第204話【罪に身に守る子供達】
僕は今、安全なギルドの中の、最も安心しなきゃいけない所でモンスターとの遭遇感を味わっていた、ああ、これって多分、エルダーとかハイエイシェント級の物のプッレッシャーだね。
「真壁よく笑ってられるわね」
って流石の葉山も僕に言って来る。ん? あれ、僕笑ってる? ってかいつもどおりだよ。
じゃあ、ちょっと話を変えて、
「でさ、今、君を迎えにと言うか助けに仲間が現れた見たいなんだけど?」
と質問してみた。それについてどう思うか、とかどうしたいかとかそんな意味を限定しないで、たた言ったみたいに尋ねてみる。
「いや、私達は誰も助けないし、協力なんてありえないな」
と切られてしまう。
「いや、だって、沢山来てるよ」
「人数か? それは関係ないだろ」
と言われて、思うのは、この異造子さん達って、出方とか行動の仕方が人のそれより、モンスター、と言うか、いやモンスターさん達は概ね『運営側』なので、この場合、動物のそれに近い気がした。
つまり何も考えてない。
今回のことだって、こうして姿を現して、表立って攻撃してきたのだった、僕が巣穴を突いて、生存圏を壊したり、追い詰めてしまったからみたいだからって気がする。
ほんと、真希さんの言う通りだね、気軽に大きな組織を殲滅なんてするもんじゃないよ、今後はもっと慎重に動こうかな、って一頻り反省してみる。
「真壁にそんな事できる訳ないでしょ」
って葉山に囁かれる始末だよ。本当に僕の心で思うことって彼女達にとってはプライバシーのカケラもないもんな、思った事に答えな意で欲しい。一応は、そっと忍ばせて欲しい。「はいはい」ってその事にも返事する葉山だよ。
で、
「じゃあ、貴方を助けに来たわけじゃない、でも、それなりの数が個々に来ているって今の状況はなんなの」
と、葉山が尋ねた。
すると、
「私と一緒だよ」
と一言、榴さん。
「追い詰められて、最後の抵抗って感じかな?」
これは僕。
すると榴さんはまた笑って、
「バカを言うなよ、お前の配下にすら敵わない私達が、あの暴力の極み、凶竜に敵う訳ないだろ? わかれよ、自殺だよ、もう私達にはできることがないんだよ、全部終わったんだ、だからもういいんだ」
と言った。
「罪と汚れによって生まれた私達は、みんな最初から罰を与えられている、だから、罪を償ったら、このクソみたいな世界から私達の世界に帰るんだ、邪魔なんだよ、こんな体!」
さっきまでの言い方じゃない。
だって、凄く僕の心に突き刺さるくらい響いで来るから、この言葉が全てなんだと思った。
そして死んで戻るってどう言う意味だろ?、もしかしたら、死によって一度全部リセットされるみたいな考え方って、かつての黒の猟団でもされてたから、世界蛇とかも、この辺から来ているのかもしれない、って思ったんだ。
そんな言葉を受けて、びっくりしたのは葉山が怒ってる事。本当にわかりやすくワナワナって感じて怒ってる。
「罪って何よ?」
榴さんは、半笑いで、そんな事もわからないのかって感じで、
「罪は罪だ」
「だから、貴方はなんの罪を背負ってるの? 今、やろうとしてる事じゃない、やってきたことでもない、その生まれながらの罪って奴を答えて」
ビックリした、葉山、本気というか、真剣に怒ってる、ちょっとイラついたって言うレベルじゃないよ。
榴さんは、ようやく本気で怒ってる葉山に気がついて、その感情に目の当たりにして驚いてるみたいで、
「それがお前になんの関係がある?」
話にならないって程で、わかりやすくてこの論争から逃れようとした。
「ない訳ないでしょ? 当事者よ、いいから答えなさい」
ジッと榴さんを見つめる葉山は全く彼女を逃すつもりなんてない。
「だから、その辺については、茜から聞いてるだろ、私達はみんな魔物から生まれてるんだ、そしてこの姿だ、これを罪と罰と言わずなんと言うのだ?」
ここで榴さん、キレたみたいな物言いになる。
「わからないわ、何が罪なの、なぜ罰なの?」
「話にならない」
そう言ってから、
「もうこの話は無意味だ、みんな死ぬ、それで終わりでいいだろ? 敵は殺す、敵は死ぬ、そしていなくなる、これは当たり前のことだろ?」
そうだね、確かに簡単だ。
僕らはこの北海道ダンジョンで敵になるモンスターを積極的に排除してきた。言い方を変えればモンスターを殺して来た。
もう二度とあのダンジョンブローアウトを起こさない為に、ザクザクモンスターをやっつけて、つまり殺して来た。そんなモンスターとの戦いにあって、相手にもよるけど、僕らだって死ぬような思いをして来た、殺されて蘇生したダンジョンウォーカーだっているだろうさ。でも、ここに来て思うのは、そんな構図なんて最初から無くて、僕らもモンスターも死ぬって事が遠いんだよ、このダンジョンでは。
ダンジョンウォーカーなら例え死んでもそれは簡単に蘇る事が出来る。いいや、違うな、死んだ事がなかった事になる。僕らはこのダンジョンの中で命を落としても、存命な状態まで時間を戻されて死どころか、怪我をした事、戦った事すらなかった事になる。