第226話【HDCU(北海道ダンジョン商取引組合)取引開始】
でもなんかおかしいよね。この前から感じている違和感。
神様と人が兵器になるとか、
「あいつらは結局、魔物としての本来あるべき形として従って生きているだけです」
そう角田さんは締めくくる。
そうそう、それもあった。そう言えば、気になってたんだ。魔物ってどう言う意味だろう? 特に異造子さんたちは、自身の出生の説明に、モンスターではなくて、魔物っていい方をしていたんだ。たまにダンジョンではそう言ういい方をする人がいるけど、同じ括りとして考えていいののかどうかちょっと悩む。
「秋先輩!」
相馬さんの叫びで、今はそんな事考えてる場合じゃない事を思い出した。そうだ、今はそんなことよりもクソ野郎さんの安否だ。
ともかく、何処に行けばいいんだろ? って思って、僕は今まで相馬さんが戦っていた異造子さんを見た。
あ、そうか、この子に聞けばいいんだ。
「そのクソ野郎さん何処にいるのさ?」
と尋ねると、
「もう何をしても遅い、あれはもこちら側になったんだ、いくらこのダンジョンの事象を操れる者がいてももう無理だ、手遅れたぞ」
と言った。
そして、その異造子さんはさ、質問をした僕の方なんて見てないんだ。その視線は付されて、多分、何も無い床を見つめている。
本当に、なんだろうな? これは?
僕はその時、彼女の、その異造子さんの態度というか、言ってる事とやってる事と、そして今の彼女のそんな態度を見ると、ちょっと違和感というか、ぶっちゃけると、イラッとした。
僕にはさ、この異造子さんの恐らく、本人すらも自覚してない怒りとか悲しみなんかからかな? そんなところから来る後悔みたいな物を感じたんだ。
この子、確かに他の異造子さん達と同様に死にたがりだけど、なんか違うんだよ。
「なんだよ、梓、お前、助けてもらいたいのか?」
と、割と遠いところから声が聞こえた。
その声に、今まで、相馬さんと戦ってた時とも僕らに質問というか尋問みたいな形に追いやられていた異造子さんの表情が変わったんだ。
本当に、顔色ってのか表情がさ、絶望色した影に、太陽の光が差したみたいになったんだ。
そして、異造子さん、梓って言われた彼女は叫んだ。
「桃!!」
彼女の視線を追うと、そこには、以前色々と、温泉とか、お世話になったHDCU(北海道ダンジョン商取引組合)の松橋瑠璃さんと、高和桃さんがいた。
この前、ちらっと話に出てたけど、本当に桃さん、この異造子さん達の知り合いだった。
「本当に、相変わらず弱いんだから、みんなと一緒にいろよって言ったじゃん」
と桃さんは、本人が梓と呼ぶ異造子さんの元に行って体や顔をジロジロみて、「ボロボロじゃん」と言って、手にしたハンカチで優しく汚れを拭きながら、
「怖かっただろ?」
と言ったら、異造子さん、本気でボロボロ泣き始めた。
「お前、よく狂王とその取り巻きに喧嘩売ったな? ヘタレなくせに思い切りだけはいいヤツだったからなら」
桃さんはそうんな事を言う。
「だから、お前も私みたいに瑠璃に買われれば良かったんだよ、前にも言ったけど、今の私とお前はどっちが不幸なんだ?」
とか言うと、
「桃、声が大きいぞ、聴いてると知らない人間が変な勘違いをするだろ?」
すると、桃さんは、
「いいじゃん、別に、本当の事だし、それとも引いた?」
とか急に僕の方を見て言ってくるから、僕も困る。
いや、そんな言葉の表面だけって判断できないしさ、買う買わないってのも、本人同士の意思だし、第一、女の子同士じゃん、って思ってると、
「いや、ありですね、あの二方なら、それもまた『道』かと………………………」
と雪華さんは感慨深気にそんな言葉を呟いた。今回、こう言う話、多く無い?
すると、茉薙が、
「雪華、真希が呼んでたぞ、行かないと、早く戻らないと」
っと雪華さんの腕を引っ張るんだけど、
「茉薙、今私たちは大人の話をしています、茉薙は向こうに行っていなさい」
って言ってた。いやだから、雪華さんも十分に子供で、多分、これ18禁以上っぽい話だから、雪華さんも含めて僕らも話題としてどうだろうとは思うよ。
そして、桃さんは僕に向かって言うんだ。
「悪い、狂王さん、こいつ殺すのやめてほしいんだ、やったことに対する対価は払うから、瑠璃が保証する」
と言うと。
「私がか? まあ、いいだろう、そう言うわけだ狂王」
と瑠璃さんも驚くも、桃さんの保証を確約してくれる訳だけど、いや、そう言うのはいいから、僕も最初からそんなつもりはないし。
「いやだ、それはいやだ」
と梓さんはそう言う、否定なんだけど、桃さんがいるせいなのかもだけど、これまでの否定、そして威嚇なんてものはと違って何処か甘えがあるような気がする。
その否定に、
「何故だ? 先ほどの話を精査する限り、もう君は全てやれる事はやってしまったんだろ? なら、その事後の対応はこちら側でいいのではないのかな? それともまだやることがあるのか? 一応は忠告しておくが、この狂王に敵対するのは利口じゃないぞ、そもそも楽しくもない」
そう瑠璃さんが言った。