第183話【どうして葉山が怒ってるの?】
犬種について、優しく否定され、同時に是正してもらって、 それと同時にいい加減だな僕って呆れるけど、それに思い込みって怖いねえって思いつつも、ちょっと恥ずかしつつも可笑しくなって雪華さんと笑ってたら、
「そこ、うるさい」
って葉山に怒られたよ。
つまり、ほら、あれだね、仲が良い筈の二人が諍っちゃったって事だね。
まあ、わかるよ、仲が良いからこそ対立してしまう事だってあるよね、でも、桃井くんの方はともかくサーヤさんパッと見に大人なんだから、その辺は上手く回避できなかったのだろうか、とか考えてしまう。でも、まあ、
「喧嘩はダメだよね」
と無難な事を言っておく。
「ほら、わかってないじゃん」
って葉山に言われる、鬼の首取ったみたいに言われる。
なんなんだよ。なんで僕、葉山にイラつかれてんだよ、って思うから、
「じゃあ、葉山はわかるのかよ」
って聞いたら、
「今みたいな感情なのかもね」
って言われた。
「でもさ、本当の仲良しだったら喧嘩なんてしないよね」
って言うと、
「するわよ、だって、なんでそう言うのわかんないかなって思う時だってあるから、そう言うのって言い合って、時には本気で怒って、喧嘩になったりだってあるわよ」
葉山がいつになくムキになって僕に言って来るから、
「いや、それがわからないんだよ、仲が良かっらたさ、別に何言われても良いんじゃないかな」
そしたら、葉山の奴、イラつきってか、もうどっちかって言うとつっけんどんに、
「もう良いわよ、どう言ってもわからないから、どうせ真壁にはこう言う女の子の気持ちなんて考え様ともしてないんだからね」
って言われてしまうから、さすがに僕も言い返した。
「いや、だからさ、別に良いじゃん、好きな事言われたって、僕は別に腹も立たない、いやイラっとはするけど、喧嘩には至らないよ」
「だから、真壁にはわからないって」
って葉山はもう聞く耳持ってない。
「だからさ、僕は葉山の事好きだけど、その葉山に何言われたって、葉山を倒してしまおうなんて、そんなことは考えないって言いたいんだよ」
って言ったら、
葉山、間に入ってこようとしていたキリカさんを自然な流れで突き飛ばして、僕に最接近して来る。
「今、なんて言ったの?」
「だから、僕と葉山は仲良しでしょ?」
「言い方違うでしょ、同じ言い方で、もう一回言いなさいよ」
え? 僕、なんて言ったっけ?
「ああ、僕、葉山の事は嫌いじゃないから撃ち滅ぼしたいなんて思わないよ、って言ったね」
「違うよ、なんか言い方、距離が遠くなってるよ!」
葉山にしては珍しく、言い方が切羽詰まってるけど、
「今大事なのはそんな事じゃないでしょ? 今は桃井くんとサーヤさんの事なんだから」
と、本当に葉山ちょっとこっちに迫らないで、暑苦しいから。
「すごいですね、秋さん、異性への出入りの速度とフェイントの入り方が神がかってます、ナチュラルボーン、ジゴロですね」
とか角田さんが訳のわからない事を言い出す。
「ちょっと、黙っって、今大事な話をしてるんだから、ちょっと真壁、何離れようとしてるのよ!」
いや、だって、葉山がどんどん来るから、こっちもどんどん下がってるだけだよ。
「葉山静流、さすがにその物言いはゼクト様に対して失礼ではないか?」
と、自分の神様仏様ゼクト様をぞんざいに扱われてご立腹な薫子さんだった。
「煩いな、薫子だって、今の状況なんてまるでわかってないでしょ?」
と葉山に突っ込まれると、
「な、何を言う、つまり、その、なんだ………」
「接続語しか出ないじゃん、わかってないんだね」
って葉山にダメを押されてしまう。
完全に僕サイドって認定がされているようだった。