第228話【瑠璃さんの憧れ】
すっかりトゲトゲした雰囲気なんてなくなってしまった、完全に瑠璃さん、桃さんに毒気を抜かれた格好になった梓さんは、その後、桃さんにベッタリとくっついていた。
「ねえ、焼く? 焼ける? 瑠璃?」
ってそんな姿を見せつけるように、瑠璃さんに見せて、言うと、瑠璃さんは何も言わずに微笑んでいた。僕の見た事がない種類の笑顔。なんかすげえ、とか思ってしまう。
そう、なんかすげえ大人の対応に見えたんだけど、僕には参考にしても仕方ないのでそのまま見て流す、よくわからないけど、こう言う人間関係もあるのだろうと言う事でまとめておく。
こう言うものもあるって、思うところで深く考えない事って大事だからね。
それはともかく、今はクソ野郎さんの事だね、ともかく梓さんの言っている事を簡単にまとめると、中階層の例の場所、『厭世の奈落』って所にあの二人はいるらしい。
「もう手遅れだ、今更行ったところでどうにもならないわ」
と言う梓さん。
いや、それ、さっき本人が世界の危機って言ってた奴だからね、それが例えば事実としなくても、少なくとも確認くらいはしないとね、だから、このまま看過できないから、どうあっても手を打たなきゃいけない奴だから。
雪華さんは対応策を練る為に一度ギルドに帰った。いや、本当に、もう出てこないと思う。だから茉薙もついていった。鴨月くんも相馬さんもちょっと怪我ひどかったし一旦離れてもらった。保健室に行ってる筈。
そのまま僕と、春夏さん、葉山に薫子さんに角田さん、再び僕の陰に入って行った桃井くんとサーヤさん、そして今は姿を露見させてる今までは潜伏して陰から見ていた蒼さんがいる。
後、HDCU(北海道ダンジョン商取引組合)の瑠璃さん、桃さん、そして異造子で今回の事件の中央にいる梓さんで、中層階に向かっていた。
まあ、粛々と進んでいる間に、桃さんが、瑠璃さんの自慢話をするんだよ。
どれだけすごい人とか、自分とどれだけ仲がいいかとかを自慢する。小学生かよってくらい言いまくる。
まあ、大半はハイハイって聞いていたんだけど、中には聞いて驚くような内容も含まれていて、この瑠璃さんって、今のところこのダンジョンでの年商が100億近くあるらしい、で、その大半を、と言うか、一緒に暮らしている桃さんとの生活費以外をほとんどダンジョンの為に使っているらしいんだ。
何よりすごいのは、ここ北海道って、親のいない子供が異常に多い。それは子供の為になると、無責任な親が捨ててくから、これはクロスクロスの土岐が言ってた言葉、同じ無責任な大人が捨てるんでも、北海道の子供の方が恵まれているって言う事で、わざわざ子捨てに北海道に来る親がいるのだから信じられない。
もちろん、無責任な放置とか時には酷い虐待で子供を傷つけるよりはよっぽどマシって言われてる。
僕もそれは思う。
本当にそんな酷い事する大人には同じ目に合わせてやればいいんだって思うよ。
あ、話は逸れたけど、瑠璃さんたちって、儲けたお金が余ると、いや計画的運用されてるわけだから、そんなお金は直接的にダンジョンに捨てられた子供達の施設にいろんな事前事業とか団体を通さず直接等分配してるんだって、だからそう言う方面からもこの瑠璃さんってちょっとした顔らしい。
何よりダンジョン以外の北海道内外の商業組合とかでもこんなに若いのに、僕とそう歳とか変わらないのに絶大な存在なんだってさ。
この人、僕よりちょっと年上なだけだよね?
経済とか、よくわからないけど、なんかとてもすごい人って気はするし、容姿だけで言うなら本当に美人さんで、優雅で可憐、驚いたり怒ったりって身を崩す事ってないんじゃないかなってくらい冷静で、その上さっきも言ったけど気っ風がいいから、すごい男前だよね。
そんな瑠璃さん以外なのは、将来の事。
「やっぱり、将来的には世界に羽ばたいていくんですか?」
って葉山の質問に、
「いや、普通に働いて、できたら結婚して、子供を作って育てたいよ」
って言ってた。
「私の尊敬する人は、今は一介の主婦をしていてね、生き方と言うか、一つ一つの所作に憧れるんだ」
と言っていた。
本当に以外でびっくりした。
いや、絶対に大人になったら偉人クラスで活躍しそうな人だからさ、なんか本当に以外と言うか、葉山も薫子さんも声を出すくらい驚いてて、その顔見て瑠璃さんが笑ってるくらいだった。
そうなんだな、そんなスーパーでグレイトな瑠璃さんも憧れる先輩とかがいるんだな、って思ってしまった。