第164話【扉の向こうの景色】
あ、今、そんな事考えてる場合じゃなかった。
「あ、アモンさん、僕、最後の扉に行きたいんですけど」
と言ったら、
「ああ、そうですか、では」
って言ってる時に、
「いいから自転車降りろって言ってるべさ! このクソ野郎!」
「自転車を蹴るな!、このクソ女!」
「前にも言ったべ? お前、わかったって言ってたべさ???!!!!」
「ああ、もううるせーな!」
「では狂王………………………」
「おい、アモン逃げるぞ! 前を照らせ」
「逃す訳ないべさ、今日という今日はガッツリ反省してもらうべさ!」
「最後の扉の全室にはみなさんの資格を問う部屋があるでしょう」
「逃す訳ないべさ、ゲートから応戦を呼ぶべ、雪華ー!! 雪華ー!!! 聞こえてるべか!」
「なんで今日に限って本気なんだよ、クソ真希!、マー坊、ちょっとお前こっちに味方しろ、ギルドが来る」
「最後のジョージは手強いですよ」
「薫子、こっち手伝うべさ、ほれ、静流もこっち来るべさ、アッキー、まさかあいつの仲間になるんじゃないべね!」
「ええ、私ですか?」
「なんでこんな風になってるのよ、真壁、収集つけて」
「では、ここに承認します」
「アモン、なんか言ったか?」
「お前相手じゃないべさ、お前の相手は私だべさ!」
「ああ、もうしつけーな! アモン、アモン、逃げるぞ、ちょっと前みろ」
「真壁秋、その仲間を『最勇者』と認め扉の通過を認めます」
その瞬間だった。ついに3柱の神さ様に認められたからだろうか、急に僕は光に包まれたんだ。
この眩しいばかりの神々しさ、まるで光の中にいるようだと感じたんだ。
って思ったら、アモンさんの目がハイビームに切り替わっただけだった。
うん、そうだよね、ここのダンジョン、そう言うイベントへの演出とかないもんね、ガチにリアルな感じだもんね、いつも。
とにもかくにも、これで、最後の扉への条件というか要件は果たせたみたいで、仲良く啀み合う真希さんとクソ野郎さんを置いて、一回ギルドに帰って、再びキリカさんに転送用のゲートの移動地点を変えてもらって、一気にその前室まで行くことにしたんだ。
すると、雪華さんが待ってて、
「秋先輩、ご一緒します」
って言ってついて来てくれた。
真希さんいないけどいいの? って聞いたら、こっちのゲートも開きっぱなしにしておくから、空間的に繋がってるからいいのだそうだ。
空間をつなげるゲートを二つも作るなんて大変じゃないかな? って心配したけど、シリカさん、足元には、例の空になった夕張メロンピュアゼリーの容器が数個、その胸元にカップみたいな紙容器持ってボリボリやってたから、あれ、色と香りでわかるけどストロベリーチョコだね、フリーズドライしたイチゴを丸々一個コーティングした六花亭の大人気商品、ちなみに僕はもう一個のストロベリーホワイトチョコの方が好きかな。
すでにシリカさんに対する報酬の譲渡と同時にエネルギーの補充は済んでるみたい。
なるほどね、この前の、温泉の時の反省点を生かした処置なんだね。シリカさんさえ空間を繋いだままゲートを維持できるなら、実際にその場所がどれだけ離れていようとそれた同一空間と言う同じだもできるもんね。さすが雪華さん頭いいなあ。
そんな感心する僕に、雪華さん、
「私も最近です、本当に驚きました、だから私がご案内します」
って緊張するように言ってた。
きっと中には僕もおどろしてしまうくらいの物があるってことだね、近々だとティアマトさんの大きさとか、温泉とかだけど、きっと雪華さんが僕を心配してくれてるから、それ以上って事が予想できる。
すでに転移ゲートは、その資格を問われる前室に出現していて、そのまま、僕らはなんの問題もなくその部屋を通過、そして、その後に深階層のジョージとの対戦。
もちろんなんの問題も無く、難なく倒した。今回はパーティー戦だったから、僕の出る幕なくて、ほとんど葉山と薫子さんで倒してしまった。
で、その室内の一番奥にこのダンジョンの最深部、最後の場所。
最後の扉に僕らはたどり着いた。
小さな扉だよ。
僕はてっきり大きな観音開きみたいな大きな例えて言うならお城の扉みたいな物を想像してたんだけど、その木で作られている扉はどちらかと言うと見窄らしくて、大きさも普通の家についてる玄関のドアと対して変わらなかった。
あまりに意外すぎて、ある意味驚いたかも。
「秋先輩、出ましょう」
と雪華さんは言うんだよ。
ん? って思ったんだ。
だって、扉だから、僕らは開けて入るって、そう思うじゃん。
でも、その雪華さんの言ってる意味がすぐにわかったんだ。
その扉を開けて、僕らが見た物って、街だったんだ。
まるで、4丁目ゲートから出て、札幌の市街地に帰って来たみたいな錯覚。
いや、札幌の大通そのものの風景。
僕らは深階層の最深部から最後の扉を経て、札幌の街にたどり着いたんだ。