第220話【一先ず、ここは終了、次行こ】
ちなみに、このジャージを洗うのは専用の洗濯機があるんだ。家に装備されてるよ。あまり必要の無い情報なんだけど、二層式洗濯機なんだ、だから洗うのとってもめんどくさいと思いつつ、回ってる洗濯物ってずっと見ていてしまう僕だったりする。
あの洗濯物が水と洗剤でグルグル回る様子って癖になるよね。ああ、袖の部分が上に来た! って感じで。
あ、うちの家って特にダンジョンの事は、自分の事は自分でするから、僕も自分で洗ってるんだよ。でも偶に、薫子さんとか僕が回してる洗濯物の中に自分のジャージを投げ入れて来る時があるから、本当に、女の子なのにね、男子の洗濯物にね、ちょっとダメな子だよね。
後、このジャージはみんなそれぞれ3着づつ持っててローテーションさせているよ。
ひとまず、ここでのトラブルは収束したみたいだし、一旦、ギルドの本部に帰ろうとしたんだけど、また、遠くの方から悲鳴が聞こえて来た。
「真壁、対応するよ」
と葉山が言う。もちろんだよ。
「じゃあ、真壁また頼むよ、俺達は巡回に戻るわ」
水島くん紺さんペアは僕らの元を離れて通路に歩いて行く、行くんだけど、その間にも、
「先輩、一回戦闘が終わったら、移動しながらでも、装備の異常の有無を確認しないとっすよ」
「ああ、そうだったな、悪い、忘れてた」
「もう、しっかりするっす、ほら、そこジャージ捲れてるっす、防御弱くなってるっ って紺さん、水島くんの背中のあたりに手を回してジャージの乱れとか直してる。なんか見ていて甲斐甲斐しく見えるのは気のせいだろうか?
なんとなく感心して見てると、葉山が、
「多月系の女の子には一族の家訓があるからね、ほら、一心さんとかも辰野さんとかがいたでしょ?」
ん? いたよ、でも、ん?
ちょっと葉山が何を言いたいかわからない。
ちょっと困って葉山を見てる僕。
「わかんないよね、まあいいから人の事だから」
って言われてしまい、この話は完結してしまう。いいのかそうか、
「今度、蒼さんとかにも聞いてみようかな………………………」
とか呟くと、現れたよ、蒼さん、本当に急に右斜め背後、互いの最短表面距離にして数センチの所に、スッと出るのやめて。本当に、この蒼さんといい、さっきの桃井くんといい、この人達、僕をビックリさせる為にワザとやってるんじゃないかな? とか本気で思う。
おかげで、最近は悲鳴も上げずにちょっとドキドキするだけに収まってる、慣れで行く自分自身がちょっと怖い。
そんなドキドキが日常化しつつある僕に、
「蒼はお屋形様一筋にございます故」
と耳元でつぶやいて来るから、
「あ、うん、そうだね、ありがとう」
と、あくまでも秋の木葉の運営上の事だと思うけど、一応お礼を言っておく僕だったりする。
「いいなあ、紺ちゃん、いいなあ」
って恐らく蒼さんと一緒に来たであろう藍さんが、去って今は豆粒みたいに小さくなってる水島くんと紺さんの姿に羨望の眼差しってのかな、そんな視線を送りつつ、こっちをチラ見して、
「お屋形様は競争率激しすぎて………、誰かいないかなあ」
とかつぶやいてた。
なんの事かよくわかんないけど、まあ、ガンバ! って感じで心の中でそっとエールを送ってみる僕だった。
本当に、自分の身の回りの事だっていまいちよくわからない僕が、一応、真希さんから知らされてるダンジョンの運営についての事柄以外、このダンジョンの事なんてわかるはずもなかった。
だから、今は事後対応でいいからある意味安心はしてるんだよ。ああ、良かった、これなら僕もできるや。って思ってる。
気持ち的にはちょっとおかしくなってるモンスターさんはどれだけ強くてもいいやって思う。
だって、気持ちを察するとか、ましてそれが身近な女の子の気持ちだったとして、それがどれだけの無茶かって事だよ。事前も最中も事後も対応できない以上、僕としては為す術もないからね。
ほら、葉山のヤツ、そんな僕の心を察して、いやこれ読んでるな、で、ため息をひとつ。
何をがっかりされたかわからないけど、春夏さんは相変わらず微笑んでくれてるからまあいいや。
ほら、悲鳴と怒号が近いよ。
次に急ごう。