第137話【北海道ダンジョン温泉慕情 集合編 ①】
最近色々合った桃井くんもいないね、ちょっと寂しいけどいつものメンバーから欠けた状態でダンジョンに、つまりはスライムの森に降りるとそこには、意外な人が待っていた。
「やあやあやあ、この度はお誘いありがとうね、やっぱり君と僕の仲だよね」
とお礼を言っているんだか、それとも強引に押し切ってきているのかよくわからないクロスクロスの副長の鉾咲 八瀬さんがいる、そしてその横には2人、初見の女の子がいる。もちろん彼女を呼んだ覚えはない、一体どこから話が漏れた? でもそんな事に一々突っ込んでられないってのもあるからここも放置ていいや、で言い分を聞いていると、
「ほら、僕って君好みの女子じゃないじゃない、だから君が喜びそうな子連れてきて上げたら、ほら遠慮はいらないよ」
とよくわからない事を言い出す。すっかり一緒に温泉に行く気みたい。
「初めまして、狂王様、佐久間 咲きです」
「始めまして、狂王様、森 小雪です」
若干僕を見て震えている感じなんだけど、本人の意思とか大丈夫なのかな?
どう見ても無理矢理感が半端ない。しかも武器とか持ってないし。手ぶらだし、守ってもらおう気満々な気がしてならないよ。
「えーっと………」
返答に困ってると、どう見ても戸惑う彼女達に先んじて、八瀬さんが、
「いやね、僕らの実力じゃ中々ね、自分たちだけではあの『スキルの湯』には辿りつけないんだ、今回、僕らの仲間でも新進気鋭の新人で美人で可愛くて君好みの女の子達を連れてきたから、さすがに僕らの仲間全員とはいかないけど、これならさ、君も許してくれるかな? って、だからお願いだよ、一緒に連れてっておくれよ」
ほんと神様拝むみたいに手を合わせられる。
これって、割と本音ベースだよなあ、絶対に行きたいみたいだ。
あれ?ちょっと待って、今スキルって言わなかった?
「スキルの湯ってなんですか?」
と言うと、
「えー、あれ噂ですよね?」
と葉山が八瀬さんに訪ねた。
そんな問いに、
HDCU(北海道ダンジョン商取引組合)の松橋 瑪瑙さんが答えた。ってかなんでいるんだろ? もちろんその横には高和 桃さんもいる。2人の荷物でか! なんかボストンバックを二つ持ってる。
「深階層のスキルの湯はね、割と知る人ぞ知ると割れる秘湯中の秘湯なんがだが、その湯に肩まで浸かると、肩こり神経痛、腰痛、擦り傷に、ストレス等に効能かある泉質に加えてスキル無し、つまりノービスさんにスキルが染み込むと言う効能があるんだよ」
物凄い笑顔で八瀬さんは言う。もう疑うことを知らない人の笑顔だよ。
なるほどね、確かにスキル取得とかに目がないクロスクロスの人たちにとっては、中階層で深階層のモンスターを召喚するより有効かもしれないね。
もちろん、流石にこの北海道ダンジョンでもそんなに便利と言うか、いわば反則な温泉なんてある訳ないとは思うけど、あくまでも眉唾な感じだけど、ただお湯に浸かるだけで何かしらのスキルが身につくなら、そんな噂が出ている時点で、何かしら効能みたいなものはありそうな感じて、それはそれですごいと思う。
それに深階層を知る常識人として葉山が言うには、その場所にたどり着くにはそれなりの実力が必要で、たどり着くことのできる人って例外なく強力なスキル持ちで、実際は、スキルも戦闘力も無い人間がそのスキル温泉に入れたって記録はないから、真偽のほどは定かではないらしい。もっとも過去に僕らと同じ様に、誰かに守ってもらったノービスのダンジョンウォーカーがいたって話も出た事はないんだって。
その話の中で、ちょっと興味なさそうにしていたHDCUの2人瑠璃さんと桃さんには他に目的があるみたいな雰囲気だった。ちょっと気になるけど、でも、僕の目的とは乖離している気がして、特には気にならないし、何より春夏さんが反応しないから、それはいいや、ってなる。
「だがね、そこにたどり着くには相当の戦力が必要でさ、少なくともあのD &Dのトップを中心としたそれなりの人員程度の実力が必要なのさ」
と追加で桃さんが教えてくれた、さらに追加して、
「でも、辰野と一心を誘うとさ、あの2人、モジモジした後に固まった上に何も話さなくなるんだよ、さすがにそんなピュアな男女を温泉に誘うのも気が引けてね」
へー、ん? なるほど、え? そう言う事、なんで?
わかるようなわからないような、どうしようって思ってると、
「人の事はいいのよ」
って葉山に言われる。そっか、いいのかってなる。
「そして聞けば君達も行くって言うじゃないか、なら便乗しようってつもり、だから八瀬と同じ扱いでいいよ、私たちは君に裸を見せるのは全く構わないし、そんな物が同行料って言うならお安い物さ」
とか言って、瑠璃さんは結構な大荷物なのに、桃さんの方は、すっかり浴衣(?)みたいなカッコして、湯おけとかにシャンプーとか入れて、もうこれから深階層に挑むカッコじゃないよ。少なくとも絶対にダンジョンでモンスターに対峙する気はなさそう、これ、自分の部屋から大浴場に向かう温泉客ももうちょっと厚着はしそうだよ。で、はだけた胸に髪をかき上げ、僕に迫る。と言うか距離を潰す。グイグイ来る。その顔は本当に楽しそう。
「ちょっと!」
って葉山が出て前に、その間に無理矢理春夏さんが入って、「だめ」って言ってた。
「ほら、桃、冗談が過ぎるぞ」
って瑠璃さんが叱ってくれた。