第210話【人を真似る魔物達】
そんな僕の顔をペシっと叩く葉山の手。と言うか指先、ちょっと熱い。
「本当に真壁って春夏に敵対する、とうか、ちょっとでも敵意、ううんそんな片鱗でも見せると、途端だよね、落ち着きなさい、もう一回いうけど、春夏がそんな事しないのは私は知ってる、だから真壁もでしょ?」
そんな事はわかってる、でも、僕はそんな風に春夏さんが見られて誤解されているのが我慢できないんだ。だから、春夏さんも言った方が良いって、思ったけど、そう思う僕は確かに冷静じゃなかった。春夏さんは今の時点でそれを言える筈はないんだ。僕自身も知らない。とうか意識してはいけない記憶を上手に避けて、感情だけが前に出てしまうからこんな思考に陥る。
ダメだね、この話は今はしない方が良い。
大きく息を吸った。
「ごめん」
って誰にとも無く謝る。
「秋くんは悪く無いよ、大丈夫だからね」
って春夏さんはそう言ってくれるから、余計に自分の言ってしまったことに後悔した。でも僕は春夏さんをそんな風に見られたくは無いんだ。
でも春夏さんは言った。
「仕方ないの、禁忌に触れた者は罰を与えないといけなかったから」
と特に悲しいと言うふうでも無く言う。
そして、
「その事について、私は誰に恨まれても仕方ないの、だから、良いんだよ憎んで、私はそうしたから、もう恐れてはダメ、怖がってもダメ、憎しみでも良いから私に対して、あなた達は持てる筈だから」
と、まるで言い聞かす様に言った。
大きなプレッシャーをその身に受けながら、かたく目を閉ざして項垂れる榴さんの横で柾さんは言う。
「本当に人の器に収められていたのですね、これだけ近くにいたのに、全く気がつかなかった………」
と、なんとか言う。
「ごめんなさい、声を表してしまって、伝えてしまって、すぐに引くわ」
といつもの口調で、いつもの様に春夏さんは言う。もちろん引くとは言うもののここからいなくなってと言うか去ってしまうわけじゃ無い、相変わらず僕の後ろにいるよ春夏さん。
そんな急いで下がって行く春夏さんをまるで追いかける様に榴さんは言うんだ、いや叫んだんだ。
「誰があなたを恨むのですか! 私たちは等しく白く包まれ生かされているのです、お会いできてよかったです」
って言った。言って頬に一筋の涙を流した。
そして、葉山までも、
「私もそこまで感謝してないけど感謝してるから、春夏」
と葉山が言った。
「秋くんが望んだからよ」
と春夏さんが言うと、
「もちろん一番は真壁だよ、でもね、それでも、ありがとう」
なんて会話してると、榴さんが、
「なんだ、妙に肩入れして来ると思ったら、お前も魔物か」
って葉山に言ってた。
「そうだよ、魔物だよ、おかげさまでね」
って言う葉山は特に何も背負う様子も、何に傾くつもりも無く、いつもの葉山として言ってる。だからとっても普通の言葉に聞こえた。
そしたら榴さん、葉山を抱きしめて、いや、葉山を逃さない様にホールドしてって言い方の方が正しいかな? そして、犬とか猫みたいに首のあたりの匂いを嗅ぎまくる。