第174話【まずは、話し合おうよ】
まあ、そう言った相手の怪我とかはともかく一人も逃す気ないからね。折角の奇襲して殲滅してる意味も無くなるしね。
そんな僕に向かって、
「あの、秋先輩?」
今度は雪華さんが話しかけて来る。
さっきまで、茉薙がやり過ぎない様に見て来るって言ってたけど、そっちはいいのかな?
「どうしたの?」
「一応、確認しておきたいんですけど、今回ギルドとしては話し合いの上この組織責任者であるサーヤさんを任意同行できればと思いど同行をお願いされてきた訳ですが?」
「うん、そうだね」
「でも、と、いうか今行われているこれは一体?」
て尋ねる雪華さんに、プロレスラーみたいな体格の信者が突っ込んでくるけど、雪華さんのエクスマギナに阻まれた上に、麻酔されて昏倒する様に倒れる。この間、雪華さん、全く襲って来た人なんて一瞥もしてないで、ほぼオートで完璧に倒して、僕との会話を続ける。
「殲滅戦になっちゃったね」
って僕が言うと、
「強制執行の許可とか出てないんです、これでは世界蛇どころか秋先輩まで懲罰の対象になってしまいます、ダンジョンの団体と団体が争う場合、あまりに戦力差が一方的だと、それなりの理由がいります」
まあ、そうだよね、この世界蛇の本部戦力なら、僕と葉山でも十分すぎるくらいだから、ちょっと過剰って言われると、そうかもしれない。つまり僕らがしてることってはジェノサイドだ。
不安げに僕を見てる雪華さんなんだけど、ちょっと気の毒に思って、
「いいよそんなの、雪華さんの目的さえ果たせれば僕なんてどーなっても、早くサーヤさん連れて帰ろう」
って言ったら、
「いや、そんな秋先輩、やめてください、こんなところで」
モジモジしながら、顔を赤らめて襲いかかって来る世界蛇の信者をエクスマギナでちぎっては投げしてる。すごいねフルオートみたい、ちゃんと麻酔処方して気持ちよく昏倒させてるよ。
そんな僕らの前に、僕たちの入ってきた扉から、現れたのは、普段かた青い顔をさらに青くして、
「殿下! これは一体どう言うことですか?」
と躍り出たのはあのキリカさんだった。
いつものフワッとした柔らかさが無くて、すごい刺々しい感じがする、まあ無理もないけど。
「今、温泉から帰ってみると………、一体なんの騒ぎなんですか?」
凄い、流石バンパイヤロード。ここ、襲撃している僕らに向けて来る殺気というか迫力は半端ない。
こうして考えると、キリカさんというバンパイヤロードがこの世界蛇に加わってるのって、この組織がモンスターから生まれた『異造子』に寄るところの組織って言えば納得も行くよね、以前、ゾンビ騒ぎの時にこのキリカさんに助けられた時には、なんでハイエイシェントモンスターがダンジョンウォーカーの組織にいるんだろう?って思ったもん。
そんな自分の組織を今まさに僕と言うダンジョンウォーカーに壊滅させられそうになってる事実を目の当たりにしてるキリカさんは正に怒り心頭なんだけど、それでも、きちんと話せばわかってくれるかなとは思うから、こんな乱戦な状態で話しかけようとすると、
「出たわね、こ青色ビッ●吸血鬼!」
ってキリカさんに迷わず、手加減も無く葉山が襲いかかって行く。
その葉山の一撃を、いつの間にか伸びていたブルーメタルな爪で弾いて、
「二号さん!」
って言うキリカさん。そのまま鍔迫り合いみたいな形になる。
「誰が二号さんよ!」
葉山の怒りを目の当たりにして正面から受け止めてしまう形になってしまったキリカさん、思わず、僕の方を見るんだけど、その時、たまたま僕の側にきていた蒼さんに気がついて、
「え? じゃあ3号さん?」
って言って、
「誰が3号よ!」
って、ナチュラルに火に油注いでる感じだった。
うお! マテリアルブレイドで連撃入れながらバルカぶっ放してる。怖え、葉山超怖え。でも、被弾してるキリカさん、
「痛いじゃないですか!」
ってその辺に流れ飛んでる魔弾が壁や柱にめり込んでるから、痛いで済んでるキリカさんも大概な感じだよ。
で、僕の前に駆け寄る蒼さん。最近急に現れるのはやめて、ちょっと距離を置いてから現れて駆け寄ってくる出現の仕方になったみたい。心臓にはいいよ、いきなりでないからドキっとしない。
「どうしたの、蒼さん?」
って尋ねると、
「はい、敵首領、最上階の一室に追い詰めてございます」
と報告に来てくれたみたい。
続けて、
「熾丸を中心とした秋の木葉による中階層の組織処点は今、完全に制圧下に収めたそうです、このまま、我等は大講堂を制圧しますので、お屋形様は一室にお向かいください」
と言って僕の横を離れると同時に、
「ご案内します」
入れ替わりで藍さんがこっち来てくれた。蒼さんはここと外で他の階層で戦ってる秋の木葉の人たちを含めて指揮陣頭に当たるみたいだ。
いつも強いなあ、って思てる蒼さん、まさに、鬼神の活躍ぶりだよ。