第235話【真希さんとクソ野朗さんとダンジョンと……】
ここで確信したんだけど、この真希さんて、女子高生だけど僕にとっては姉的属性じゃなくて、母属性なんだな、親属性とも言う。
だから、もっとも逆らってはダメな奴だ。
わかったよ、やるしかないらしい。でもその上でも聞いてみた。こだけはハッキリとさせとかないといけない。
「クソ野郎さんも、アモンさんも助けられるよね?」
その答えは、二人の無言になってしまう返事でなんとなく予想はついた。
だから、聞きたくは無い。
そうだよ、そうでなければ、梓さんはきっと、クソ野郎さんを死んだなんて形容してない筈だ。
ちょっと重く気分が沈む。
と同時に何か無いかな、って考えてる僕がいる。
「私もあのクソガキを諦めたくは無いべさ」
って真希さんは言う。
ん? 野郎じゃなくてガキ??
「ん、あいつとはそんな時からの付き合いなんだよ、つまり、ガキなんだ、あいつは」
と真希さんは言う。
え? 何? それは真希さんとクソ野郎さんが幼馴染的な何かって事?
「小さい頃から知ってるんだ?」
「ああ、あいつかこんな小さい頃から知ってるべ、ダンジョンでも有名なクソガキだったからな」
って言った。
うっすらと見える真希さんの姿。その手の表す背の高さが、本当に幼い頃の身長を表していて、ええ? そんなに? って思うくらいの背の高さだった、あれって子供っていうより童子って感じかな?
「本当に面倒ばっかかけやがって、あっさり当時の荒ぶってたアモンに拾われた時は拍子抜けしたくらいだったべ」
とか言い出す。
「麻生も、あいつと同じくらいの頃からダンジョンの付近をうろうろしてたから顔は知ってたんだべ?」
と真希さん麻生さんに話を振るんだけど、
「ああ、そうだな、俺もあいつも工藤には世話になったからな」
とか懐かしそうにいう。そしてどこか嬉しそうだ。
ほんとほのぼのってかのんびり言ってるけど、こんな話をしながらこの人たち、本当に上手に敵の攻撃を往なしたり、避けたり避けたり弾いたいしてる。
「お、真壁氏、器用に避けるんだな」
って麻生さんに言われて僕もだったって気がついた。
ん? ちょっと待って?
小さい頃の真希さんの話だよね? つまりは小さい頃からの皆さんお知り合いだったって話だよね? 幼馴染的な?
「いや、真希はその頃にはもうギルドを組織立ててて当時はきちんと中心で長として活躍していたんだよ」
とか言い出す麻生さん。
ああ、そうか、麻生さんとクソ野郎さんの小さいころにはもう真希さんはギルド長だったんだね。
………………………………………?
おかしく無い?
あれ? ってことは………ん? その頃から真希さんは真希さんだったって事? いや、真希さんは真希さんだけど、そうじゃなくて今の真希さん???? え、ちょっと待ってよ、今、真希さんって何歳なのさ? まさかその頃からずっと女子校生って事???
僕はうっすらと頭の中に、僕自身が体験した、幼かった僕が体験した中に、出会った人の中に、あれ? 真希さんがいる。なんでこのタイミングて僕が今開いたらダメなやつの記憶が開示されて行ってるんだろう?
「え? 真希さん??」
って思わず真希さんをみてしまうと、うわ! すぐ横にいた、距離近い、で怖い、何その表情????
「アッキー、女子の年齢を根掘り葉掘り詮索するもんじゃ無いべ?」
って言われる。
「んん」って言いながら優しく僕の頭の上に置いてくれる手は、すでに攻撃の準備が整ってるって判断していいな、というか、普通に脅しだよね、ガトリング砲とかを突きつけられてる方が安全に感じるのは気のせいでは無いよね。
「女の子に歳とか聞く奴はな、正義の鉄拳で前頭葉とか消失した上に海馬とかも粉砕されてしまうべ」
多分、殴って記憶消すって言いたんだろうけど、大脳の部位を具体的に啓示して狙いを定めて言われてしまうと、なんかちょっと恐怖を感じてしまう。
ヤバイ、真希さんから来るプレッシャー、半端ない。
霧に隠れた敵も躊躇しているのか、なかなか反応が来ない。
「ほ、ほら工藤、今はそんな事をしてる場合じゃないだろ、真壁氏も、二人とも近くにいると狙われるぞ」
とか言ってくれる。助け舟を出してくれる。
そ、そうだよ、今はそんな事を考えてる場合じゃなかった、それどころじゃないんだ。
ま、まあ、真希さんの歳とか今はいいや、それどこじゃ無いから、今はクソ野郎さんのことだから。
でも、僕は止まってたけど敵の攻撃を食らうことはなかった。真希さんと麻生さんがガンガンとこっちに向かうあの鎖ついた槍の攻撃までもはたき落としてる。
というか、今気がついたけど、この人達、この戦い方を知ってるなあ。
以前にも体験した事があるんだろうか?
体の動きも言動も、どこか小慣れてる感じがする。
特に真希さん。全く見えないこの霧というかPM2.5の中を確実にその視線は相手を追っている気がする。
この人達、運営の人だから経験とかは沢山してるのはわかるんだけどこのことについては、ちょっと違和感を感じたんだ。




