第213話【撹拌されるダンジョン】
ダンジョンの中で生まれて、ダンジョンの中で育った異造子さんたちの決起から、わずか数日後、ダンジョン内、特に浅階層に強力なモンスターが現れるようになるという、今までに例を見ない事件が起こっていた。
未だダンジョンの奥底に潜伏する残りの異造子さん達が何かしらをやらかしているのは明白な感じだ。真希さんとかが言うにはこのダンジョンというなのシステム自体をいじってる可能性があるって話。
ラミアさんの事件は別ね、あれは目的持って上がって来ていたから。
そうではなくて、ミスマッチとも言える遭遇が頻繁に起こる様になっていたんだ。
実際、僕も『鏡界の海』付近で、深階層にしかいない中級クラスの悪魔とかと遭遇した。
人くらいの大きさだけど、団体で現れて爪と魔法、ブレスなんかも吐いて来る厄介な相手、もちろん、その階層にたどり着いたダンジョンウォーカーにとっては対応出来る相手なんだけど、ここ浅階層だから、装備薄く限りなく一般人に近いダンジョンウォーカーの方が多くて、そこにとどまって冒険して技能を上げて行かないといけない、そんな彼らがこんなミスマッチの犠牲者になる。
いや、なんか、運営側として、初心者ダンジョンウォーカー相手に容赦しないモンスターさん達に。
「ちょっと、ここ場所違うよ」
と言ってみるも、全く話が通じず、そのまま襲いかかって来たので、返り討ちにしたけど、僕らは運営に回ってから、こう言うことってなかったはずなんだけどな。少なくとも以前のように、このダンジョンのモンスターとは敵対的ではないんだ。本当に、「ダンジョンお疲れ」って感じの関係になっていたと思っていたからビックリだった。
今、この時点てギルド、と言うか、この運営側、参加側の仕組みを知っている人達で、この問題に対応中な訳なんだけど、真希さんも最後の扉の向こう側、『深札幌』に行ったきりになってしまってるみたいで、今は雪華さんと薫子さんがギルドを回してる状態なんだ。
クロスクロスも協力中で、特に八瀬さんとかはダンジョンい入ったきり出てこれないみたい。
この所ダンジョン危機が続くよね。以前みたいに外に漏れてしまう事はないけど、今はこうして、浅階層の本当に浅いところの、これからダンジョンを楽しもう、っていう初心者ダンジョンウォーカーの人たちが被害にあってる。
今回のこの事件の発端を作ってしまったであろう、僕としては速やかな収束を待ちたいところではあるんだけど、僕行くと騒ぎが大きくなってしまうからね。仕方なく僕も消極的な見地から積極的に事後処理に回って、出てくる敵を倒している所。
「だから! 真壁! ぼーっとしてないで、戦ってよ」
ってダンジョンウォーカーの女子を二人守りつつ、その中級悪魔に一方的に狙われる葉山にそんな事を言われる。
そんな訳で今、僕らもこう言った事態に事後対応中な訳で、僕と葉山、薫子さん、多分どっか近くに蒼さんという組み合わせに、春夏さんと角田さん、桃井くん、桃井くんにくっついてきたサーヤさん。で、2つに分かれて、対応にあたっているんだけど………。
なんだ、葉山一人でも十分だと思ったののに、手伝いがいる?
「いるわよ、早くなんとかして!」
今回、駆けつけて助けた中規模のパーチィー女の子は二人とも葉山にしがみついて、葉山動き辛そう。一人の女子なんて、葉山の首に長すぎるマフラーみたいにぶら下がってるもんね。敵がどうのこうのって言うより、助けた相手に足引っ張られてる葉山なんだ。
あれだよ、海とかプールで助けた人が助けようとした人にしがみつかれて、一緒に溺れてしまう感じに似てるかもしれない。
それでも葉山は器用に2本のマテリアルソードを自分の肩のあたりに待機させて、腰のバルカを2丁同時に連射させてる。
こんな状態で、もう2体倒してしまってるじゃん、あと、えーっと、5体じゃない。頑張れ!
心の底で応援する僕も今現在、身動きが取れないでいる。