第200話【迷走するダンジョン】
戦闘領域はなんとかかダンジョン内に収められた。
敵、つまり異造子の皆さんは地下から来てくれた。
連れ去られた子供達も順調に地上に帰されて行く。
特に拘束はされて無いんだ、子供達。何より、、ギルドの、その他協力組織の人達に対して、自分を攫った異造子達を心配している始末だよ。
一体、これって、何をしたかったんだろ?
異造子さん達は一気にかかってくるみたいな感じで、多分、ダンジョンにいる全員が僕たちの警戒線に引っかかって、戦線はわかりやすく、可視化している。
ここで戦線を維持するよりはこちらは数の上の戦力差を持って、なんとか地下に、それも出来るだけ深くに押し込めたい所だ。
意外だったのは、彼等の他に戦闘員がいた事。
それはモンスターとかもいるが、意外なことに人間、つまりダンジョンウォーカー側にも彼ら異造子達側に付く人たちがいた。
このダンジョンウォーカーの人たち、子供を地上から攫って来る人達に味方してるって、マトモじゃ無いだろ?
本当に何から何まで、一体何が目的なんだろう?
今はいいや、ともかくここを凌ぎ切らないとダメだ。
一人一人の戦力は大したことない。
異造子さん自体、茉薙やクロスクロスの女の子達(咲さん・小雪さん)に普通に倒せる程度。
いや、普通に彼女達も茉薙も強いけど、それでもこの人数なら脅威になる事はない。
一人一人の戦力からすると、キリカさんとかフアナさん、リリスさん達が本気になった方がよっぽど恐い。だからエルダー以上でハイエイシェント以下って所かな? 硬いけど、斬れない事もなかったしね。
葉山や一緒にいる薫子さん、蒼さん達、そして真希さんを中心とするギルドの人達にとっては敵じゃない。
だから思うんだけど、この人達、今、ここに出て来たって事は、もしかして捕まりに来たのかって思ってしまうんだよ。
もちろん、この人達に自分の力を過大評価してるって考えると無謀な挑戦とも言えなくもないけど、それにしたって、戦い方もなんかヤケクソっぽい。
ちょっと考えてしまうのは、この異造子さんの人達が、もう終わらすつもりで出て来たとしか思えなくて、じゃあ、なんで子供達を巻き込んだのかって話になるんだよ。
捕まった二人の為にって感じじゃ無いし、単純に離れたことが我慢できなくて出て来ちゃった事? お子様か? 我慢とかできない人なのかな?
ヤケクソまみれの自殺行為な計画とかなら、罪もない子供達を巻き込む必要はなかったんじゃないかな?
???????????
ダメだね。今起こってる事実と今まで知り得た情報の統合ができない。答えが出ない。
考える方は頭の良い葉山とか、雪華さんに任せて取り敢えず何しよう?
ソワソワしてると、
「待機って言われたでしょ?」
と葉山に言われてしまう。
「いや、でも、そっと行って戦力の一角を落とすくらいはした方が良いのかもって思ってさ」
「真壁が行ったら、また全滅させてしまうでしょ?」
と葉山が言う。
良いじゃん、それで、それの何がいかないんだよ。
「そうさせたく無いから雪華さんを通して残されたの、わかる? 決戦兵器?」
どう言う事?
それと葉山の言う決戦兵器って意味、なんか言葉として引っかかるから、その言い方、よく無いよ葉山って言いたくなった。
あ、解説してくれる雪華さんがいない。仕方なく周りを見渡してみるんだけど、みんな何も言わず、春夏さんはあいわからずニコニコしてるけど、僕も微笑み返しちゃうけど、答えは当然得られない。
仕方なく葉山を見ると、
「真希さん言ってたでしょ、あの人達、異造子の人達の気持ちもわかるって、だから、ここは戦線を拡大する事なく、敵の勢力を削ぐこともなく、うまく押し込めて地下に戻したいって事、あなたが行っちゃうと、こちらの形で決着がついてしまうの、それを真希さんはしたく無いって事」
ほほう。
なるほど。
で、それはどう言う事?
いや、そんな目して見るなよ葉山、言いたいことはわかる、つまりあれだろ、僕が行くと全滅してしまうから出ないで欲しいってのはなんとなくわかるんだ、でもそれをどうして真希さんが望んでいるのかわからない。
「だから、真希さんはあの人達の事、知ってる見たいな言い方してたでしょ?」
「ああ、そうなの?」
ああ、ダメだ葉山かなりイラついてる。こんなになるんなら聞かなきゃ良かった、って絶対にそう思ってる、ってかその前に僕の思ってる事に答えないでよ。
「だって、真壁、鈍いから」
だってさ、結局僕が悪いのかよ。
そんな僕が責められる室内、開けっ放しの扉から先ほどの数藤さんが来て、
「真壁さん、お手数ですが保健室に行って下さい、河岸雪華さんからの言付けです」
って言われたから、言ってみた。みんなついて来たけど、角田さんは「俺、待ってますよ」
って言ってた。そのまま数藤さんは多分、本部の方に消えてゆく。すぐ次の扉なんだから本の数歩の場所なんだけどね。