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閑話9−7【真壁秋ハーレム化に関しての傾向と対策】

 その時にどちらにすすんでも押し込められた思考は、その行く末はそこにしか用意されていない事に、長尾のみならず、一部の生徒を除いた大半の生徒達が気が付けるはずもなかった。


 そう、それが誘導だとしても、答えはここしかなかったのだ。


 だから、これらの操作は、決して操る目的などではなく、言ってしまうと、時間の短縮に他ならない。


 これはたった一つにして、一番最初に試される事なのかもしれないと誰もが思えた。


 だから長尾は提案する。会場に向かって


 「一度、彼と話し合いを設けてはどうだろうか?」


 長尾の意見が、どの様な方向性を持ち、また何を言わんとしているかはこの時点では誰も判断がつかなかった。


 今、まさに、1人の政治家によって、北海道に新たな歴史が刻まれようとされている。それは、一夫多妻制にして、結婚の低年齢化。これが形をなす事で、北海道ダンジョンを、しいては北海道を代表する美少女の独占が合法的に行われようとしている。


 まさに、北海道は闇へと沈もうとしているのかもしれない。


 もちろん、例え、先ほど挙げた美少女達が真壁秋の物になったとしても、北海道は綺麗にして可愛い女子が多いので、彼らにとって現実問題として何ら影響はないのかもしれない。


 これらは全て、かつての『ハーレム大臣』が北海道の知事になる、北海道の婚姻がハーレム婚が合法になる、真壁秋が北海道ダンジョンを代表する美少女達を独占している、など、全ては、本当のところは噂でしかない。


 しかし、だからと言って可能性もまた否定できない。


 全ては霧の中、まるで早朝の帯広の街にかかる重い霧の様に、全ては白い闇に沈んで輪郭さえも、まさに形などどこにもないのかもしれないのだ。


 「ともかく、我々の意見を纏めてだな、彼に会ってみてはどうだろうか?」


 長尾は言った。


 「つまり、我々の意見を真壁秋に嘆願すると言う事ですね」


 二肩が、その横で尋ねる。


 「ああ、そうだな、その方がいいだろう、何もいきなり喧嘩腰というのも違う気がする」


 すると、二肩は少し考え、


 「『私達の意見を纏める』というのは、今回の危惧に関して、多くの生徒から意見を求めるために署名を集って、その数を持って真壁秋に嘆願するという事でしょうか?」


 そんな二肩の問いに、まるで答えを見出した様に長尾は言う。


 「ああ、そうだ、それがいい、そうしよう」


 そう二肩に言ってから、


 「我々は、まず、真壁秋の意思を訪ね、同時に我々の総意を伝えようと思うが、どうだろうか?」


 無音となった、まるで水を打ったような会場。


 これだけの人の数がいながら、無人のごとく沈黙に沈み浸っていた。


 そこに、小さな拍手が起こる。


 小さな一つが、また一つ、また一つと次々に、波紋を広げて行く様に、大きな喝采となって会場に広がって行く。


 気がつくと、会場は一つにまとまりを見せ、そして、一定の結論にたどり着いていた。


 そんな会場によって高揚された長尾は、二肩から、


 「では、署名を集めましょう、これだけの人間が、真壁秋さんによるハーレム結婚、低年齢化結婚に一定の意見をお持ちですと言う、そんな証明を明らかにするのです」


 と、長尾に言った。


 「ああ、そうだな、それがいいだろう」


 と長尾は大きくうなづいた。


 するとニ肩は、


 「お疲れ様でした会長、事後の処理はお任せください」


 まるで慈しむ様な笑顔を長尾に向けた後、再び会場に向かって、


 「では、各校にガイダンスを配布します、簡単に説明しますが、くれぐれも強制的に署名をさせるのは控えてください、この署名は本人の意思の尊重が重要です、また、真壁秋さんに対して、強制的な行動を取る物、取ろうとする者、もしくは集団がいた場合、別枠での署名を、『強い意志のあり』と、伝えるのも大事ですから」


 その様子を見ながら、長尾はこの大きな会議の終了を見守りつつ、改めて、二肩の様な人間がいてくれて良かったと心から思った。


 「では、各校、迅速に行動を開始してください、来週末には集計を集めたいので、その様にお願いしす」


 あれほど険悪なムードに包まれていた会場はいつの間にか和やかな雰囲気になって、集まれた生徒は解散して行く。


 ともかく、真壁秋という一つの巨大な検案、平和的な流れに乗って一つの方向へとたどり着いたのである。


 そして、二肩は言った、まるでいつの間にか高揚していた長尾を現実に戻す様に優しく言った。


 「会長、後のことは任せてください、今日はお疲れでしょう? また明日、学校でお会いしましょう」


 「ああ、そうか、いいのか? 後片付けとか?」


 「もちろんです、お任せください、会長も早目に帰って休んだ方がいいです、明日からもっと忙しくなりますから、頼りにしてます」


 笑顔の、長尾が安心する様な笑顔で二肩は労わる様に言う。


 その一言で、長尾は何の疑問も持たずにこの会場を後にした。


 その後ろ姿は、一つの事をやり終えた男の後ろ姿でもあった。


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