第171話【影響し影響されるダンジョン】
そこまで、ダンジョンに寄らなくてもいいとは思うけど、なんかその話を聞いているとき、春夏さんが困った顔してるからさ、僕も一緒にそのくらいはいいじゃんってそう思ったよ。
まあ、今はそっちはいいやって思って、今回の話の主題、だから運営ってことについて、
「でも、多分知ってしまった以上は断れないよね、これ?」
「だべ」
「僕はいいけど、他に人を巻き込んでしまうって考えると僕の一存では決めら無いよね」
って一応は僕の身の回りで僕を守るように常に動いてくれる蒼さんたち、秋の木葉の人たちだって巻き込むことになる。
「蒼さんはいいの?」
って尋ねると、
「是非もありません」
即答だった。しかも結構鼻息も荒く、蒼さんにしては珍しく興奮してるのがわかる。
だって、ほら、蒼さんの所って、まだここの最後の扉に到達してない人もいるからさ、そんな人も巻き込むことになるのはどうだろう?って考えてしまったんっだよ。
蒼さんによると、その辺は割り切ってというか切り離して運用して行くらしい。
そして、問題の桃井くんの話を聞くこといしたんだ。
「僕ら、モンスターから生まれた人間は、必ず何処かに、かつて両親がモンスターであった証みたいな物や、特徴を備えるのですが、僕とサーヤに限ってはその特徴がありませんでした」
つまりは、さっき雪華さんが説明したように、生まれはともかくとしてその姿や中身は完全な人間って事なんだね。
というか、ちょっとここで疑問が出た、
「あの、ちょっといい?」
って聞こうとしたら、
「モンスターって結婚するものなの?」
って葉山に先に聞かれてしまった。
うん、そう、僕もそれは思った。
すると、
「これは、人間、というかダンジョンウォーカーからの僕ら側への影響だと思われます」
本来、モンスターに男女の特徴はあっても、それに伴う性別っていう概念はなかったらしい。
ザックリと聞いた話では、スライム以上ゴブリン程度の知能しか持たないモンスターは、そういう概念には目覚めないんだって、せいぜい生存欲求に伴う『食欲』とそれを独占しようとする『支配欲』くらいのもので、単純な社会すらを形成するには至らないそうだ。
何より、彼らはすでに完成されたモンスターなので、それ以上の進化も進歩もしなくて、それでもモンスター同士の結婚というかが当たり前になって普通に人間ぽくなっていたけど、それでも基本、地上から来た人間、つまりダンジョンウォーカーに対してはご法度というか、手を出すのは控えていて、一番最初に人に対して興味を持ち始めたのが三柱神の一柱だったらしい。
「どこの誰かは言わなけどな」
「もうそれで言ってる様なもんじゃねーかよ」
って真希さんは言ってるけど、その言葉に続いて今まで地蔵の様に黙ってた角田さんが言ってた。
1柱のゼクト様は今一緒だし、ってみると、「俺じゃ無いっすよ」
って言ってるし、もう一柱は最近までの事情知ってるし、最初に会った時の妹は人に興味があるっていうか突っけんどんな感じだったし、こうなると考えてはいけないけど、あの人しかいないよね、いやあの神様か、いつも二人きりでいる、ついさっきハイビームかましてた神様だよね。
ちょっと考えてみたけど、その話は今はいいや。
「本来、男子も女子も、このダンジョンではそういう青春の青い衝動ってのは抑えられるはずなんだがな、この前、下心全開であのおっぱいロードに行った奴らもいるしな」
さて、なんの話なのか?
しらばっくれるけど、なんだろう、ここにいる女子全員の視線が痛い。あ、春夏さんは相変わらずニコニコしてるよ。
え? とういうかなんで知ってるの?
「もう無理です、多分、みんな知ってます」
って雪華さんが居た堪れないって顔していうんだけど、
「なんで?」
って聞くと、
「あの時のお前らの様子はすでに前編後編のブルーレイディスク二枚組で、真希さん雪華による音声ガイド付きで売られてるんだ、制作はお前のファンクラブで、販売はHDCU(北海道ダンジョン商取引組合)でノンフィクションの認可はギルドだ ちなみに、春夏と冴木さん札雷館の2名の協力によるディレクターズカット版の発売予約は既に第一募集を終了して、今後第二期を思案中だそうだ、近くのコンビニ、特にセイコマートでは予約特典がつくらしい」
と、今までどこにいたんだろ、の薫子さんが教えてくれた。
「なんで?」
もうこの言葉しか出てこない。
と言うかあの熱い男の子の戦いを一体どこで撮影していたんだろう?
「なお、売り上げの全てはダンジョンの維持運営に使われるべ、温泉行ったべ?」
って言われた。