第138話【北海道ダンジョン温泉慕情 出発編①】
なるほど、本日、僕らが温泉に行くという情報は、八瀬さんから漏洩はこの辺にもあったんだね。ほら、クロスクロスってギルドの仕事を手伝ってる経緯とかあるからさ、で、八瀬さんから、松橋さんや高和さんへの流れかな?
ちょっと確認しておこうって思って、
「八瀬さんから聞いたんですか?」
と言うと、瑠璃さんではなく、桃さんが、
「さあ、どうだろうね? 蛇の道は蛇って言うじゃない」
なんて言ってもったいつけて、それに続いて、
「ダメだぞ桃、それは商品だよ、値段のつくものだ」
と、桃さんの言動を制した。
いやいや、そんな大げさなものじゃないんだけど、どんな風に誰かな話が言ったのかなあ、って程度なんだけど、この経緯に僕にとって有用な情報でもあるみたいに言われてしまう。しかもそれは網の目みたいに張り巡らされていてお金にも変えれるものらしい。
出会った時も思ったけど、チトセ商会の小々島さんもそうだし、もしかしたらこの2人も曲者って言われてる八瀬さんよりもよっぽど厄介というか得体の知れない相手かもしれない。
特に今思い返しても見ても、武器の情報を提供してくれた小々島さんとかさ、あの時、ブリドの武器探索の時も思ったけど、あの位置であの場所であの世界蛇の待ち伏せってどう考えてもタイミングがね良すぎるし、そこへ行き着く経路にしても情報の出元は小々島さんだったらしいし。彼の流した情報道理に敵の戦法とか対人数も待ち伏せというかそれ以前にね
おそらくは、きっとこの手の商いをする人達って、敵も味方も無いのかも知れない。いるのはお客さんっていうだけでさ。
なんて事を考えてると、
「じゃんけんー!」
って大声て真希さんと雪華さんでじゃんけんやり出す。とても大きな声で、もう完全に振りかぶって。
どうやら2人の争いは次の段階に移っていた。
公正にして公平な勝負だね、って思っているとどうも様子がおかしい。
相手に自分の手を差し出すモーションに入ったまま微動だにしない。そして何よりお互いが、その手ではなく目を見つめあっている。
決戦の言葉、「ぽん!」が来ないままなんだよ。
「どうしべ? 雪華、早く『出す』べさ、グーでもパーでもチョキでも好きなもん出せば良いべさ」
と真希さんが言うと、
「真希さんこそ、その卑怯なくらいの速さで出してくださいよ、真希さんよりも遥かにノロい私が遅れても、『先出し』無効なんて言いませんから」
すると、真希さん、フフフって不敵に笑って、
「雪華、お前、読もうとしてるべ?」
「真希さんの手をですか? 何をおっしゃいます、私が真希さんの思考なんて読める訳ないじゃないですか」
「なら聞くが、なぜ私の周りに糸化したエクスマギナが浮遊してるべ? 情報を取ってるべ?」
「これは真希さんの健康状態を心配しての測定です」
「き、詭弁だべ!」
「真希さんの脳内、ノルアドレナリン、オキシトシンの数値が正常値よりかなり高めです、つまり、これは真希さんに取って絶対に負けたくない戦という事です、でも無駄でしすから、以前のじゃんけんを行う際の真希さんのレセプター(神経伝達物質のそれぞれの受容体)の伝達状態は解析済みです、何を出しても対応可能です、あの時おごらされたコアップガラナも、ソフトカツゲン(両方とも北海道ご当地飲料)も全ては今日のためです、ここはどんな手を使っても勝たせてもらいますから!」
ちなみに真希さんって、偶にじゃんけんで相手に何かを奢ってもらう的なともするとモラハラにも見える行動に出るらしんだ、今はほとんど相手は雪華さんだけらしいけど、その度に雪華さん、外のセイコマ(セイコマートの略)に走っては真希さんに対した額でもないドリンクやアイスを献上してるらしい。
で真希さんの戦績てどんな相手に対しても100%で、その凄まじい戦闘能力を遺憾なく発揮して、光にも迫る速さで、自分の手をだす、つまり、相手はどんな手を使っても『後出し』になってしまうと言う侮蔑すべき卑怯者な勝負なんだそうだ。
もちろん、ギルドのみんな、特に真希さんの近くにいる人は、『仕方ないなあ』って付き合ってる人も多く、真希さんだからね、良いよジュースくらいって思ってるらしいんだ。しかもその後、忘れた頃にお駄賃とかくれるいし、言ってみると、真希さんならではのコミニケーションなのかも知れないね。普通はしないけどね、迷惑だからね。
「今は真希さんの『光速じゃんけん後出し固め』につきあうのって、雪華くらいのものだからな、偶に茉薙が付き合ってるがな」
って薫子さんも言ってた。
だから真希さんは言ったんだ。
「そんな雪華の凄い能力使われても、雪華が後出しになるのは変わらないべさ、つまり勝敗はてっくり返(『ひっくり返る』を北海道民はこんな言い方をします)ったりしないんだよ」
そんな真希さんの勝ち誇った様な言葉に、なんと雪華さん、目をつぶってしまった。
「な、なんだべか?!」
そんな真希さんにとっても行動の意図がわからない雪華さんに、真希さんは焦った、本気で焦ってた。