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第211話【強くなる僕、春夏さんの願い】

 葉山もなんの抵抗もしないで榴さんの好きにさせてるのもすごいよね。なんだろう、背格好はそう差なんてないけど、子供が大人にじゃれついてるみたいに見えるよ。


 ひとしきり匂いを嗅いだら、


 「なんだ、お前、人と同じ匂いがするな、でも、こっちの匂いもしている」


 と榴さんは言った。


 その言葉に、葉山は、


 「なんだろ? この子、茉薙に似てる」


 と呟く、ああ、そうそう、僕もそれしっくり来る。うん、特に人との距離感のわからなさ具合とかは確かに。自分の都合だけでグイグイ来るところも。


 そんな葉山の言葉なんて全く聞いてない様に、榴さんは、


 「ああ、そうか、お前、人側の魔物なんだな」


 と、納得の行く答えを見つけた様に言う。


 「それなら俺も見た、ちっちゃいのもいたよ」


 ってこれ、柾さん、自分を倒した茉薙の事を言っているんだと思う。


 いや、今もいるし、って、いつの間にか茉薙いないし、あいつ、雪華さんの方に行ったな、きっと。


 そんな、どこか納得した二人に、


 「でも今は人なんだよ」


 って葉山は言う。


 「人なのか?」


 って、驚いてる榴さん。柾さんもびっくりって顔してた。


 「うん、人、私、歯向かった後、この人にメチャクチャにされて人になったんだよ」


 葉山、言い方!


 びっくりする僕のことなんて全く意に返えさず葉山は続ける。


 「あなたたちだって見た目に変わらないよ? 人でいいと思うけど」


 すると、ちょっと柾さんは目を伏して、そして榴さんはゲラゲラ笑って言うんだ。


 「バカだな、お前、人から生まれたら人でいいけど、魔物から生まれたらそうじゃないだろ?」


 と言った。


 言ってから、


 「でも、そんなに簡単だったらいいのにな」


 って何処か寂しそうに呟くんだ。と同時に、これって見た目や表面的な事ばかりじゃなくて、きっともっと深い所に原因があるんじゃないかなって気がしたんだ。


 「簡単じゃないなら、その問題を解けばいいんだよ」


 と葉山も依然、簡単に言う。


 「無理無理、私たちは、罪が産んだ罪だからさ、そのためにもしなきゃいけないことがたくさんあるんだ、だから自分の事なんで考えている時間はないんだ、本当は生まれた瞬間、死ななきゃいけなかったんだ、でも、この仕事を終わらせないと死ねないんだ」


 普通に、至って普通に呟く榴さん。言い方は彼女の性格なのだろう、とても明るくて、彼女の言うところの死があまりにも希望に満ちていて、そんな表情を見ている葉山は少し何か言いたげだったけど、今はその事には触れずにいたんだ。


 「それがダンジョンに混乱をもたらって事? 例の世界を混ぜ合わせる的な?」


 思わず僕は口を挟んでしまう。


 すると、さっきまで黙って話を聞いていた柾さんが会話に出てきた。


 「違います、俺たちはダンジョンをあるべき姿に戻す仕事をしています」


 僕に対してとても真剣に真摯に答えてくれた。


 ダンジョンをあるべき姿にねえ………………………。


 すると、葉山は春夏さんに向かって、


 「これも詳しく聞いてはダメな奴?」


 とか尋ねてた。


 春夏さんは、


 「うん、秋くんに負担がかかっちゃうから、もうちょっと順を追いたいの」


 と言う春夏さん。


 「まだ、真壁を強くするつもり? まだ欠けてる要素があるの?」


 頷く春夏さんは、


 「うん、武器とかね、もう少しだから、せっかく用意してもらってる物だから」


 と言った。


 「うそ? 私から見て、真壁ってスキルとか使ってない状態ですらデタラメな強さなのにまだ先があるのかあ」


 とか言われてしまうが、僕、その自覚ないからね。武器ってどう言う事?? まさか、このダンジョンに伝説の武器とかがまだ眠ってるとか??? 思わず僕は、自分の持つマテリアルソードを見てしまって、ここに来て自覚する。


 今、僕が持ってる剣以上に、いろんな意味でこれ以上のものってあるだろうかって考えてしまうんだ。


 と言うか、僕、これでいい。いや、これが良い。


 すると、なんだろう、緩やかな温度かな?少し何かの意識? みたいなものが、僕の手、剣を軽く持ってる右手からやって来た気がした。


 なんだ? これ?


 僕の意識が拡張されてるみたいな感じ。いや違うな、この影響はもっと広い気がする、先に五感と言うか、それ以外の感覚、いや、考えるところかな? ほんとなんだろ? これ?


 以前からこの感覚はあった。でもここまでハッキリとしたものはなかった。だからちょっと戸惑ってる。


 「もう少しだね」


 って春夏さんはとても嬉しそうだった。春夏さんが嬉しいってことは、この件はもう考えなくていいんだって思えた。


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