第163話【ダンジョン禁止事項】
最後の扉の到達資格条件。
最後になったクソ野郎さんたちだったんだけど、シリカさんが見つけてそのまま追跡するも、その動くが、なんか変って話だった。
歩いているのには早すぎるし、飛んでいるのには遅すぎるらしい。
真希さんはそのマップをじっと見つめて、「まさか! あいつら!」ってなんか激昂してて、速攻でシリカさんにそのままゲートを開いてもらって一緒にと言うかついでに急行すると、
「お、なんだマー坊じゃねーか」
って爽やかな笑顔で、普通に言われた。
で、クソ野郎さん、普通に自転車乗ってた。
「これは狂王、温泉以来ですね」
とか言われる。つまり、ついこの間だね。
でも、なんか、クソ野郎さんじゃなくて、アモンさんについては反応に困ってしまう。
いやだって………………………。
そして、真希さんの怒鳴り声が、僕のすぐ横からまさに耳元で放たれた。
びっくりしたよ。急に大きな声出すんだもん。
「お前、ダンジョンで自転車はダメだってあれほど言っておいだだろ!」
そうなんだよね、ここ、一応は中階層男だけど、その長い通路の道半ばのところで、クソ野郎さん、普通にママチャリってカゴテライズされる種類の自転車に颯爽とまたがってる。で、その相棒のアモンさんは、後ろではなく前に乗ってる。
このダンジョン、特に自転車はダメって事も誰も言ってないし、書いても無いけど、これってルールや法なんかの記載では無くて、普通に常識に考えるならダメだよね。
言ってみれば、札幌地下街とか、学校の校舎の中で自転車に乗るなんて誰も考えないし思いつかない。
しかも二人乗りだし。
その二人乗りの乗り方もおかしいし。
アモンさん、自転車の前のカゴにお尻をスポって入れて、お尻ちっちゃいんだなって格好で、いたって普通に僕の顔を見つめてる。
すると、今度は葉山が、燻げな顔して、
「言いにくいことですが、アモン様」
って言って、そうだね、言ってやれ、って思ってたら、
「自転車の二人乗りは禁止ですよ」
って怒ってた。メってしてた。
まあ、そうだよね、二人乗りってのはね、特にハンドルの前に乗るのは進行の妨げになりかねないし、コントロールも効かなくなりそうだよね、極めて危険な行為だよ、良い子から良い大人のみんなはこんな危険な乗り方したらダメだよ。
つまりは葉山の指摘はそう言う事なんだけど、でも、そこじゃ無いと思うんだ。
するとアモンさん
「確かに聖王の忠告はもっともです、しかし、この状況下に於いては寧ろ仕方ないのです」
さて、どんな訳を言い出すんだろ、って待ってみると、なんとアモンさんの目が光ったよ。自動車のハイビーム並みに光輝いてたよ。
「つまりはこういうことなのです」
とアモンさん、文字通り目を輝かせて言った。
「あ、そうか、無灯火になってしまうってことですね」
と、感も良く葉山が言う。
「そうです、さすが聖王、賢明ですね、隣の賢王よりも早い回答、その通りです」
不意をつかれ、なんと無く葉山の隣にいただけの、そんな事も考えてなかった風な薫子さん、ちょっと恥ずかしそうだ。
で、光る目のまま、今度は僕を見つめて、言うんだけど、ちょっと眩しいから止めてこっち見ないで。
「そして、狂王、気がつきませんか?」
ってハイビームを当てながら僕への質問。思わず目をそらすと、アモンさん「あ、失礼」と言ってロービームに切り替えてくれた。すごい視線をそのままに光の角度変えれるんだ。
で、一体何を気がついたと言うか気がついていないと言うかの話なんだけど、
「いや、すいません、さっぱりです」
って早急に白旗を振ると、アモンさん、
「そうですね、つまり、二人乗りとは人間が2名で一つの自転車に乗る事が条件なのです」
とか言い出す。
「では、ここで質問です、もしも犬や猫をカゴに乗せている人間が運転する自転車を二人乗りと言うのでしょうか?」
ああ、そうか、つまりはアモンさんは神様だから、ここでは二人乗りには該当しないって事を言いたいのかな? この例で言うとアモンさんの扱いって、犬猫と同じになってしまうけど、その辺はいいのかな? それともお札か御神体を自転車のカゴに入れてる程なのかな? よくわからないけど。