第167話【北海道ダンジョンで生まれた子供達】
普通に見ると襲われてるようにしか見えないんだけど、何だろう、その骸骨さんの善意のみたいのが前面に出てて、どうも危機感と言うか戦う事に気持ちが向けれない。
そんな場所に、どこからともなくワラワラとモンスターが集まって来て、
「何、葉山お嬢ちゃんきたのかい?」
「お、中の坊主もまたきたのか?」
「良かった、元気になって」
「みんな心配してたんだ」
「顔色もいいな」
「以前の、俺たちをザクザク殺してた頃よりも、元気そうだ」
ワイのワイの言いながら、真っ青になってる葉山を取り囲んで話しかけてた。
見た目はダンジョンウォーカーがモンスターに取り囲まれている様子なんだけど、どうにも親戚の群れに飛び込んだ子供みたいな感じで、しかも子供にしてみると『知らない親戚ばかりだ』状態で、なんとも、どんな返事してみればいいのかわからないと、葉山も敵では無いし、危害も加えて来そうも無いのはわかってるけど、正直どう対応していいのか測りかねてる感じ。
あれ? 今更だけどモンスターなのに普通に話してる?。
てっきり、ティアマトさんとかリリスさんくらいの相当上位なモンスターとかしか話さ無いと思ってたから、その辺はちょっとびっくりしてる、ってか意思の疎通出来てるじゃん。
とか思ってるところに、ガシャガシャと鎧の音を鳴らしながら、
「おお、やっと来たなアッキー」
といきなり肩を抱かれる。物凄く親しげに肩を組まれる。
横を見ると、そこには兜を被った犬の顔が、今にも僕の顔を舐め回す勢いで舌を出してハアハア言ってる。思はず「ヒィ!」とか言っちゃったよ。
「何だよ、俺だよ、ほれ、あのオッパイロードで膾切りにしてくれたじゃねーか」
と言われる。
ああ、あの時のキングコボルトさんだよ。
他にも温泉の健康骨スケルトンさんも、なんか掠れる様な声で、
「おおーい! アッキー来たぞ!!」
って大きな声を出すと、瞬く間にそこにモンスターが集まって来る。
「でっかくなったなアッキー ほんと久しぶり」
とか言われる。
あっという間に僕らは黒山の人だかりならぬモンスターだかりに囲まれてワイワイと言った状態になる。
いや、もうね、全く悪意とか敵対心とか悪気すらも無いんだよ。
それにしたって、基本モンスターってのは敵位置のはずなんだけど、何だろう、僕らの持って行き用の無い気持ちとは裏腹に、全く敵意も害意もないみたい。
「でも、あれだな、おまえ、本当に今日花のスタイルそのままだな、せっかくもらったスキルをもっと活用した方がいいぞ」
とか、コマンドコボルトの一番偉い人っぽい方に言われる。
「ほらほら、お前ら、解散しろ、今は桃井の事でここまで来たんだべさ、ちょっと話に入ってくんな!」
思いも掛けないモンスターな人達の攻撃と言うか攻勢に、自分で思っている以上にパニクってる僕なんだけど、これって一体どう言う事何だろうか?
モンスターは普通に喋って、しかもキリカさんやフアナさんやリリスさんはともかく、普通にいつもならダンジョンで襲いかかって来るのがデフォなモンスターまで何やら親しげに接して来て、どうなってるの?
「ああ言った、ある程度の演技が必要なモンスターはゴブリン以上はみんな奴らが正体さ」
真希さんの言葉に、じゃあ、普通に斬って倒していたのはみんなこんな風に気さくな連中だったって事に驚く僕だったよ。
そんな僕の意識を汲んでか汲まずにいてか、
「だからアッキー、ここでモンスターをやっつけてしまっただなんて考えなくていいんだよ、もとよりこのダンジョンに『死』なんていうものはないんだ」
と言ってくれた。
うん、そうだね。でも、なんかよかったなあ、って思う僕がいるんだ。
だって、ほら僕ダンジョン好きだから、そこに敵がいるってのに僕自身以前から意識はしてないけど釈然とはしてなかったのかもしれない。
「ともかく、建物の中へ、ここに新しい資格者が来るのは本当に久しぶりなんです、しかもそれが秋様であるなら尚更です」
と言われて僕は桃井くんに案内されて、札幌の市街地である筈のここ、大通4丁目付近は、概ねオフィス街であるのに、どうも住居みたいな作りになっていて、そんな建物の一室に案内された。
椅子とテーブルのある室内に案内されて、僕らは言われるがまま着席した。
何だろう、いつもギルドに案内されて普通に着席するみたいに、何となく真希さんと雪華さんを正面に、僕等が座って、僕の隣には桃井くんがいる。
「さて、何から説明すればいいのか………」
と言って、桃井くんは真希さんを見る。
すると、
「ここにたどり着いた者はみんなこの事情を知るべ、つまり、ここは、このダンジョンはみんなにとってそう言う施設なんだよ」
と真希さんが言った。