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第197話【公然とした所有者の秘密】


 つまりは、このダンジョンを管理するのが運営で、そこに間借りして住んでるのがダンジョンウォーカーで、このダンジョンっていう住処を作ったオーナーさんがいるって事なんだね。


 そうだよね、このダンジョンが自然に出来たとは誰も考えてないから、確かに階段とかエレベーターとかあるしね、それはそうだよね。でも言われて気がつくものの、実際には考えた事もなかった。


 そして、葉山は言うんだ。ちょっとの否定から入って………、


 「ううん、そうじゃない、所有者はわかってる、というか検討はついてる、本当の所は、目的はいったなんなのかって事、支配もしないでこんな状態で放置されているかって事、私もそんなに知りたがりってわけでもないから、このまま流れに任せても良いかなって考えはあるの」


 葉山の、あんまり聞いた事のない声の色。複雑な感情を表してるのはわかるけど、そんなに強くも無く優しい物言いだった。


 話てる相手は僕の後ろ、位置的に隣とは言い春夏さんを見て言った。いや尋ねた、に近いかな。


 真希さんはそんな様子を見て微笑んでる。


 そして、葉山は続けて、


 「まだその辺については話せないんでしょ?」


 って春夏さんに尋ねてた。


 「うん、ごめんね」


 って普通に春夏さんは葉山に答える。


 「ううん、いいよ、都合とかあるもんね、私の方こそごめん、聞かない」


 と葉山の言葉を最後にこの会話は完結してしまった。


 葉山の場合、僕と違って、一人でダンジョンに潜ってて、僕と戦った後に、雪華さんとか、真希さん達と一緒に生きるの死ぬののギリギリまで行ってるって以前葉山は言っていた。


 僕よりもきっと違った意味でこのダンジョンとか仕組み見たいのを垣間見たって、そしてその中心には春夏さんがいたみたいなことも一回だけ話てくれた。いや、きちんとでは無く、それっぽい事だけど、言ってた。


 そうだね、だって、そりゃあそうなんだよ。


 僕は一度は知ってるんだ。


 だから僕が、春夏さんと葉山の間にあった事を記憶として『ある』と言うことだけを感覚として知ってるけど、全容についてはその輪郭さえ今の僕は知る由もなくて、でも、今の会話もまた矛盾はしていないって感じるから、葉山が春夏さんに尋ねるのは当然だって理解はできる。相変わらすモヤっと、しっくりは来てない微妙な感じになる。


 感覚的に言うと、僕の春夏さんが葉山にさ、守っているものの一部が勝手に持って行かれて僕の断りも無く守られている感じがして、ちょっと複雑な気分だった。この考え方とと言うか想いは案外、子供っぽいのかもしれない、だからそんな話を聞いてると妙な気持ちだよ。


 もちろんその記憶というか真実について、今の僕は何も知らないから、この辺についてはなんとなくって言う感じでしかない。


 なんだろ、今の会話。


 雪華さんも真希さんも口を挟まないで、黙って聞いてる。


 もちろん真希さんはこのダンジョンの文字通り中心にいる人だから、そして雪華さんはいつもその側にいるから知っているのかもしれない。


 でも、僕は今は知ってはいけない。


 うん、まだ早いね。


 この事実を今知る事は約束を破ってしまう事だから、もちろんそれがどんな約束なのかは知らないけど、少なくとも言えるのは、春夏さんが困っちゃうって事だから、現状のままでいいんだ、って僕はそう考えてる。


 で、そんな真希さんが、


 「今はその話はいいべさ、それより今は暴走とも言って良い異造子達をどうするかが問題なんだ、彼等もまた大きな流れの中で生まれた犠牲者なんだべ、何をして来るかわからないけど、あんまし酷いこともしたくは無いからな、かと言って被害を出すわけにもいかない」


 とか言われれた。そして、真希さんにしては珍しく重い口調でこうも言った。


 「人は、いやモンスターだって、自らそう望んで生まれて来る訳じゃないからな、その辺は、こっちとしても受け止めてやりたい所なんだべ」


 何を言おうとしているのかわからないけど、言いたい事はわかるので、今の時点では納得しておく僕だった。


 ちょっと空気が湿って重くなった感じ。


 その後は誰も何も言わないから一通り報告も終わったし、さあ、帰ろうかなって思って口を開きかけたら、急に相馬さんが入って来た。


 バン! って感じで、いつもはきちんとした子だから、その慌てている様相に、僕の方が驚いてしまったよ。

 

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