第190話【いやいや、僕がモテる訳ないでしょ?】
それはともかく、今は、ここ世界蛇も秋の木葉みたいに僕、遠くから見守ってるよ。で、今回の様な問題が起こりそうなら、また手を入れる、で、その時は事前に桃井くん、そしてそれを通して、サーヤさんとキリカさんに伝えるよ、少なくもそうやって、意思の疎通や連絡を密にすることで、もうあんなことにはならないでしょ?
ともかくこれで一安心だよ。
って思って時に、不意に桃井くんが、
「それで、僕の方は、形の上とは言え僕がフアナもサーヤも娶りますが、秋様の方はどうなんですか? これを機会に正式にと言う形に?」
って、いらない事聞いて来た。
しかも、雪華さんが横にいて、葉山が壊れた書類をいっぱいに抱えてこのテントの入って来るタイミングでだよ。
もちろん、絶妙なタイミングと声の大きさで、彼女達に聞こえる様に言うものだから、
「ちょっと、真壁、勝手に話進めないでよ」
「秋先輩、今桃井教祖と私たちに話をしてたんですか?」
って、食らいつく食らいつく。
いや、違う、そう言う事じゃななくて、って言いたいんだけど、また僕の目の前で青い顔とかが暴れまわるから、あ、キリカさんもいたんだ。で、当然上を見上げると蒼さんが器用にテントの天井からぶら下がってこっちをガン見してる。
僕としては時間という薬で薄めていつの日か消えてしまう問題として取り扱おうとしていたのに、患部を刺激するような、寝た子を起こす様な真似は、って桃井くんを見るんだけど、本当にとても良い笑顔。
「秋様、一応、申し上げておきますが、僕の心も均衡を保つのに大変なんです、だから早く相談に乗れる様な関係になると良いな、って、秋様もこっちに来ると良いなって考えてます」
ええ? 嫌だよ一夫多妻なんて、正気の沙汰じゃない。
女の子なんて一人でも大変なのに、二人以上なんて全く正気というか平常を保てる気がしないよ。多分、僕の場合、一人でも大変だ。
いや、別に彼女達が嫌いとか、嫌だって言ってる訳じゃないんだ。それにさ、葉山はともかく他の女の子っが僕なんかを………とかも思う。
まあ、モテてる自分ってのを想像するのも、なんていうのか、そうわかんなくもないし、だったら良いなって思うけど、思うだけで僕自身、そこまで楽観的というか、ご都合主義的でもない。
だって、みんな綺麗で優秀で、そりゃあ葉山の時は僕だって命がけで、一生懸命だったから、その件について葉山が感謝とか、そう言う気持ちを持つのはわかるけど、だからああ言った事を、告白みたいな事をしてくれたのは正直に嬉しい。
でも、だからと言ってそれが僕として正直に受け止められるかってのは、一回、ちゃんと考えないとな、って思うんだ。
以前の僕って全く女子の寄り付かなかった男子で、ダンジョンに入る様になって劇的に周りの女子とか増えたから、女子が男子に対して行う普通の事にだって敏感になってしまってる。
いやいや、考えすぎ考えすぎとか、こんなことくらい普通に仲のいい男子女子でもするよ。
うん、友達だよね。
意識しすぎ。
とか、僕はそれでなくても考えが突っ走ってしまう傾向にあるから、必死に急制動をかけるんだよ。
総じていうなら、こんな僕が、そりゃあ強いかもだけど、それは人の評価の基準の一つで、そんなものだけしかない、僕がだよ、男子として、女子にモテるわけないじゃん。
って、そんな自信だけはあるんだよ。
自分、モテモテ!
ヒャッハー!!
なんて、馬鹿みたいじゃん。
ないない、家の中では最下層ヒエラルキーで、強いなんて言っても今の段階で母さんにすら勝てない僕がモテる訳ないじゃん。ってのが基本姿勢な僕なだよ。