第161話【扉の向こう側】
いよいよ最後の扉へ、 ここで、みんな行く気になってる様子をみてると、なんとなく他人事だった最終目的地到達への具体的な気持ちに、ちょっと感慨深い物と同時にある疑問というか、きっと誰もが思うであろう一つ疑惑っていうか、それが今日の桃井くんの言葉でわかったというか、ああ、やっぱり、ってのはあるんだよ。
確かにその通りなんだよな。
以前からちょっとは引っかかっていたんだよ。
だって、このダンジョンの最終到達地点である場所の名前が、『最後の扉』って。
つまりさ、『扉』なんだよ。
扉。
だから、それは開くんだよ。
ギイって、多分、普通に開くんだよ。
何が言いたいかって言うと、最終到達地点にはその続きがあるって事で、扉な以上、内開きか外開きかはともかく、中には入れるって事なんだ。
普通はさ、ダンジョンの最深部にはそのダンジョンの支配者とか、所謂、魔王的な人がいる筈で、つまりはその部屋、言うならば魔王ルームというかフロアに行くのは目的になるんだけど、この北海道ダンジョンに限っては、それがないんだよね。
その最後の最終到達地点にたどり着いた人の称号も『最後の扉に触れた者』だしね。
これって、この扉の奥にある物を意図的に隠してるっていうか、あまり触れない様にしてるって事なのかな?
まあ、疑問というか疑惑は尽きないんだけど、明日行くからいいか。
一応はダンジョンを楽しみ尽くしたい僕はいたけど、桃井くんが困ってるなら、ここは進むべきだよね。
つまり、僕の北海道ダンジョンにおけるある種の最終目標が、桃井くんの事で単なる通過点になったっという事だ。いや別に仕方ないけど。特には残念とも思ってないけど、何行くつもりだったから、それが思ってたより早くと言うか思いががけないところから来たいう感じだ。
だって、最後の扉に触れた人たちだって、目標達成した後にダンジョン辞めてしまったりしてないし、その後も引き続き入ってたわけだし、きっと何も変わらないと思うんだ。
もしも、何かが変わってしまったとしても、僕的には今は桃井くんの方がウエイト高いから、その辺に関しての後悔は無いと思う。
それに、その先がある事を僕は知らなかったから。
第一、この最後の扉に触れた人って、僕の周りには結構な数がいるはずなんだけど、その人達は頑なにその事実を伏せていた。と言うかその情報は公開されていない。
というか、全く触れなかった。真希さんとか真希さんとか真希さんとかだよ。
ほんと、余計な事は何も言わないもんなあ、というか余計なことしか言わないもんなあ真希さん。
もっとも、真希さんの他にもD &Dの人達とかは行ってるっぽいし、深階層の常連の一部はみんな行ってる感じはしてた。
あ、そういえば母さんもそうかもね。
その人達にとっては、自分の目で見てみろって事なんだろうなあ、きっと。
じゃあ、ともかくその『最後の扉』に向かうというか開けれる条件を満たさなとと思ってその方法を朝一ギルドに行って真希さんにでも聞こうかって、そんな話をすると、
「明日学校だよ、休みじゃないよ、宿題やったでしょ?」
っと、葉山にいらないお叱りを受ける。
やっぱり、最終到達地点へ向かうって意識したら、僕もそれなりに興奮してたみたいだ。 すっかり、学校の事を忘れてしまったよ。
北海道ダンジョンの場合は、世界の平和を取り戻すとか、そう言う重いのはないから、しかも僕みたいに地元で極々ダンジョンが日常で当たり前な生活になってるから、何も身構える事もなく学校が終わってから行こうって話になって、本日は解散というか自分の部屋に行った。
いや、葉山の部屋はあっちだからね。こっち僕の部屋しかないから。
そして、いよいよ僕もダンジョンの最深部に行くのかあ、と、最後の扉に触れるのかあ、と思うと中々寝付けないかもって思ったけど、いつものようにいつの間にか蒼さんが天井に張り付いた状態で眠りこけて、寝ぼけて僕のベッドに入って来るのを全く気がつかなかったから、割と早い段階でグッスリ眠れた見たい。
次の日、学校で春夏さんに、今日は最後の扉に向かうよって話たら、春夏さんにしては珍しくちょっと驚いた顔してて、「秋くんが行くなら」って事で、そのままダンジョンに行った僕はら、入り口付近で待っていた角田さんと合流してまずギルドに立ち寄った。
ほら、僕、最後の扉への到達条件って知らないから、知ってる人に尋ねることにしたんだ。
だから真希さんに、
「やり方教えてください」
って頼んだら、
ちょっと呆れた顔して逆に尋ねられる。僕じゃなくて角田さんに。
「え? 教えてないべか?」
「いや、まだ何も言われてなかったわ、俺も初耳だったわ」
と角田さんも驚いてから、
「秋さん、マジで今日行かれれるんで?」
と尋ねられる始末だ。