第166話【モンスターたる存在】
僕も一応は考える。
モンスターの現れる場所かあ……
「うーん、ダンジョンの至るところから現れてる感じかな」
適当の答えちゃった。
「それも正解です、でも、大部分のモンスター、特に規則を守れる知能を持ったモンスターのほとんどは、ここからダンジョンの各地に転送されます、それぞれの待機場所もあるので、後でご紹介しますね」
僕の言ったことって精々半分くらい正解ってところかな。
「じゃあ、リリスさんとかフアナさんとか、キリカさんもここに?」
って尋ねると、
「あの青色吸血鬼ね」
って葉山が忌々しいと言わんばかりに毒付く。なんで葉山怒ってる?
「彼女達は居城がありますから、今はここにはいません、それと、彼女たちは、また異なる存在です、こちら産ではないというか、その辺はまた説明しますね」
と桃井くんは答えてくれる。そっか、リリスさんたちはまた違う存在なんだな、なんて軽い理解をして、葉山のプンスカする顔と、一体葉山が何に対して腹を立てているのか皆目見当がつかない僕と言った顔を見比べて、桃井くん、ちょっと笑った。
ちょっと明るくなってきてる。よかった。
そんな話をしつつも概ね取り巻く全景をスイミングアイな僕なんだけど、ここで気がついたんだけど、その札幌の市街地いあるビルからかなりの数の視線とか感じるから、多分僕らは注目されている。みんなこっち見てる。
まあミノタウロスが車路を走ってるくらいだから、きっと姿を現さないだけで、モンスターなみなさんはきっと他にもいるんだろうさ。
それに今、小さいけどドラゴンが走り去って行った。こっちに見向きもしてないから敵対って言う気持ちも無いんだろうけど、なんかとても変な感じだよ。
そんな僕に、横にいた雪華さんは、にっこりと笑って、
「そして、ようこそ秋先輩、『運営側』へ」
と言った。
「北海道ダンジョンはさ、アッキー、大きく分けると、運営側と参加側に別れるべ」
そう言ったのはいつの間にかその雪華さんのさらに背後にいた真希さんだった。
「うお! 真希さんいつの間に!」
本当にお化けみたいにスッと出て来たからビックリした。
「おはよう、アッキー、ようこそ、運営側へ、その内来るとは思ってたべ」
と言ってから、自分の後ろを振り返って、
「まあ、お前もそのうちわかると思べ、運営側でもそれなりの仕事をしてる人間にとってはこのダンジョンにはショートカットできる場所も多くあるんだ」
とお得情報みいたいなことを言う。
何だろう、その運営側には専用に使える近道みたいな物があるって事かな?
で、僕からの質問で、
「じゃあ、真希さんと雪華さんは運営側って事?」
「はい、私の場合はごく最近ですこの全容を知ったのは、秋先輩と一緒も同然ですよ」
そうなんだ、って思ってると、急に葉山の叫び声。本気で「きゃあ!」って言ってた。
どうしたんだろって見ると、黒い人?
どう説明したらいいんだろう?
本当に黒い人。
と言うか影というか、人の形はしているんだけど、正体不明な感じで、まるで人って形で黒く塗りつぶしたみたいな、そんな物がワラワラと集まって来て、いつの間にか僕らを取り囲んでいた。
そして、そんな中の一人というか一体が、すぐ隣、ものすごい近い距離で葉山を覗き込んでる。
身長差はないんだけど、ヌーっと首だけが長くなって、葉山を見えているんだけど、驚くほど敵意というか害意が無い。
気配そのものがないから、何も準備できないし、対応もできない。
これだけ正体不明の存在に囲まれていて尚、僕らは全く危機感を持ってないんだ。
「ああ、ごめん、怖かったね」
と言ってその覗き込んでいた黒い影みたいな人、一体どこの口で喋ってるのかもわからないんだけど、急に形が整い出して、どこから取出したのか、薄汚れたローブみたいな服を羽織って、その黒い顔だ骸骨みたいな様相になる。
ああ、これ、確かリッチだっけ、あのゾンビとかの上位のモンスター。
それが一応の形を整えて、
「あ、こっちも怖いかな? ごめんね、さっきまで骨してたから」
って葉山に話しかけてた。
話かけられてる葉山の方は、もう何が何だかって感じて、僕の方に向く目が助けを求めてるんだけど、ごめん、ちょっと様子見させて。
だって、骸骨さんの、本来あるはずの無い眼底部にニコニコな目
の形が浮かんでいるから、その表情はわかりやすい。
でも、このローブな骸骨、見た目貧相でボロいけど、相当なモンスターってのはわかる。多分エルダーの上だと思う。
その骸骨は、その姿に似合うおどろおどろしい声で、
「良かったね、元気になって」
と葉山に気安い感じで声をかけてた。本当に近所のおじさんばりに話しかけてる。