第217話【王というクラスとスキル】
隙というか、だいたい、このダンジョンで戦う普通に戦える人の、上限値をはるかに超える感じかな、しっかりすっかり剣を刃物として振れるようになってる。
「そうっす、水島先輩弱いんですからそうやって堅実に行けばいいんです、エンチャントなんて頼らないでもいけますよ、受けて斬って、ここは先に斬って、ほらまた武器に頼ってますよ、手首と足の位置を意識するっす、あ、そっち爪先向けちゃダメっす」
なんだろ、紺さん水島くん専用のコーチみたいに彼の背後で戦闘に参加することなく檄と言うかいい感じのアドバイスを飛ばしてる。
時折、水島くんから、
「うるせえよ! いっぺんに言うな!」
って合いの手が入るのはご愛嬌な感じなんだけど、なんか側から見てると、紺さん、マンツーマンみたいになって、鍛えてるんだな、水島くんを。
「あ!、いまいらない攻撃食らってますっす、周りの敵を余計に意識しすぎっす、意識の拡散と散漫は違うっすよ」
とか言われて、素直に一旦、距離を置いて、相手の立ち位置とか動きとかを確認して、また渦中に飛び込んで行く。
そんな感じて、あっという間にモンスターな悪魔達を倒して、
「凄いっす、上手になりましったっすねえ」
って紺さん、無上に喜んでて、こんな顔した紺さん見たことないなあ、って思いつつ、水島くんの反応をみると、
「ああ、ありがとうな、また頼むわ」
って素直に言ってた。
そうなんだ、紺さん、秋の木葉の中でもかなり強い方で、総合的にその戦闘能力ってダンジョンの中ではトップクラスだから、今、水島くん強くなる為にきちんとレクチャー受けてるんだね。
こういうことって、お互いの気持ちとか大事で、受ける人、教える人がきちんと意思の疎通というか、気持ちが重なってないとこんな短時間ての技能の向上はありえないから、きっと紺さんと水島くんの信頼関係というのもきちんとしていると思う。とか感心してると、
「大丈夫だったか?」
ってこっち来た。
「うん、平気だよ」
って返事して、ようやく初心者女子ダンジョンウォーカーから解放された葉山も、
「ああ、助かった」
とか言ってる。本当に解放されたって顔してる。
紺さんは、泣き出してる女子への対応をしてた。
「もうこの浅階層を閉鎖するしか無いんじゃ無いの?」
って葉山はいうと、
「でも、それはしたく無いって、真希さんが言ってたからな、ダンジョンの目的がどうのこうの? 意味はわからねーけどなら事後対応で頑張るしかねえよな」
と水島くん。
そうだね、それしてしまうと、ある一定の強さを持ったダンジョンウォーカーだけしかダンジョンに入れなくなってしまうからね。
まさにそれではダンジョンの存在意義がなくなってしまう、なくなってしまうらしい。よくは知らないけど。雪華さんも言ってたから間違いないと思う。
とか思ってると、スッと僕の陰から桃井くん。
で、いつもと違うのは、一緒にサーヤさん。
二人でスッとと言うか、ヌッと僕の影から顕現した。
「うわ! びっくりした」
本当に、いつものことだけど、いつもびっくりする。
それに桃井くんは角田さんと一緒にいた筈だよね。
「秋様の方が心配でついて来てしまいました」
と桃井くん、
「せっかく秋様が私と主人を一緒にとのご配慮でしたので、こちら側にいました」
とサーヤさん。
もちろん、この二人に反省の色など無い。
うん、仲良きことは美しき事だよね、でも僕の影に二人入らなくてもいいじゃんって思う、なんか居着かれそうで怖いし。
まあ、いいや、桃井くんだもんね、いつものことだよね。
こっちはともかく、一応は守っていたつもりだけど、僕らにしがみついていた人達、割と怪我していて、顔とかも擦り傷作ってた。
こっちの、男子は後から来たギルドのヒーラーの女子に直してもらってたけど、葉山にくっついてた女子は、葉山が直してた。
ん?
あれ?
今更だけど、葉山って回復が使えるの?
なんだよあいつ、バルカでロングレンジ、マテリアルソードの双剣でクロスレンジ、その上回復まで使えるのかよ、万能か? 万能超人なのか?
「何言ってるのよ、『王』のスキルを持ってたら、この程度のスキルは使用できるわよ?彼らを守るべき民って意識に載せるの、私からしたら、垂れ流しみたいに『掌握』とかダダ漏れさせてる真壁の方がよっぽどおかしいからね」
とか言われる。
葉山って今、『聖王』になってるんだけど、その能力、スキルを色々と試しているらしいんだ。
で、以前、僕がよく使ってたというか漏れてしまっていた『掌握』ってスキルを使用してみたらしい、他の人に迷惑をかけてはいけないから、僕に使ってみたらしい。