第152話【北海道ダンジョン温泉慕情 入浴編③】
そのキリカさん、僕の腕に触れてるその柔らかい葉山の物に対して、全くの抵抗がないって事を悟ったようで自身もそれに習おうみたいに顔してこっち来る。
そして僕の顔を見ながら空いている腕を掴むとキリカさんニッコリと笑って自分の裸の胸に僕の腕を押し当てた、つまりは左右対称で葉山と同じ格好になる、けどキリカさんの方が直肌だから破壊力が違う、凄まじい攻撃力だよ、いや何処の部位に対してなんの攻撃かって話だけど。
「ああ、これがいいんですね? どうでしょう?」
って確認してくるよキリカさん、いいんじゃないかな、って!答えようもないよ僕。
「いい加減にしてよ!」
葉山の怒鳴り声が耳にうるさい、近いから、もっとボリューム下げても大丈夫だから。
するとキリカさんは僕に言った、葉山ではなく僕に言った。
「いえ、やめるわけには行きません、これは私に課せられた義務でもあり責任なのですから」
って言う。
「何言ってるの?」
僕と同じ葉山の質問に、
「結局、私の立場というか問題を差し引いて考えれば、行動としては貴方と同じ事をしたいのです」
「お、同じことって何よ?!」
「殿下と子供を作りたいのです」
普通に言った。本当に、『ちょっとそこのお皿取って』くらいの軽いニュアンスで普通に言った。
僕も彼女の発言の意味が言葉として理解するまで時間がかかってしまって、ちょっと思考がフラットになってしまう。いやこの発言を聞いた他の人も一緒だっと思う。
だから、この言葉をキリカさんが発した瞬間に、まるで水を打ったような静寂に包まれた。いやここ温泉だからお湯を打ってたような、になるのか。いや、今はそれどころじゃない。
「はあ!!!!!!」
静寂を切り裂く、悲鳴のような葉山の声。
キリカさんの言葉は続く。
「もちろん、部はわきまえております、決して殿下の側室、側女きの方々、まして正妻である春夏様を出し抜こうなどとは考えてはいません、きちんと順番は守りますよ」
真剣な顔して僕にいうんだけど、僕自身、キリカさんの言ってる意味ってわからなくて、
「側室ってなに?」
ってひとまず賢い葉山に聞くんだけど、
「真壁はちょっと黙ってて!」
って一言、言われてしまう。
いや、これって僕の話だよね?
でも、僕は怒ってる女の人に対してはさ、意思を貫いてまで質問なんてしようって思わないから黙ってる。
いや、今日は温泉に入りに来たはずなんだけどなあ、未だ膝くらいまでしか浸かってないよ、って思っている僕の所に春夏さんが来て、
「秋くん、風邪ひいちゃうから」
って葉山とキリカさんの2人から、簡単に僕を解放して、とうか春夏さんが僕の手を引いたら、彼女達、僕を簡単に解放してくれた。
ああ、なんかホッとしたよ。
さっきまで春夏さんがいた場所、大きな岩盤がある所ね、そこまで行くと丁度いい深さで、既にまったりと湯に浸かっている蒼さん始め、秋の木葉のみなさんもいた。蒼さんも、紺さんも、藍さんも同じ表情なんだけど、ここにはきちんと表情に個性が出てるから、相当リラックスしているんだと思う。
正当に温泉を楽しんでいるなあ。
「大丈夫? 体、冷えてない?」
って春夏さんに言われて、繋いだ手を引かれて一緒に体を湯に沈めると、空気にさらされていた体の殆どが、このお湯を熱いって感じていたから、相対して体は冷えていたんだなって、改めて自覚した。
「はあ〜、天国です」
って近くの蒼さんが呟く。
だよね、温泉だもんね、温泉を楽しまなきゃ、だよね。
ジーンとしみ行く温泉の温度に、未だ僕の手を掴んでる春夏さんの手。
なんか落ち着くなあ。
ようやく、ここの時点で、ここに来てよかったよ。
ああ、さっきの場所では相変わらず、葉山とキリカさんが言い合ってるって言うか、葉山がキリカさんに一方的に怒ってるけど、薫子さんとか間に入ってるから、仲裁はいらないよね。
ひとまず、ダンジョンの湯に到達。
やっぱり、北海道の温泉って最高だよね。
このままお湯に溶けてしまいそうな、そんな僕だったよ。