第175話【話し合いから殲滅戦へ移行】
この世界蛇、ダンジョンだけでなく外にも処点とかもあるらしい、すごいよね、この秋の木葉の行動力と探査力。
全ての世界蛇の端末までを同時に攻めてる。漏らさない、零さない、逃さない。この辺結構重要。
それにしても思うのは、相変わらずというか今更だけど、秋の木葉の戦闘能力と統率力だよね。さすがは蒼さんだよ。
その蒼さんは、
「歯向かう敵に、いや自分自身にすら心の鬼を向けよ、仏の心を向けるのはお屋形様だけでいい! 殲滅せよ、お屋形様の野望の為に!!!」
って、ちょっとよくわからないことを言って、戦ってる秋の木葉の人たちに檄を飛ばしてた。で、そんな言葉を受け取っていた秋の木葉の人達、大いに盛り上がっていた。
で、
「桃井くん、ほら行くよ」
と僕の横にいた桃井くんに声をかけた。
すると、なんだろう、ここまでキョドッてる桃井くんて見たことないぞ。
階段の方に向かう時に、葉山と交戦しているキリカさんが、
「殿下! お待ちください」
って声をかけて来るんだけど僕の方も急いでるからさ、
「ごめんね、二人とも怪我しないように、すぐ終わるから」
って、うまい具合に葉山がキリカさんの足止めしている間に僕らはとっとと二階に上がって行った。
上がると長い廊下、この建物の最上階続く廊下にたどり着くまでに結構な部屋はあったけど、僕達が通り過ぎる扉は全て開放されていて、その部屋の前には秋の木葉の人たちがそれぞれ一人一人立ってて、僕が通り過ぎると、
「クリアーです」とか「制圧下にございます」
って、もうすでに敵とか倒してこの場所が彼らの制圧下である事を教えてくれる。
その度に、
「ありがとう」
と返す僕だよ、本当に優秀な人たちだよね、と言うか蒼さんの統率力って凄いよ、まるで絶対君主が率いてるエリート部隊な感じだね。
今回のこの計画を手伝ってくれるって、本当にありがたいよ。
もう既に敵とかいなくなってしまっている安全だけど、ちょっと入り組んだ作りになってる廊下を藍さんの案内でスイスイ進む僕ら。
「こちらです」
とその廊下の突き当たり部屋、藍さんが既に空いている扉を指して、その前に立つ秋の木葉の人が頷いて、それを合図にするように、「どうぞ」って言われる。
割と広い執務室みたいな部屋にサーヤさんはいた。
その部屋に入るなり、僕の後ろにいた桃井くんが、
「フアナ!」
って叫んでた。
透明化してた、サーヤさんの前に現れる、ハイエイシェントラミア。だから、あのラミアさん。まるで、いや完全にサーヤさんを守ってる。
そこには、僕の知ってるラミアさんが、僕の知らない顔をして僕を睨み付けてた。
低く、唸るような喉よりも奥から出しているような、威嚇の声。
そんなラミアさんを見て、思った。
僕は、彼女と出会ってからいつも友好的な彼女しか見た事なかったんだよね、それが、今は間違いなく僕に対してまごう事なく殺意と言うか敵意を剥き出ししている。
フアナさんの大きな体が隠す後ろの物を守る為に、僕に敵対してる。
敵に向ける眼差しが僕を射るようにらみつけて来る。
以前、浅階層の鏡海の間って言われる部屋で出会った優しいラミアさん。
かつて、自分を殺そうとした相手を突然現れた僕と言う名の傍若無人な存在から必死に守ってる。
未だ僕の後ろで心配そうな顔している桃井くんもだよ。
サーヤさんを含めたこの人達には僕の知らない人間関係というか絆見たいなものがあるようだね。
まあ、それはそれだけど、全滅はさせてしまうけど。
久しぶりに僕の体に叩きつけるような、あのモンスターからの遭遇感覚が来る。
本当に久しぶりだったからたじろいでしまう所だった。引かないけど。
こんなフアナさんを見ると、あの時、ほら浅階層で彼女を守って戦った日だよ。
あの時、麻生さんが、彼女を倒そうって躊躇無く思えたのって理解できる。
確かにすごいね。エルダーとかエイシェントとかって言われるモンスターの露わにした敵意って、多分、その場の支配に近いものがあるよ。
「やめないかフアナ! 秋様は本気だ、お前でも抵抗なんて無駄だ!」
とか桃井くんが叫んでる。嫌だな、僕、フアナさんとは戦わないよ。ちょっと勘違いしてるなあ、って思って、
「なんか誤解してない?」
思わず、桃井くんとフアナさんに言ってしまった。
「お、お屋形様………………………………」
って藍さん、とても辛そうに僕に話しかけて来る。
ああ、そうか、
「フアナさん、その敵意的な奴、オーラと言うか迫力を垂れ流しにするのやめて、危害を加えるつもりはないから」
とフアナさんに伝えると、フアナさんは僕と桃井くんを見て、ちょっとその険しい表情が解けた。
それで藍さんを押さえつけるというか叩きつけて来ていた迫力と言うか威圧みたいな物は解けたみたいで、普通になって、ホッとしてる藍さんだったよ。