが、その後ろでは左方さんが、上手に攻撃をいなしてる。だけど、左方さんそのまま怒ってるのはわかる。ツンツンしてる。


 そんな空気の中、


 「今日もこれだけ食っちまうと、晩飯抜きだなあ」


 って割と大きな声で独り言を言うんだよ。


 側から聞いてると、こんな時に食事の心配かよって取られるけど、西木田くんにとってはこれは切実な問題なんだ。


 確か、西木田くんて、自分に向けられた全ての事象を食べる『悪食』って言う珍しいスキルの持ち主だ。


 どんな衝撃でもエネルギーでも、自分にとっての熱量に変えてしまうらしい。そのために普通の人と同じ食事を取ると、だからこんな戦いの後に食事を取ると摂取過多になってしまって、以前の西片くんってちょっとぽっちゃりさんだったんだよね、今みたいにイケメンスッキリさんでもなくて、そんな感じの人だったんだ。

 

でも、いつの日からかな、おっぱいロードをかいくぐった時くらいかな、その容姿が劇的に変わったの。だからきっと食事には気を使ってるんだと思う。大変だねって思う。


 こんな時だからこそそんな言葉も出てしまうんだよきっと。


 僕もそのくらいの事は知ってるわけで、そんな思いを走らせると、左方さんは、まだ憮然とした顔で、


 「チキンサラダでいい?」


 って西木田くんに言ってるのかな?


 「なんでもいいよ」


 「なんでもはよくない」


 「いいんよ、一緒に食べれれば」


 って言う。


 あれ? 左方さん、もうちょっと微笑んでる?? いや、ここからじゃ顔はよく見えないけど、ほら、僕って女の人の怒りに敏感だから、その辺はよくわかるんだけど、もう怒ってないみたいなそんな感じだ。


 すると左方さん前を警戒しつつ攻撃を弾きながら、後ろにいる西木田くんの方に手を差し出して、その手を当たり前のように握る西木田くんだよ。横でかぶりつきで見てる葉山が「きゃー!!」とか言ってる。


 ほんとすごい。


 何が間、何がすごいかって言うと、見た目に取り回しの難しそうな大剣で、しかも片手で敵の攻撃を弾いて、全く体のブレも剣を持つ腕も押されてる気配もない事だね、本当に強いんだな、この人。でもって、持ってる剣も相当特殊だ。


 「すごいね、二人とも」


 って思わず呟くと、


 「ほんと、すごい、いつの間にだよね」


 って、うん、そうだね、って思うんだけど、僕と葉山が思う『凄い』の感じ方というか発してる色というか、なんか色々違う気がするのは気のせいだろうか?


 その左方さん、じっくり考えて、


 「だめ、温野菜、体冷えてる、翔の手が冷たい」


 って言う。


 「そうか?、………唯の手は暖かいけどな」


 「うそ」


 「うそじゃないって、唯の手は暖っかいよ」


 しっかりと握られたお互いの手は、きっとこの二人に襲いかかってきている罪なる槍の鎖よりも強く感じられた。


 なんかちょっと、思ってたのと違うけど、いい感じの展開になって来た。


 絶対に助けるからね、クソ野郎さん、アモンさん。


 ひとまずここから攻勢を掛ける。


 じゃあ、行くよ、って言おうとすると、春夏さん以外の女子が僕の後ろに集まって西木田くんと左方さんをがぶり寄りで見てる。


 もちろん、勘違いはしてないよ。


 ここに至って、僕はようやくスタート地点に立てたんだ。


 ようやく問題解決開始の時間だよ。

 


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