第189話【呪いの様に憎しみを添付するモノ達】
で、その世界蛇の人たちがダークファクトなんて呼ばれていたのも、実際は死を演じるモンスターの処置、または肉塊になったモンスターの処置してるのを見られて、それが噂になって広がって、ちょうど良いねって事になって、そのまま定着したらしい。
僕は運営側として最近知ったんだけど、モンスターも死なないし、バラバラにしてもリユースされる訳だし、それを知った上で死体となっているモンスターを手にするのって、やっぱりどう見ても異常な行為に見えるもんね。
実際、病原菌をばら撒いてたのだって、ここんとこ最近の話で、それ以前なら呪いと言ってもせいぜいクシャミが出るくらいのもので、噂ほど凶悪な連中でもなかったみたいなんだよ。
それが、桃井くんを奪われたって思ったサーヤさんが、かなりトチ狂って、幼馴染のフアナさんを桃井くん諸共殺そうとしてたり、これは元黒の猟団の蒼さんも絡んでいた事だから大きく言えないけど、ともかく物騒な教団に生まれ変わってしまったって事だね。
まあ好きな人が離れてしまって、気持ちが裏返ってしまってその気持ちが殺意に転じてしまうなんて、僕には想像もできないけど、好きとか、そういうの僕にはわからないからなあ。
それを思ってもなんだかフアっとしてしまうんだよなあ。だから、僕にとって葉山を初めとする好意の形だって、正直、なんの反応もしようもないんだ。
嬉しいって気持ちはあるんだけどな。
でも、それはきっと何かに制御される様に僕の心の中では弾けたりはしなんだよ。
でないと、みんなからお祝いされる今回のハーレム婚だってどこか他人事で、冗談に聞こえてくるから自覚なくて困る。
そんな僕はちらりと春夏さんを見る。
春夏さんは相変わらず笑ってるなあ。
だから良いんだ、ってそこに基準を設けてしまう僕なんだよ。
僕の事はまあ良いや、ここ、世界蛇。
組織としてはたった一人の異分子によって操られてしまう様なそんな稚拙な組織には見えなんだけど、テキパキと働く皆さんをみて、そんな事を考えていた。
ちょっと引っかかっていた疑問、それに答えてくれたのは雪華さんだった。
ってかいつの間にか横にいたよ。
というか、今日はギルドに詰めてたんじゃなかったかな?
「軽い嫉妬、通常誰でも持ちうる本来ならプラスにも転じる悔しさを、呪いのように心の暗がりに誘い、気がついたときはすでに憎しみに染めてしまう能力のある物がいるそうです」
と、教えてくれた。
「じゃあ、今回、うまく引っかかってくれた異造子な人がそうだって事?」
「そうですね、彼女もまたその能力を持っていますが、皆さんお持ちのだそうですよ」
と言った。
なるほどね、これはちょっと厄介かもね。つまりさ、異造子な人ってこういう人の心の操り方に長けてるって事じゃないか
な。
これって、蒼さんの時も言える事なんだけど、どんな大きな組織でも頭さえ染めてしまえば可能で、その配下というかコントロール下になった組織って、優秀で統率力のあるリーダだからこそ、深みにはまってしまったのかもしれない。
重い物って動き出すと簡単には止まれないみたいな感じ。
まあ、その辺については、今、ギルドに拘束されてる、あの異造子さんに聞けばわかる事なのかもしれない。
そして僕らは多分、これでこの組織は大丈夫だと、そう思ってる。
ホッとしてる現状なんだ。つまり現在は油断してると言ってもいい。
だから、もうそろそろ来てもいい筈なんだけど、流石に昨日の今日みたいなタイミングでは来ないのかな? 僕なら今を見逃さないけどな………………………。