第165話【地底都市 深札幌】
ダンジョンの最下層に潜っているって意識の中で、文字通り最後の扉を開いたら忽然と姿を現した札幌市街地の光景。
人の視線で、普通に街を見上げてる世界は、間違いなくさっき僕がこのダンジョンに入って時の大通4丁目ゲート付近の光景そのものだった。
振り向いたら、ここって、位置的に本当に4丁目ゲートの位置だ。
そこに小さい扉を開いて僕らはここに現れたって形になるんだな。
でも同時に、出てきた建物も4丁目ゲートに比べたら小さいし、違うな、ここは札幌の大通じゃあないな、って直ぐに気がついた。
だって、車ないし、人も歩いてないんだ。
いや人影らしき姿は見えるけど、どう考えても人って感じなない。
サイズもおかしいし、どう見てもモンスターなんだよね普通に歩いてるの。
だから、ここは違う、僕らの住んでつ北海道札幌市じゃないって事には直ぐに気がつけた。でも、どっかでこんな光景見たことあるようなないような、どうも心に引っかかる。
大通公園の多分、4丁目を模した付近は、スケールも雰囲気もそのままだけど、とても静かで、街の喧騒も無いし、感覚的に来るのは閉塞感。
だからここはまだダンジョンの一部って感じが強い。
見た目はそっくりだけど、どこか映画のセットみたいで、とても静かで、まるで人というより街が死んでいると言うか生きてないみたいな、そんな光景。
普通に街の音って言ったら、まず車の走る音とか、この辺なら、人々の話し声とかによる喧騒、で、ビルの息遣い、これは建物とか地下鉄とかの排気音だったり、何らかの音楽とか、信号もメロディーを鳴らす奴とかあるよね。
でもそう言うのが全くない。
シーンって静けさを表す為にそんな文字が欲しくなってしまう、不自然な沈黙。
でも信号とかきちんと機能してるから、まるで僕ら以外誰もいなくなってしまった札幌の街の姿をした、何処か別世界と言う感じの雰囲気だった。
僕はその辺を適当に歩き回ろうとして、全く車の無い車道に足を踏み出したら、
「秋様、危ないです」
腕を引っ張られて驚いた。
言って振り向いたら、桃井くんだいた。
「なんだ、桃井くんか」
ってちょとだけ知ってる顔を見て安心した。
「一応、時速10以上の速度を持って進む物達が、車道を進む決まりになってますから、この信号の働きは地上の物と変わらないですから守ってください」
って言われる。
そう言われて、車道を見ると、ビルの陰からミノタウロスが現れて、軽快に車道を走って行って、次の曲がり角に消えて行く。全力疾走では無い軽く流すペースだけど、体が大きいから、それに足のスライドも広いからそれなりの速度だと思う。普通にぶつかったら危ないね。なるほどなるほど。
「早速、来ていただいたんですね、流石秋様です」
と言う桃くんは笑顔なんだけど、やっぱりちょっと翳りがある。やっぱり心配事は解消されてないのが見て取れる。
それでも、
「桃井くん、ここは?」
って一先ず聞て見る。
そう、一体、ここは何の場所なんだろう? 一応、ザッと見渡す。
で、わかった事だけど、ここ、間違いなくダンジョンの中だと思う。だって、天井がある。遠くの方にテレビ塔見えるけど、その先というか天辺が高さの上限みたいで、一応は空みたいに見えるけど、間違いなく天井な感じだよ。
「あ!」
って思わず声出してしまったけど、そうだ、この空を模した天井には見覚えがある、一緒に視界に入る市街地の様子も。
『厭世の奈落』だったけ? あの中階層の結構中途半端なところにあった、リリスさんとか、荒ぶっていた時代の葉山と戦っていた、蒼さんの協力で事なきを得た場所で、シンメトリーさんがとっ捕まってた、元はと言えば妹が案内してくれた場所。
あの時の、中空に浮かんだ空間の綻びから垣間見た風景だよ。
間違いなくあの時の違和感と合致する。
そんな僕の思考を読んだのか、
「やめてよ、昔の話でしょ?」
とか葉山が言ってるけど、いや、つい最近だよ。
そっか、あの時見たのはこの場所の光景だったんだ。
そんな、さして古くもない過去の情報い思いを馳せていた僕に、先程の問には桃井くんが答えてくれた。
「ここは『運営側』の居住地です、つまり僕らみたいなモンスターの街です、世界といってもいい」
と言ってから、
「皆さんは『深札幌』と呼んでいます」
「え? 新札幌?」
「はい、『深い』って字の方の深で、深札幌です」
ああ、なるほど、
「秋様は、モンスターはどこから出てくると思っていました?」
と突然のクエスチョンが桃井くんから飛び出した。