第187話【喜びに満ちる】
本当に心の落とし所というか、寒い日に外から漸く戻ってコタツに足突っ込んだ感じ。北海道の住宅にあんましコタツないけど、うちにもないけど、ともかくそんな感じ。
なんか最近、と言うかこのところこんな事が続くからちょっと心がゲンナリしてたのかも、でも春夏さんはわかってくれるから、それで良いから、いつものテンションに戻れそうな感じだった。
さて、それはともかく、僕、真希さんから『運営の仕事しろ』って言われてきているんだった。ちゃんとしなきゃって思って、サーヤさん達、つまり桃井くん達が待つ場所にへと行ったんだ。
彼らは仮の教会としている大きな、家とか一件簡単に入るくらいのテントの中にいた。
中に入ると、桃井くんが駆け寄るみたいにやってきて、
「この度は秋様に大変ご迷惑をおかけしました、謹んでお詫び申し上げます」
って頭を下げて、桃井君のその姿を見て、サーヤさんも頭を下げた。
いや、僕はそんな事いいんだけど、謝るのは僕も一緒だし、組織も建物ごと壊してしまったわけだしね、
「いや、僕の方こそだよ」
と、それでもあの時の行動は間違ってないとして、ここはあくまでも結果として壊してしまった事を詫びてる。だから、
「でも死人とか出てないよね?」
それはちゃんと手加減したはず、角田さんは焼いてたけど。
「はい、それは上手に加減されて綺麗に全滅させられましたから」
といつの間にかこっちにきていたキリカさんに言われる。
「私の配下のゾンビも、切られた断面も綺麗でしたから、すぐに復活できました」
とお礼なんだか文句なんだか、でも笑顔だから、僕も黙って微笑返してたよ。
そしたら桃井くんが、
「以前の中階層くらいでゴブリンを相手にしていた頃と比べて秋様の斬撃の断面は本当に綺麗になりましたね、あの時も凄いって思ってましたが、あんなに綺麗に敵を腑分けできるなんて、今回の事で改めて僕らの主人に相応しい方だと確信しました」
って言ってた。内容はともかく、なんとなくだけど以前の明るさみたいなものが戻ってたから、こっちも改めて安心するよ。
でもって、 僕はもう一回、このテントに入って来た時の様に回りをザッと見渡すと、そこには多分、世界蛇の中心の人たちなのかな? 数人の男女がいて頻りに何かを話し合っていた。
内容の方はあまりわからなかったけど、それでも暗い陰りとかはなかったから、きっと前向きな話をしていつたんだと思う。そうう考えれるくらい、今の雰囲気は以前の世界蛇の頃と比べて明るく、そして快活に見えたんだ。
そんな雰囲気というか空気を感じている時に、急にサーヤさんが僕の前に立って、思いを決したかのように僕を見つけてから、ひざまづいた。
「わが主神である白き神より選ばれし狂王真壁秋殿下、いえ、迷宮帝よ」
そんな彼女の仕草を黙って見つめるのは、ここにいる全員だった、桃井くんも、このテントの中にいる信者の人たちも僕に向かって跪いて祈る様なかっこしてた。
頭を垂れることはなくジッと僕らの方を、自分たちの未来を決するが如くに、その様子を見ていたんだ。
そして、僕の知らない言葉。僕の中の僕は知ってるんだろうけど、特に今は危機的状況でもないから起きては来ない、僕自身が沈めた僕の中の記憶にあるこれを聞いてる僕の知らない言葉、迷宮帝、そして白い創造神。
ん? サーヤさん創造神なんて言ってたっけ? あれ? どっから出た? 創造神??
僕の疑問の錯綜なんて御構い無しに、サーヤさんは言う。
「この度、夫、桃井茜との強制婚、ありがとうございます」
声が震えてる。そして、そのサーヤさんの頬を、ハラハラと涙が溢れて行く。
「誠に、切に、ありがとうございます」
叫び出しそうになるくらいの声でサーヤさんは言うんだよ。
なんか、そんな姿みてると、僕のこんな思いつきっていうか、僕自身を今現在進行形で追い詰めてる一夫多妻婚の発言も、まあよかったかもって思っちゃうんだよ。
僕のあの時の考えとか思いつきなんて、とても稚拙で、子供っぽくて、わがままで、きっと常識に考えてみればダメなのかもしれないけど、でも、それでも、そこにしか行き場がなかったから、言ってみただけなんだけど、この言うってともかく形になって言うのが大事な事だったんだ。
まあ、その一夫多妻婚ってのは倫理的というか常識的にどうなの?って言われると、僕としてもどうだろう?って思ってしまうけど、でも、彼等の場合、みんな仲良しでいるし、何よりフアナさんも喜んでたし、桃井君はどう思ってるのか知らないけど、多数決で幸せになっている人の数が多いから概ねOKでいいんじゃないかなって思う。
それに、ほら、僕、王様だからさ、きっと言う言葉に強制力とかあるみたいだから、これはもう一般的にとか常識的にとか言われても、僕が言うんだから誰の責任も無く仕方のない事なんだよ。