第138話【北海道ダンジョン温泉慕情 集合編 ②】
ほんと凶器か、ってくらい圧倒的な女性のグラマラスな圧迫感が、すごい。柔らかいのに押しつぶされる、しかも女臭い。
その瑠璃さんはそのまま春夏さんに押されてるって訳も無く下がって、
「サービスだよ、サービス、狂王様に取り入ってのお願いだから、ほら瑠璃も一緒に迫ってみようよ、なんか狂王様に迫るの楽しいよ」
とか言ってる。おお、葉山もブロックに入ってくれた。
「ほら、君達も負けてないで、行っておいで」
とか八瀬さんが言い出す。
「えー!!」
って、一緒の新人2人は声を出して困ってた。
「いや、別にいいですよ、一緒に行くくらい、全然平気ですから」
これ以上の接触による接面積の向上は本能的にも危険だと判断する、しかも人集まってきたから見た目的に今後どんな噂が立つともわからないから、それに温泉に行くまでの障害に対しての、所謂、ボディーガード的な奴をすればいいんでしょ? いいよそのくらいやるよ、と言うか最初からそのつもりだしって思ってると、遠くの方から、約2名、何やら言い争いと言うか、2人並んで競歩のレースしてるみたいに僕らの方にやって来る人物がいる。いや、よく見ると3名かな? 後ろの方にちっさい人影が見える。
「だから、今日はお前に任せて、私が行くって言ってるべ、深階層の視察だべ、アッキーに背中を流してもらおうなんて考えてないって言ってるべ!」
1人の可愛らしい人影はずんずん僕たちに接近しながらそんな事を言っている。
「何言ってるんですか? そんなのダメに決まってるでしょ? ギルドの重鎮自ら深階層に赴く事はありません、私が行きます、私がいいんです、秋先輩の背中を流すのは私なんです!」
あ、雪華さんだ。
そんな可愛らしい人影の後ろでは、
「雪華、真希も、恥ずかしいよ、2人ともいなくっちゃダメだろ、なあ、ちょっと落ちついてよ」
ってオロオロしてる。なんか茉薙も大変だな、って思っちゃった。
その2人、ものすごい勢いでこっち来て、
「温泉、温泉行く、私も行くから」
って2人で声を揃えて言った。
「お、おはようございます、真希さん、雪華さん」
面食らって、思わず普通に挨拶しちゃったよ。
「おはよう、アッキー」
「おはようございます、秋先輩」
まあ、今は朝じゃないけどね、雪華さんもすっかりつられてしまってる。
2人もとも顔、近い近い。
「なあ、アッキー、私と一緒に行くべさ? 雪華なんてダメだべさ」
「秋先輩、私が一緒に行きます、真希さんはここを離れてはダメですよね?」
「何言ってる、同じ裸の付き合いするなら、雪華のペッタンこより私だべさ、なあ、アッキー?!」
「何言ってるんです?! 同じじゃないですか! この前測ったじゃないですか? 1ミリも変わらないじゃないですか!」
「確かにケツは雪華の方がでかいけどな、ああ、私の負けだべさ! 雪華のケツのデカさに負けたべさ!」
「一緒ですよ! お尻も一緒ですよ、1センチだけです、ほんの1センチだけです!」
だから、顔近い近い。
なんとか逃れようとするけど、すっかり前から腕を2人にホールドされて、一歩も動けない、でもあれ? 足が動かないのおかしくない?って思ってたら、雪華さんのエクス・マキナの小さいアームと言うかマニピュレーターに優しく安全に固定されてた。
こんな事にこの凄いスキルを使うのはさすがにどうかと思う。すっかり使いこなしてるのは流石だとは思うけど。
そんな中、すっかりギルドの人たちと仲良しみたいな感じな八瀬さんが、意外にも2人の間に入って、
「まあまあ2人とも、落ちついて」
とか言ってた。すると、
「何言ってるべ、お前もペッタンコサイドだべさ、こっち側の人間だべさ、ちょっと中性的モデル体型だっていい気になるな!」
「そうです、その長身にそのウエストだからって、割って入ってこないで下さい!」
って、巻き込まれるような形で2人の許しがたい琴線に触れてしまって、八つ当たりされてしまう。
「酷!!!」
ってこれには驚いている八瀬さんだった。
その間、どんどん言い合いが酷くなっているギルドの2人で、その周りでオロオロな茉薙なんだけど、
「だから、私はアッキーに背中を流してもらいたいだけでやましい気持ちは無いって行ってるべ!」
「私だって、日頃お疲れの秋先輩のお背中を流したいだけって言ってるじゃ無いですか!」
そんな本音も隠さなくなってきた彼女達の会話に、湯おけを抱える準備万端の妹が、
「なら兄が2人の間に入ればOKだな」
妹にしては珍しくインテリジェンスな顔して言う。そうだけど、確かに僕が洗って洗われてって位置関係になるけどそう言う問題じゃないから。
めんどくさいから2人して付いて来ればいいのに、って思うけど2人ともって言う雪華さんは今やギルドの重鎮だからね、どちらか1人残ってないといけないってのもわかるよ
「すまない、真壁秋、今朝、なんとなく私も初めて行く所だったので真希さんに聞いたら、この有様だった」
と真希さん、雪華さん、茉薙に続いて、朝からギルドで働いていて、たった今offになった薫子さんが駆けつけて、本当に申し訳なさそうに言った。