第238話【狼というよりキツネ? 赤いきつね??】
何より麻生さんがツッコんで来ないから、きっとこれはクソ野郎さん達を助ける上でも避けられない行動なんだとは思う。思うけど、でもなあ………………………。
「すまんな、真壁氏、私達も気を利かして女子を連れて来ればよかったんだが、ここはひとつ、恥をかいていただきたい」
と言われる。
「大丈夫だべ、ここには私と麻生しかいないから、誰にも言わないからな?」
とか言ってる。
いやあ、一番言い触らしそうなのが一人いるじゃん、って思うけど、ここは切迫してるし、他に方法が無いっていうなら仕方ないと、
「宝先輩! 好きです! 付き合って下さい!」
言った。大声て言った。
「ヒュー!! 言ったなアッキー、恥ずかしげもなく、良く言えたな!」
いや、あんたが言えって言ったんじゃん! ってツッコミ入れる前に、突然正面から衝撃が来た。これって、多分、普通なら即死なヤツだよ、もちろん僕の来てる大柴マテリアル製のジャージにとって全く問題にならない衝撃。避けるともしたかったんだけど、多分これが正解だと思う。
そのまま後ろに押されて、角田さんが開いたゲートに飛び込んで行く、僕と、クソ野郎さんとアモンさんの合成したヤツ。
「アッキー、このままそっちで決着をつけるべ、霧対策にすでに2人派遣してるべから、思う存分戦って来ると良いべ」
吹き飛ばされながら聞いたそんな言葉に、
「あれ? 真希さんは来てくれないの?」
「私は粉砕消滅させることしかできないんだよ、そうはしたく無いべ? 春夏もいるんだ、うまくやるべさ」
って言って声、僕の耳に消えゆく瞬間、
「万が一、浅階に現れたら、その時は悪いけど、こいつらは消えるべ、気合い入れて頼むよアッキー」
って言われた、ん、そんな感じに聞こえた。
そして、広がるクリアな視界、でも真っ赤。熱くも痛くも無いけど吹き飛ばされてる僕。同時に初めて見る目の前の獣な姿。
ちょっと距離を取ろうと僕は剣を振り上げると、何を嫌がったのか赤い獣の姿は僕から離脱する。
「秋くん!!」
「真壁!」
春夏さんと同時に叫ばれる。
僕らはゲートをくぐって、『厭世の奈落』に落ちてきたんだ。だからみんなそこにいる。
そして、離れた事で、その獣は全容の姿を見せた。
ああ、これ………………………
「九尾の狐」
と呟いてる桃井くん。
そうだね、まさにそんな姿だ。
昔しは人にというか人類に対して概ねアジアな地方で暴れまわってた妖怪。確か最後はこの国の侍に成敗されて、封印されて長い歴史を経て祭り上げられた対象は、今ではすっかり全国で親しまれる定番な国民食とも言えるカップラーメンになったヤツだね。
「じゃあ、その辺に緑色したタヌキもいるのかしら?」
って葉山が呆れたように言う。
「いや、赤いもの、そう考えるのは自然だよ、そうなんだね、瑠璃、この国を代表するあの人気商品はこんな妖怪伝承から出てきたものなんだね、深いなあ」
って桃さんも納得してる。その横では梓さんはなんの事だろ?って顔してるし、きっと僕としてはこの推測に一定の手応えを感じているから、きっとドヤ顔していると思う。
ともかく、対象名『赤いきつね(仮)』がとうとう僕らの前にその全容を現した。
萌える、じゃなかった、燃えるような赤く艶やかに変化する体毛に包まれて、確かに伝承の通りだね、尻尾は複数ある、と言うか数が変化してる様にも見える。そしてのその中に、あの『罪槍バーゲスト』時折姿を見せている。