第184話【結婚はおめでとうでしょ?】
あたふたしてる薫子さん。
そんな様子を見ている僕を急に睨んで来る、
「なんだ! 真壁秋、何がおかしい!」
あれ? 僕笑ってたかな? かもしれない、だって仲間じゃん。
「真壁はいいのよ、だから、薫子だってわかってないでしょ?」
「喧嘩とかやめましょう、今は彼と彼女の話ですよ」
って雪華さんが割って入ってた。
「大事な事なの、横から口突っ込まないで、私と真壁の問題なんだから、関係ないでしょ?」
「関係ないって! 関係あります!」
葉山の乱暴な物言いに跳ね返すみたいに言い換える雪華さん。こうなると売り言葉が買言葉だよ。
「いい加減にしないか、今はそんな話をしている場合じゃないでしょ!」
と雪華さんと葉山の今まさに言い争いになろうとしているところに割って入る。声は小さいけど一応は言ってみる。
ちなみにいつ現れたかわからない茉薙は、雪華さんのやや斜め後ろでおろおろしてる。本当におろおろしに来たのかよ、って言いたくなるくらいの狼狽ぶりだ。
ほんと、なんなんだかなあ、って、諍いみたいなのを止める彼女達が進んで言い争ってる。これじゃあ本末転倒も甚だしい。
もちろん、僕は止めないよ、止めれる訳ないじゃん。
女の子一人怒っているのにも手に負えない僕に、みんなが怒っているのに介入できる訳ないじゃん。もうね、こうなると嵐が過ぎるのをそっと待つしかないんだよ。余計な事したらダメなヤツだ。
なんだか、関係ない人達が喧々囂々になっている間に、フアナさんが、桃井くんとサーヤさんを隔離するみたいに、僕たちから離して、何か言いたげなフアナさんなんだけど、何も言わず、桃井くんも、サーヤさんも二人ともお互いと言うか三人とも突きつけ会うみたいなな距離にいるのに、どこも見ていなくて、誰の口も動いていないんだ。
なんだか、ちょっとさみしくなってしまうね、こんな光景を見ていると。
「本当はみんな仲良しだったんです」
っていつの間にか僕の背後に位置を変えていたキリカさんがちょっと悲しそうに言った。
そっか、みんな仲良しだったんだ、だとしたら今のこんな関係は悲しいよね、本体なら、桃井くんとフアナさんが結婚したら、仲良しなサーヤさんとしては気持ちよくお祝いする筈だよね、それがこんな風になっちゃうなんて。
「あんた、脳みそ腐ってんじゃない?」
葉山が僕に、本気で吐き捨てる様に言った。物凄い怒気を含めてそう言った。
「なんでだよ、だってそう言うものでしょ?」
「じゃあ、さ、私が真壁以外の他の人と結婚したら真壁はどう思うのよ?」
ちょっと考えてみる、長くなりそうだから、と言うかこの答えって僕持ってないかのがわかるから考えるの止めて、普通に答えた。
「そうだね、ともかくおめでとうかな?」
「はあ?!」
うわ、すごい目して僕を睨んでるよ葉山。ちょ、ちょっと怖い、で近い。
「何言ってんの? 私が真壁以外の人の物になっちゃうんだよ、何あっさりおめでとうなの?」
なっちゃうんだよ、とか言われてもなあ、普通は結婚はおめでとうでしょ?って言いたいんだけど、葉山のその常軌を逸した声と表情に、そして何より数々の危機を回避しきれなかった経験上からこれは言っちゃダメだと謎のシグナルを受信してしまう。
「ねえ、ちょっと、角田さん、どうなんってるの? 僕にもわかりやすく教えてよ」
いい加減に限界になってしまって、早くもこの戦線から離脱している角田さんに縋る僕に、
「いや、秋さん、これ知識とかいらない奴ですよ、自分で考えてみましょうね」
とか言われる。あんた教育番組のお兄さんかよ、視聴者に振ってくるなよ。
まあ、つまり、あれだ。
葉山は誰かと結婚しておめでとうだと怒る訳だ。
ここで問題なのは、結婚というか言葉なのはわかる。
でも何が怒る原因になるのかがわからない。
普通は結婚はおめでとうだよね。
ああ、ダメだ、これじゃさっきと同じ思考だよ、葉山が怒るやつで、サーヤさんの怒ってる原因だよ。
激しく悩む僕に、
「殿下、頑張ってください」
「秋先輩、しっかり、もう少しです」
「お屋形様………」
キリカさんと雪華さんと蒼さんが応援してくれてる。あれ? いつの間に蒼さんきたんだろ? いいや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
ともかくだよ、そこにサーヤさんと桃井くんが仲違いをする原因があったって事で、ここで考えないといけないのが、何をして関係が崩れてしまったかって事なんだ。葉山が怒ってしまったかって事なんだ。
行動だよね、何をしたかって事で、何したんだろ?