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第212話【修羅場に駆け付けられない彼等】

 そして、今の状態がベストだとも思えた。


 これの先がある事がわかったんだ。


 よかった、この剣以外を持つ僕なんて想像できなかったから、このままずっと、この剣を持っていられる事が春夏さんに認められたみたいで、なんか嬉しかった。


 こんな風に考えられるのって僕にとっても今の状況は意外なもので、僕って実態としてあんまり、武器とか装備に拘りがないんだよ。だからカシナートとかなんとか買って、いずれはこのダンジョンで手に入った武器とか手に入られたらいいな、くらにしか考えてなかったんだ。


 でも、この剣と出会えて、あれからズッと持ってる。一応、今まで聖剣とか魔剣らしき物も手には入れてるけど、角田さんによるとそれらの剣って結構便利な物もあったけど、持っては見たけど、この剣ほどのシックリ感はなかったんだ。と言うか、この剣ほどの安堵感と同時に限界の見えなさ具合がないんだ。


 ほら、普通剣を持つって、武器の性能とかその使い方とかすんなり入って来て、どう使ったらいいかどう扱ったらいいかって直ぐに分かるじゃない。


 でも、この剣ってそれがないんんだ。


 というか、未だ底が知れない。


 だから、持ってての高揚感とか安心感とかが半端ないんだよ。気持ちで言うところの、この剣ならいつまでも僕に付き合ってくれる付き合いの良さを感じるんだ。


 うーん、僕にもこの気持ちをどう言っていいかわからないけど、なんて言うかな、出会った瞬間に『親友』だった感覚かな? いや、これ最初から親友じゃんって感じを徐々に気が付いた感じかな? 考えをまとめようとすればするほど、僕もよくわからなくなってくる。今はこの話はいいや。


 で、そんな中、薫子さんは尋ねる。


 「でだ、なぜ、お前の仲間達は子供を浚う様な真似をしたんだ」


 と厳しい目で尋ねた。


 まるでギルドの人みたいな質問。事件を解決したがる姿勢と言うか不正というか悪いことは絶対に許さないみたいな空気がこの保健室に充満する。ああ、薫子さんギルドの人だった。


 すると、質問をモロに受けたみたいな柾さん、一瞬、薫子さんの質問に答えようとするけど、その前に、


 「ああ、ここに王がもう一人いたんだ」


 と言った。


 「こっちも王だな、これで全部っぽい」


 と榴さん葉山の腕を掴んだまま言う。僕は無し、とうか無視。彼らの言う王には僕は含まれないらしい。


 「梓の言うことは間違えなかった、子供は王を呼ぶんだな」


 と柾さんは言う。


 「でも魔神は一柱だな、条件が違うみたいだ」


 榴さんは言う。


 「流石に、梓でも複数体での対応はできない、だからこれで良かったんだ」


 と柾はは言うんだ。


 一体なんの話なのかこっちとしてはさっぱりわからなかったけど、


 そんな疑問の渦中なる榴さんがさ、


 「もう、いいんだ、終わったんだ」


 と言うから、その時、僕は彼女達がやろうとしてた事がさ、結局、血気に逸る計画の失敗に終わってしまったんだって、そう思ったんだよ。


 彼女の言葉を僕はそう捉えたんだ。


 と言うか、これは多分、僕以外にもみんなそう思っていたんだと思う。


 子供達は、難なく解放された。


 中階層の割と浅いところに集められていたらしい。


 そんな子供を守るみたいに、そこには一人の異造子さんがいた、その人もまた確保されたって。だから、今回の事件で五人の異造子さん達がこちらに投降したことになる。


 ひとまず、事件は解決したって、みんなそう思ってた。


 でも、違ったんだ。


 このわかりやすい『修羅場』を作ったのは、子供達をダンジョンに誘い入れた事も、この後起こる、このダンジョン最大の危機を作り出すための布石なんて言い方もできないほどの撒き餌に程度にしか過ぎなかったんだ。


 僕らはこの後、知ることになる。


 このダンジョンで、とある人物が消えている事に。


 そして、その事実がわかるのは、そんなに先の事でもなかったんだ。


 その後、僕らは気がつくんだ。


 なんでこんな簡単な事に気がつかなかったんだろうって。


 だってさ、彼等がこんなに分かりやすい修羅場に駆けつけない訳がないんだ。


 僕はもっと、ここにいる命を捨ててるこの人達の立場を理解しないといけなかったんだ。 

 


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