第180話【静かすぎる食卓】
角田さんだって、外の勢力を潰す様に焼いてくれてたし、薫子さんだって、それ援護してたしさ、そうだよ、おかしいよ!
「お前が戦端開いたべさ! 原因を作ったのはお前だべさ!」
あ、ああ、そうかも。でも、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃんって思うんだよ。
「しかもお前、大した反省もせずに結果オーライかな、とか思ってるべさ?」
い、いや、そんな風には、ちょっとだけしか思って無いよ。
「ともかく、あの集団はいい感じにダンジョンの深階層で緊張の元になっていてくれたんだ、したっけここまで細かく潰されてしまうと、世界蛇がそのまま復旧って事にならないだべさ? 本当にどうすっかなあ、こんな差し迫った状況で、こんな事になるなんて思いもしなかったべさ」
真希さんは頭を抱え始める。
いやあ、なんかごめんって、正直何が悪いのかわからないけど、こんなに悩んでる真希さんってのも初めて見るから、ちょっと謝ってしまえ、って思う僕なんだけど、
「つまり、結局のところが深階層では、程のいい仇役ってのが必要で、それが世界蛇だったんですね」
って葉山が言うと、
「そうなんだよなあ、みんな同じ様になってしまうと、深階層じゃあ、ほとんど敵らしい敵ってのが、モンスターだけでは支え切れなくなってしまって、そこそこ怖い相手としていい感じだったんだべさ」
って真希さんは呟く様に言ってから、
「流石、葉山ちゃんだべ、今からでもギルドに入んないかい?」
って普通に誘うも、
「いえ、ダメです、私、1秒でも多く真壁の側にいたいので、無理です」
って言って断ってた。
「え? じゃあ秋先輩も一緒にギルドに、いいじゃありませんか、ねえ」
って雪華さんが言うけど、
「こいつにギルドが務まる訳ないべ表も裏も一緒みたいな顔して、務まる様なら、こんな事になってないっしょ」
とか言われる。
僕の後ろでは麻生さんも笑ってるし、ちょっと居た堪れない。
そんな折、西木田くんが事務所に入ってきて、
「教祖様どうしますか? 教会に返しても、真壁が全部ぶち壊してるんなら、今日はギルドに泊めますか?」
って言ってきてた。サーヤさんの事だね。
そしたらさ、
「いいよ、外出しても、こいつらと一緒なら無茶なこともできないべさ」
と真希さんが言うんだけど、こいつらってどいつら?
「お前、ちょっとあの教祖様の面倒見ろよ、ってか最後まで責任取れ異造子の方はこっちで預かっておくからな」
って言われて、その後もクドクド説教されて、今日は解散になっ
た。
で、結局うちに連れて帰って来た訳ったんだけど、一応、うちには女の子いるし、だから、そっちに面倒見てもらうんだけど、それなら桃井くんもって事で、結構な大所帯になってしまったけど、今日は母さん本州のお父さんの所に行ってるからいないんだよなあ。
だから、みんなで作ったご飯をみんなで食べてた訳だけど、なんて言うか、いつもは和気藹々としたキッチンテーブルの空気が重い。
カチカチと食器の音だけが響いている。
まあ、確かに、被害者と加害者が一緒に食事をってのも無理があるよね。
まあ、それでも、一応は話を振ってみる僕だよ、
「や、やあ、今日の豚汁はスッキリしてて飲みやすいね」
よし、無難な事言えた、これで普通の流れで会話が始まるぞ、って思ってたら、
「豚肉なんて入ってないわよ、余り物の野菜が悪くなっちゃるから全部入れただけよ」
って葉山に言われた。
ああ、そうなんだ。なるほどね。
会話が完結してしまった上で、余計な事を言うんじゃなかった、なんか空気が余計に重い。
でも、こんな空気を裂いてくれたのは全くこの場を読まない妹だった。
「なあ、サーヤ、お前、一体何したかったんだ?」
そう、それ、それな。
意図していた事が違う結果になってしまって、どこをどう収拾していいのかわからなかったけど、そうなんだよ、そこなんだよ。
そんなサーヤさん、さっきからご飯に手をつけてない。
横にいる蒼さんとか心配そうに見てるけど、ジッと前を向いて、まるでおし黙るよに自分の意思などない様な、そんな表情をしてた。
「ギルドのわかりやすいと禁忌破って、ほとんど敵対する様な真似して、執拗に兄たちを追って、正直、お前はもっと頭のいい奴だと思ってたから、兄に敵対するなんてこのダンジョンでは自殺行為だろ? びっくりしたぞ」
と、野菜味噌汁を飲みながら喋るもんだから、口の横から溢れて行くから、服まで到達する前に、雪華さんに拭かれていた。
そうなんだよな、雪華さんも家にいるんだよ。だから茉薙も当然いる訳で、帰らないのかな? 僕としては人がいた方が話題というか問題が拡散してくれるから助かるから良いんだけど。
そんな事を言われてもサーヤさんは何も話さなかった。
ただ押し黙って、自分の前に置かれたご飯をまるで見つめる様に、他の人と視線を合わす事なくピクリとも動かないでいた。
綺麗な人だからさ、本当にお着物か彫刻かってくらいの硬度を見せていたよ。