第222話【愚王の死】
相馬さんと戦っていた異造子人、結構傷だらけだ。
相馬さんもだけど、こっちも心配になるくらいの、目に見えるダメージを負ってる。
「二人ともいっぺんに始末してやる!」
って爪が最長に伸びるんだけど、その爪をバルカに撃ち抜かれて、
「こっち見なさい、もうお終い、それとも私達でおかわり行く?」
って葉山に言われて固るをえない状況に追いやられてた。
最近、葉山の持つ三柱神の一柱、ブリド、つまりうちの妹ね、その妹から譲渡された神器バルカって魔法スキルを持つものが魔法を銃弾として打ち出すことができるんだけど、最近、この魔法弾って、意識を変える事で打ち出す弾の性質を変える事ができるらしいんだ。いまのところ、葉山は12種類に分けてこのバルカを扱う事ができるらしい。ブリドである妹からは4種類の撃ち分けを教えてもらったから、後は組み合わせでなんとかできてるらしい。すごいよね葉山って、完璧か? 完璧超人か?
しかも葉山、新しい弾の種類ができるたびに藪から棒に断りもせず僕で試し撃ちする様な真似するんだよなあ、今撃った弾は『鋼弾』って種類で、比較的連射しやすく反動も少ない葉山にとってはポピュラーな物なんだけど、これも僕に向かって撃ったからね、しかも避けたら怒られたからね、そりゃあ避けるよね、まさか本気て撃ってくるとは思わないから僕も怒ったら、「大丈夫、直すから、ちょっと試させて」とか言い出す。
人に対して撃ってみてどんな効果があるのか知りたいんだってさ、僕で試さないでよって言ったら、「他の人の迷惑になっちゃうでしょ、こういうのって人に向けてはダメなんだよ」ってとても綺麗な目で言われたよ、じゃあ、僕ならいいのかよ、って話で、葉山って最近思うけど、僕になら何しても構わないって思ってるみたいで、その辺の真実というか本音って怖くて聞けないでいる。
それに最近の蒼さんだって、なんか変な技とか仕込んできて、落下制御しながら繰り出す一撃なんて、軌道が複雑すぎて、見てからしか対応できないよ。薫子さんだって、このところいい事なしだったから一生懸命鍛えてるしね、その時のモチベーションとかで思わず口に出てしまうのか「おのれ! 真壁秋め!」とか本気で言ってるし、うちに住んでる女の子って怖い子多いね。そして強さに関して上限以上を目指してるって感じがして、あんまり強くなっちゃうとお嫁さんに行けなくなっちゃうぞって、隣のおじさんに言われてたなあ、でも葉山の奴、「その件については一部話し合いが付いてます」って笑顔で言ってたから、どんな話になったのかなあ、って思うけど僕の心の隅っこにある僅かな本能が聞いてはダメなヤツだって訴えるから、聞いてない。
怖くて話題に触れられない。
そんなんで、今って僕の周りって変な緊張感というかピリピリしてる。
本当に自分家でも、もう安心とかリラックスとかしてられないなあ、って思ってってため息ついたら春夏さんが複雑そうな顔して見つめてた。いや別に強い女の子がどうのこうのじゃないから、春夏さんはいいんだよ。
いいの、春夏さんはいいの。
あ、良かった、いつもみたいにニコニコしてるや。
それはともかく………………………。
一体何があったのさ?
と相馬さんの顔をみると、
「秋先輩、こいつが………」
うわ、なんて顔してるの? 今にも泣きそうな顔して見つめられてしまう僕だよ、ちょっとちょっと、どうしたのさ?
鴨月くんがずっと相馬さんの怪我の手当てしてる。あ、葉山がヒール使って直してる。
ちょっと痛そうな傷もあったから、良かった、全快したよ。
「落ち着いて話して、いいよゆっくりで」
と僕はしゃくり上げてる相馬さんに言った。なんだろう、僕この子の泣き顔よくみるなあ、って思ってたら、
「私、真壁の泣き顔いっぱい見た」
って、なんの自慢だよ、いま、そういうのはいいよ、ちょっと黙ってろよ葉山は。
ってむかっとしちゃったよ。怒っても尚、勝ち誇った様な顔してる葉山がちょっとウザい。
それにしても、相馬さんて、年齢の割にクールなところあって、雪華さんの親友で、一生懸命で頑張り屋さんってイメージだったから、今、まさに見たいこのキレっぷりは正直言ってありえないというか、見た僕も信じられない。
「一体どうしたの?」
理由を聞かずにはいられなかった。
すると、相馬さんは、子供みたいにしゃくり上げながら、
「こいつ、師匠が死んだって! もうこの世界にはいないっていうんです!」
って言った。
えっと、あれ? 確か、この子の師匠………?
ちょっと錯綜してる僕に、まるで怒鳴る様に、
「愚王さんです!」
と相馬さんは言った。
ちょっと固まった。
いや、凍りついた。
いや、だって、あまりにも………、そうだよ、あのクソ野郎さんでしょ? あの人が死んでしまう分けないじゃん、それにアモンさんも一緒なんだし、ありえないでしょ?
と一瞬視線が泳いだ。で、思わず異造子さんの一人を見てしまう。
高校の高学年くらいかな、ちょっとサーヤさんと雰囲気が似てるのはきている服が頭からすっぽり系の黒いワンピースだからだろうか? いやワンピースっていうよりは袋に頭のと腕の穴開けてすっぽり入ってるって感じの、言い方悪いけと服以前の代物かな? とういうか異造子さんたちって本当に自分の身に着ける物に関して意識しないっているか無関しな気がする。
こっちは、葉山にバルカを突きつけられて、その上でほくそ笑んでる。
何か言いたげな笑顔。
だから聞いてみた。
「本当なの?」
すると、
「生きてるよ、生きてるさ」
ほんと、聞かれるのを待ってましたと言わんばかりに弾けたみたいに話し始めたんだ。