第68話【公平にして公正にして完全無欠の独立組織】
先に、春夏さんの認定式(?)が行われた。
普通に症状の授与式みたいだった。横で見ていて割と面白かった。
で、真希さんから訓話みたいなものがあって、その内容が、ともかくおめでとうって事と、スキル持ち、クラス持ちの自覚を促すような内容だった。
端折って説明すると、つまり、ギルドでは、春夏さんを『サムライ』に認定するから、それを自覚して、平和なダンジョン活動にあたって下さいってことと、困った人がいたら助けてね的な説明と、緊急自体の時にはギルドの召集に参加して欲しい(強制ではない)といったお願い的な説明をされた後に、真希さんから認定書を受け取っていた。
だから、思わず、そんな春夏さんが、認定書を受け取ってる最中、拍手をしてしまう僕だったよ。
なんか、普通の授与式っぽい。
テレテレな春夏さんが、僕の横に座って、それは終わった。
で、次は、いよいよ僕の番かなあ、なんて、待ったてると、なんか、真希さん、溜息ついた。
本当に、割と距離のある位置にいる僕にも聞こえるくらいの大きな『ハァ〜』って感じの大きなため息。
どうしたんだろ?
そして、真希さん、
「じゃあ、次の案件を片付けるべ」
っていうんだけど、『案件』? 授与式じゃなの? 不信感というか嫌な予感の止まらない僕なんだけど、その言葉の後に、
「工藤氏、ここは、先に自己紹介をさせてもらいたいんだが」
と言って、工藤さんの横、麻生さんが、自発的に発言した。
で、次に僕を見て、一回、ペコリとお辞儀する。
「私は、麻生一二三だ、このギルドでは『幹部』などと呼ばれているが、普通に構成員の一人だよ、真壁氏、これからよろしく頼む」
っていうんだよね。
爽やかな笑顔に、男子の僕もドキってしちゃう。
特に2枚目でも、あの、君島みたいないイケメンで長身ってわけでも無いけど、その雰囲気っての? 何もかも俺に任せろ!みたいな、頼り甲斐が、半端なく滲み出てて、やっぱり、真の人間性ってのは、中身から滲み出てくるんだなあ、ってそう思った。
君島とはもう器どころじゃなくて、人としての種の違いを見たよ。
でさ、今も麻生さんが言う、幹部って呼ばれるって事は幹部じゃ無いって、ギルドの人達ってみんなこんな言い方をするんだよね。
実際、ギルドって、上下関係は無い組織ってことになってる。
それは建前とかじゃなくて、本当に無い。
どっかのクラブや部活みたいに先輩後輩も無い。
みんな一律、一緒で、どんな強かろうと、スキル持ってようと、また、全くなかろうと、深階層止まりって言われるダンジョンウォーカーでも、真希さんみたいに深階層深部までたどり着いて『最後の扉』に触れた者って言われる人達に関しても、そこに上下関係をおかない組織なんだ。
だからみんな一緒で、今日入った構成員も、もう何年もいる構成委員もその立場に違いは無い。
でも、僕ら一般のダンジョンウォーカーからみると、やっぱり幹部って呼ばれる人たちはいる。
それは広義の事実だよ。
だって、中高生がさ、道庁や、公安組織、時には国政と渡り合うような組織だよ。
基本、ギルドは公の組織ではあるものの、それは国や地方自治体による行政主体ではないんだ。
一時は、ギルドの業務内容から言っても、対価としての『給料』とかを払うのが適当なのではないかって、話し合いが、国会質疑まで出たけど、それとは関係なく北海道としては、その特殊性から言って、普通の大人の人たちよりも高額な賃金の支払いを申し出たらしいんだ。
いいなあ、お給料。もちろん責任も一緒にって話だけどね。
金欠の僕には、金銭ってだけで、うらやまし話だよ。