第181話【望んだ未来、果たされなかった想い】
別に無理に家に誘ったわけじゃないんだよなあ、桃井くんが言ったら普通に来たし、本当にサーヤさんって何がしたかったんだろう? 思い出すと、この人、最初はフアナさんを名乗ってた様な気もするしね。
「秋様、もう少し時間をいただけませんか?」
と桃井くんが真摯に僕にそんな事を言った。
その顔をジッと見つめる僕は、以前ほど桃井くんの表情に暗い部分が見えなかったから、きっと方法はともかく、結果として間違ってなかったんだな、って心のどこかで思って、僕は、
「うん、良いよ、桃井くんに任せるよ」
少なくとも形は変わったんだ。だからその中にあった問題も無くたってしまったってほど乱暴に考えてないけど、きっと当たって来る側面が変わって、以前ほどの痛みは感じられなくなったのかもしれない、って僕は思った。
時間が必要なら待てば良いんだから、ともかく、ここで一つの節目は迎えたんだと思う。
そんな時に、サーヤさんはご飯を食べ始めた。
そして、
「なんで私、ここでご飯だべてるんだろう?」
って素朴に疑問を呈していた。
そのことについてはごめん、僕が組織壊してしまったからだ。本当にごめん、でも僕の目的の一つは叶ったので、ここは全力で謝っとくね、心の中で。
そしてその後は誰も喋る事無くご飯を食べて、そのまま寝た。
その間も、桃井くんはサーヤさんの周りで甲斐甲斐しく世話を焼いていた。と言うかどうしていいかわからないサーヤさんを終始気遣ってた。
そんな姿が自然で、今まで二人が行き詰まった感じに敵対していた方がどうかしてるなあ、ってそう思えたんだ。
ちなみに僕の部屋には茉薙と桃井くん。
いつもは僕の部屋の天井にいた蒼さんは、サーヤさんを自分の部屋で寝かせようとしていた葉山の天井に張り付いていた。きっと心配していたんだろうと思う。
そんな時、眠りに入る時に僕は少し考えたんだ。
サーヤさんとか桃井くんには親がいるんだよね、その親ってどこに行ったんだろう? って僕も素朴な疑問にたどり着いちゃった。モンスターといえど親だもん。きっとダンジョンの中にいるのかもしれないね、あの『深札幌』のどかにいるのかなあ? だったら一度会って置きたいかもとか思いつつ、今日のあの雰囲気って何かに似てて、その時何故か僕はあの時、葉山と戦う前に見た夢を思い出していた。
ああ、そうか、あれは………………ちょっと悲しくなったけど、そのまま寝た。
で、次の日。
春夏さんと角田さんが合流。
ダンジョンで僕らは深階層の入り口ってか例の風の砦の前の広場に来ていた。
なんか、どうしてもこの話し合いにはフアナさんが必要なんだって、で、どういう訳か、僕の隣にキリカさんがいる。
まあ一応は関係者だし。
「そうですか、殿下は、この絡みきった糸を紐解く為にご尽力なさっていたんですね」
とかちょっとわからない事言ってたんで、適当の微笑みで返していた。
「真壁はそんな事まで考えて行動しないわよ、ほんと真壁の事、何にも知らないのね」
って葉山が勝ち誇る様に言うと、
「お戯れを………」
僕の有能を信じるキリカさんは微笑んでいた。
いや、マジマジ、本当にこの状態にたどり着くなんて考えてはいなかったんだ、なったら良いなくらいには思ってた。
あの時も、そしてこれからも、きっと異造子の人は世界蛇を使って悪い事して来るだろうしね、それに、このまま行ってもいずれギルドとか何処かで対立、というか戦争になっていたとは思うんだよ、じゃあ僕がやっても同じで、やりすぎはないかな、って今だから考えられる訳で、転んだ拍子に掴んだドアノブをドアごと引っこ抜いてしまった感じかな、鍵とか開けるまでもなかったや、って感じだから、葉山の言ってる方が正しいのかもしれない、言わないけど。




