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第153【北海道ダンジョン商取引組合営業活動】

 ダンジョンの隠れ湯に行ってから、ちょっと慌ただしかった。


 あの後HDCU(北海道ダンジョン商取引組合)の瑠璃さんと桃さんは、そこの管理責任者である、つまりはエリアボスであるキリカさんに交渉を持ちかけていた。


 それが、彼女達の本来の目的でもあったんんだよね。


 内容は、このダンジョンの湯をもっと多くのダンジョンウォーカーに解放できないか?と言うことだった。


 前からこう行った温泉施設の必要性は求められていて、何より深階層には家に帰らずダンジョンに潜りっぱなしの人もいるから、宿泊施設は提供できるものの、大量にお湯の必要な『お風呂』的な物の必要性は以前から言われていたらしくて、この秘湯も一度は考えられたんだけど、そのエリアに出没する敵の強さと数、そしてラスボであるバンパイヤロード(キリカさんの事ね)の存在が一般だけどそれなりの強力なダンジョンウォーカーすらも遠ざけて他らしいんだ。


 それに、一度倒しても彼女達、アンデットなので一定の時間で勝手に蘇って来てしまうので、シャンプーやリンスの入った湯桶を持って気軽に通うって訳にも行かなかったらしい。普通に考えると命懸けで入浴に行く人っていないもんね。当たり前だよね。


 で、そこで瑠璃さん達が交渉しに行ったって訳。


 でもキリカさんの返事はNOで、当たり前で、自分の守ってるエリアをダンジョンウォーカーに解放するわけなくて、どう考えても、そこに温泉が湧いてしまっている事こそがどちらかと言う偶然というか、ついでな訳で、その偶発的要因を主観にエリアをダンジョンウォーカーに解放することは基本的に難しいと言う話らしい。


 まあ、そりゃあ、当たり前だよね。


 そこで、第二次案が浮上して、この温泉をどこか違う場所に引く事は出来ないかって、話になったんだ。桃さんが断られる事を前提で持って来た案らしい。


 その件については、お湯は無尽蔵に湧いているし、基本掛け流しな感じだから、普通に商業施設で言うところの温泉規模の量で引かれるなら特に問題も無いとキリカさんは言ってた。


 問題はないんだけど、方法もないのも事実で、一体どうやって温泉をダンジョンウォーカーの都合のいい場所まで引いて行くか話の時に、春夏さんが、


 「ティアマト母さんを外に出した方法って使えないかな、秋くん」


 って言い出して、ああ! あのトンネルね、って思い出して、早速此花さん達に相談しようって思って、そう言えばあの人達、普段どこにいるんだろう?って、漠然と、僕は此花さん達の行方とか知らない事を知って、一瞬このナイスなアイディアも断ち消えそうになるも、僕らのそんな話し合いを聞いていたのか、


 「OK、大丈夫、できるわよ!」


 って椿さんの声が、僕らの集まる岩盤付近からもう少し奥で聞こえたから、いつの間にか温泉に来ていたみたい。


 姉妹揃って、これまたいつの間にかタングロンをゴクゴクやっていた。タングロンだよ、知らない? 昆布エキスをリンゴ果汁と天然酵素でのみやすくした健康にも天然酵素保健飲料だよ。


 ちなみにどこでもは売られてないから、ここにある数も少ない。


 え? なんで? と言うかいつの間に? って感じだったんだけど、彼女達にしてみれば僕らのやる事なんて全てお見通しで、どんな方法か知らなけど温泉に行くって情報をリークした時点で、これもまたどんな方法かわからないけどついて来たらしい。


 ちなみにこの姉妹も湯の中に沈めた体は肌色だよ。水着なんて持ってるはずもないから、ここお風呂だからこっちが当たり前なんだけど、この子達も僕の前では恥じらってはくれない。


 どうやって? とかはもういいや、ともかくコレなら話が早いよ。


 「その温泉に私たちD &Wも入れるんでしょうね? 高いのはイヤよ、あるなら毎日通いたいもの、あと、狂王以外の混浴もNGだから、その辺もしっかりしといてよ」


 って椿さんが言って、


 「基本、入浴料は取らない方向でいますよ、ダンジョンウォーカーの憩いの場所にしたいんだ、どなたでも無料で施設を公開します、もちろん男女は分けさせますし、覗き対策も立てますよ、ちゃんと常識的に考えてますよ、ご安心を」


 って瑠璃さんが答えてた。


 その常識に僕の今の立場がどんな風に考えられているのかイマイチ不安だけど、ちょっと関心はしたんだよ。だって、瑠璃さんも桃さんも、僕はてっきり彼女達が有料の入浴施設でも立ち上げる物だと思ってたウハウハな感じで儲けてしまおうって魂胆しか見えなかったから、今、銭湯って500円くらいだったっけ? 高い温泉施設ならもっと取るよね、日帰り温泉とかでも。


 彼女達の性格というか行動原理を考えると、その辺についてちょっと首を傾げてしまうけど、本当の目的ってのは違うところにあった。


 「いや、最近、ダンジョンウォーカーの数も頭打ちになって来てね、私たちが経営を任せれている宿泊施設に付随するセイコーマートも売り上げが伸び悩んでいてね、この辺で起爆剤をと色々計画していたところに君たちの温泉の話が出て来て、それに乗っかったんだよ」


 彼女達に言わせると、無料で利用できるもの、特にダンジョンに最初からあるものを有料にして、そこでお金を儲けようとは思ってないんだって。あくまで金銭の絡んでくるものは、こちらが商品として並べるものであるってことらしい。


 なんかこう言う所って立派だよね。公平にして公正な商人さんって感じがする。


 ああ、そうか、つまりは温泉施設にセイコマートと宿泊施設を併設するって事なんだ。


 ここに来て、初めて瑠璃さんと桃さんは持って来た荷物を開いてくれた。


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